国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第22号」 七夕祭り特集 イベントの表舞台と舞台裏

七夕祭りの特集記事をお届けします

 7月6日(水)に開催された七夕祭りは、国際観光学部の恒例行事として、すっかり学生の間に定着しました。この日は南キャンパスに「和風」がたなびき、学生たちの活気が伝統美と調和して、華やかな雰囲気に包まれます。新しい広報部員は慣れない取材に苦労しながらも、イベントを実施する学生や、サポートして下さる近隣の方々の声を聴き取り、舞台裏の苦労や思いを伝えようと頑張りました。国際観光学部1回生の今西祐莉さんを3回生の安村莉緒さんが、浴衣の着付けでいつもお世話になっているモリタ屋呉服店の森田まゆみさんを3回生の町野早彩さんと2回生の松田祥佳さんが、学生委員2回生の堂滿直人君を4回生の松宮勲旺君が、それぞれ取材して記事をまとめてくれました。それでは、3本の記事をお楽しみ下さい。

(以上、来村)



※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

七夕祭りに向けて

 1回生の今西祐莉(いまにしゆうり)さんは、入学してすぐに学生委員となり、七夕祭りで最初の務めを果たしました。高校生のころから文化祭などの学級行事に取り組んできた彼女も、最初は一味違う大学生の活動に戸惑ったそうですが、与えられた音響の準備に励むうちに、これまでにない充実感を覚えたということです。7月6日(水)に行なわれた七夕祭りに先立って、意気込みを聞かせて頂き、イベント終了後の感想もお聞きしました。以下には今西さんへのインタビュー記事を綴ります。
安村:まずは国際観光学部を目指されたきっかけをお聞かせ下さい。
今西:高校生のときから英語を専攻していました。海外にはもとより興味があったのです。いつでしたか、母の知り合いにツアーコンダクターをされている方がいらして、インスタグラムを見せて頂きました。
安村:写真を正方形にして編集するスマホのアプリですね。
今西:そうです。世界の各地をまわり、仕事をこなされる一方、多様な言語に親しまれている様子が写真で綴られていました。それでツアーコンダクターにあこがれ、この学部を目ざしたのです。
安村:入学されて、すぐに学生委員になったのは?
今西:サークルの新入生歓迎会で学生委員の先輩と出会ったのがきっかけです。もともと人と接することが好きでしたので、話を聞いて、すぐに参加を決意しました。
安村:その最初の仕事が七夕祭りだったのですね。
今西:私の役割は音響でした。織姫・彦星コンテストのステージで音楽や効果音を出す仕事です。ゼミごとに違う音を用意しなければならず、毎週1回の活動では、作業が進みません。実は切羽詰まっています。
安村:それでも、間に合わせることが求められる。
今西:高校生の時は、文化祭の準備などに取り組むものの、適当にやっていましたね。学部の委員会ではスケジュールが明確化していて、行動しやすい反面、決められた時間内に作業を済ませることが求められます。おのずと責任感が身に付きます。
安村:目下、苦労されていることはありますか?
今西:「コンテストでの演出の内容を変えさせてほしい」という申し出がありました。簡単に言われましても、曲や音を探して準備し直すのは、どれほど大変か。そうこうしているうちに時間がなくなってきました。かなり焦っています(笑)。
安村:このインタビューも早く終わらせないといけませんが、意気込みをお聞かせください
今西:初めての任務に音響という大役を仰せつかりましたが、責任感を持って、必ず成功させます。
安村:頑張ってください。ありがとうございました。

七夕祭りを終えて

安村:楽しい七夕祭りが終わりましたが、何か得たものはありますか?
今西:学部が全体で取り組む行事なので、責任を学ぶことができました。
安村:「責任を学ぶ」とは、具体的に?
今西:自分自身の役割の大切さをしっかりと把握し、任されたことを最後までやりぬくのが大事。そういうことを学びました。これまでの行事とは大きく違います。
安村:これまでとは、高校時代のことですか?
今西:はい、そうです。高校時代の文化祭で劇の裏方をしたことがあります。仕事の役割は決まっていたのですが、他の作業も気が向くままに手伝ったりして、分担はルーズでしたね。それで集中できず、結局、肝心な自分の作業が遅れました。
安村:なるほど。役割分担ができるかできないか、ですね。ほかに得たことは?
今西:真面目になれました。
安村:あれ?もとから真面目なのでは(笑)。
今西:やはり、任されたことに一人ひとりが集中して取り組むのがいいですね。私の場合、演出の出来不出来を左右する大役の音響係でしたので、プレッシャーもあって、真面目に専念できました。
安村:プレッシャーですか?
今西:もちろん、いい意味でのプレッシャーです。
安村:そういうことが大事なのですね。ありがとうございました。

(以上、安村莉緒)

七夕祭りを支えて下さるモリタ屋さん

 夏もやや盛りを過ぎ、いくぶん過ごしやすくなりましたね。7月には毎年恒例の「七夕祭り」が開催され、今年も活況のなか、みごとに成功しました。このイベントを支えて下さっているのが、南キャンパスの近くにお店を構えるモリタ屋呉服店の森田務さん・まゆみさんご夫妻です。阪南大学の多くの学生は、着付けでお世話になっています。奥様のまゆみさんは、学生との会話が大好きで、いつも気さくに話しかけて下さいます。お店の前を通るときに、学生たちが挨拶をしてゆく姿はモリタ屋さんの雰囲気を物語っています。このたびも、和やかな雰囲気の中で、楽しくインタビューをさせて頂きました。
町野:いきなりですが、奥様の自己紹介からお願いします。
森田:この店は今年で40年目になりますかね。年齢がわかっちゃうから、こういう話は嫌なんだけどね(笑)。私と主人は愛媛県の出身なんですよ。主人のおじいさんは松山で「伊予絣」を織ってました。
町野:イヨカスリ?
森田:そう、この辺りでは、河内木綿が有名だけどね。主人のおじいさんは、伊予絣のハタ屋を営み、終戦後に大阪へ来たそうです。
町野:モリタ屋さんは、なぜこの場所に店を構えられたのですか?
森田:昔、このお店の2軒隣りは、スーパーだったんですよ。それで人通りも多かった。また、主人の両親が針中野に住んでいましたので、近いところでと。
町野:奥様が着物について学ばれたのは、ご結婚されてからですか?
森田:そうですね。周りの方に沢山助けられました。お客様のニーズに応えるため、京都のメーカーさんに行って勉強させて頂いたり。
町野:この場所に住んで、苦労されたことはありますか?
森田:環境に慣れるまでは苦労しましたね。スリッパを履いて外を歩く人がいたのを覚えています。私には、とても衝撃的で(笑)。
町野:大阪弁や河内弁は、地方から来られた人には、きつく感じられると言いますが。
森田:はい、とても。故郷の流儀で生きていこうと思ってましたが、お客様と接して、ずいぶん勉強させてもらいました。町は住人が作るもの。そして、ここは松原なんだ、ということを、徐々に学びました。

学生たちに学ばせて頂いてます

町野:呉服店を営むにあたって、大切なことは?
森田:呉服屋に限らず、お商売で大事なのは、お客様のために尽くすことです。自分なりに、できる限り。着物は親から子、子から孫へ受け継がれる衣服です。長いおつきあいになりますので、信頼関係が大切ですね。お勧めするときは「粋で、品良く、格好よく」ということを意識しています。
町野:阪南大学とは?
森田:大学の先生とご縁がありまして、お付き合いやお商売をさせて頂いてます。
町野:このたびの七夕祭りは、どうでしたか?
森田:去年と違ったのは、最後まで学校にいさせて頂いたことです。学生さんは浴衣姿で走り回ったり、階段を登り降りしたりしますので、着崩れします。また、夏なので、いかに涼しく着付けるかを意識しました。今年も多くのことを学ばせて頂きました。
町野:ベテランの奥様でも、まだ学ぶことが?
森田:やはり、あれだけの人数だと、色々な体型の方がいらっしゃいます。なかなか普段は、多様な方の着付けを一気にさせて頂く機会は無いので…。そうそう、とても勉強になったことがありましたね。
町野:えっ、それは?
森田:「気分が悪い」と言い出す学生さんがいたのです。聞いてみると、浴衣でお手洗いに行くのを気にして、水分をまったく取っていなかったのです。着物に慣れた私には、想像できなかった悩みです。
町野:ふだんから浴衣を着ることがないので、意外と多くの学生が気にしているかも知れませんよ。
森田:思い込みで事を運んではいけない、ということですね。言葉にすることの大切さを、改めて感じさせられます。来年からは、学生さんたちに、そのつど尋ねることにしましょう。
町野:長い時間、お聞かせ頂き、ありがとうございました。

(以上、町野早彩)

インタビュー後記

 広報部員の松田祥佳です。今回の七夕祭りでは、私自身が織姫・彦星コンテストのリーダーとして準備に専念し、モリタ屋呉服店の奥様が指導される着付け教室には参加できなかったのですが、去年は優しい先輩方にまじって着付けを教えていただきました。奥様の指導は着付けの練習だけではありません。浴衣や和服を着る人の立場になり、その人がどれだけ楽に動けるか、苦しくはないか、という気づかいを大切にしなさい。そういうことを練習の中で考えさせられる指導でした。着付けの練習を通して心づかいの大切さを学ぶことができました。七夕祭りが終わったあと、3回生の安村さん、町野さんと3人でモリタ屋呉服店を訪れ、お礼の挨拶かたがた、取材をさせていただきました。町野さんのインタビュー記事にもありましたが、着付けの途中で気分が悪くなった学生のことを後になっても心配され、「来年は水分補給の伝え方を工夫しなければ」と真剣な表情で述懐されていたことが印象的でした。着慣れない浴衣を着るだけで緊張してしまう学生がいることを、私たちも留意しなければなりません。
 奥様はとても勉強熱心で、常にいい形を追究されています。日本の伝統的な衣服である浴衣と洋物の下着は相性が悪く、着崩れを起こしやすいそうです。そのため、身体や下着にフィットして、かつ動きやすい着付けを模索されているとのことです。この熱心さを見習わねばなりません。今後も末永く着付け教室を続けていただき、ひとりでも多くの学生に浴衣の素晴らしさと心づかいの大切さをお伝え下さい。インタビューを通じて、その願いがより強くなりました。ありがとうございました。

(以上、松田祥佳)

放課後の縁日イベント

 七夕祭りでは、学生たちも先生方も浴衣姿になり、南キャンパスを色鮮やかな浴衣で彩ります。午前中に和泉大樹先生による「七夕講義」を受講したのち、昼休みには「織姫・彦星コンテスト」が開催されました。ゼミごとの代表者が男女ペアになってパフォーマンスを披露し、学生の投票で受賞者を選びます。放課後には、今年初めての試みとなる「縁日」を開きました。焼きそば・タマセン・射的・輪投げなど、いずれも初めての試みです。7月初旬はまだ梅雨の真っただ中ですが、七夕祭りが開催された6日はすっきりと晴れました。こういう晴れ間をサツキ晴れと言うそうですが、それは頑張った私たちへのプレゼントだったのでしょう。
 七夕祭りを支えてくれた学生たちのなかから、2回生の堂滿直人(どうみつなおと)君を選び、取材をしました。彼は縁日班のリーダーを務め、みごとに成功させました。友人の誘いで1回生の後期から学生委員会に入った堂滿君には、リーダーの経験がありませんでしたが、このたびは思いきってリーダーに立候補したそうです。放課後のイベントは流しそうめんが定番でしたので、今年も同様にと思っていた堂滿君に思わぬ変更がかかりました。流しそうめんは衛生面で問題があり、出せなくなったのです。個人で食べる分には問題ないのですが、不特定多数の参加者が集まるイベントではNGという、保健所の指導が入ったのです。ただ、安全な直前加熱の食品に限定されると、準備や予算の上で大きな変更を余儀なくされます。さて、堂滿君はどう解決したのでしょうか。インタビューでお聞きしましょう。

松宮:縁日班のリーダーに立候補された、ということですが、その動機は?
堂滿:これまでリーダーの経験はありませんでした。だから、自分を試すためにも、やってみたかった。3回生の先輩方が催しのリーダーを2回生に任せてくれたから、ということもあります。
松宮:2回生にリーダーを任せたのは、どうしてでしょうね。
堂滿:経験を積ませてくれるためだと思います。僕たち2回生も3回生も人数が20人ずつほどいます。早くからリーダーとして責任を担うと、先輩任せの気持ちが薄れ、全体が自主的になります。
松宮:経験して組織の全体像が見えてきたのでは?
堂滿:いや、まだまだですね、今回リーダーをやってみて痛感したことですが、行事の運営は難しい。
松宮:リーダーとしての苦労で、一番大変だったのは?
堂滿:全体的に苦労しましたが、やはり、流しそうめんの中止が大きかったですね。準備をかなり進めていましたので、突然の変更に困惑するばかり。代替案を考えるにも、保健所の基準を満たすものじゃないとダメ。ということで、苦労しましたね。
松宮:今年は縁日の賑わい感を出せましたね。私も参加しましたが、いろんな出し物があったような。
堂滿:はい、初めての試みです。食べ物屋台は焼きそばとタマセン(卵せんべい)、遊戯屋台は輪投げと射的。全部で4店です。
松宮:射的は、ずいぶん工夫されていましたね。
堂滿:どんな射的にするか。というところで悩みました。固い弾を飛ばすのは危険です。コストもかかります。行き詰っていたときに、3回生の先輩がアドバイスをくれました。そして、トイレットペーパーと水鉄砲で安全かつ低コストの射的ゲームを考え出したのです。
松宮:先輩のサポートは心強いですね。
堂滿:至らないところを補って頂きました。やはり先輩は頼りになります。
松宮:当日はアクシデントもあったと聞きましたが。
堂滿:焼きそばの調理に使う器具のコンセントを差し間違え、指定されたコンセントに変更することに手間取って、焼き上がりが予定よりも遅れました。
松宮:そうですか。参加していましたが、気づかなかったですね。
堂滿:食べ物屋台と遊戯屋台の4店を同時にスタートするはずであったのが、焼きそばの遅れで足並みが乱れました。そのため、輪投げや射的を先行させ、賞品としてタマセンを配布する形に急遽変更しました。その対応がよかったのか、参加者の皆さんには喜んでもらえたようです。
松宮:臨機応変の対応でアクシデントを乗り切ったのですね。リーダーをやってみてどうでしたか?
堂滿:正直、大変でした。ただ、得るものは多かったですね。メンバーとのアイデア出しや意見交換を通じて、コミュニケーションの能力が向上したと思います。イベント当日までの日数を考え、進行のスピードを計りながら、各担当者に的確な指示を出さなければなりません。全体を見渡すことの大切さにも気づきました。苦労した分、達成感はありますね。またやってみたい。そう思っています。
松宮:ありがとうございました。

インタビュー後記

 華やかなイベントの舞台裏には、必ず準備をする学生たちの苦労があります。そのおかげでイベントを楽しめることを、改めて実感しました。昨年度までは、この私も学生委員会の副委員長を務めていましたので、堂滿君のことは知っていました。おとなしく控えめな印象だった堂滿君が経験を積むためにリーダーとなり、初めての試みを成功させたのは、ひとつの感動物語です。堂滿君に今回の縁日を自己評価してもらったところ、「今回は80点。まだまだ反省点があるので、来年は100点にしたいです」とのことでした。彼ほどの向上心があれば、日ごとに成長する自分を実感できる。そんな有意義な日々を過ごしているのではないでしょうか。後輩たちの頑張りに期待しながら、こちらも取材に励みます。

(以上、松宮勲旺)