大阪キタとミナミの商業都市開発競争の中にあって、商業と生活、現在と歴史、伝統とモダンが混在する船場地区において、阪南大学経営情報学部山内ゼミでは世間の常識や慣習等から比較的自由である学生達の持つ既存の常識・慣習に捉われないアイデアで新たな文化を創造・発信することを目的としている。
 例年、10月上旬に開催される船場まつりに山内ゼミが参加し、2回生、3回生、4回生の総勢64名が総力を挙げてお茶(日本茶)の“おもてなし”に取り組んだ。
 昨年のメニューが“宇治の抹茶”“静岡の煎茶”“金沢の棒茶”であったが、今年度は“宇治の抹茶”“鹿児島の煎茶”の2種類とした。船場まつりで実施している山内ゼミの“おもてなし”は“非日常を経験してもらうこと”がテーマになっていることから、例年通り抹茶に関しては“自らお茶を点ててもらうこと”とした。このことで老若男女、幼児から高齢者にいたるまで喜んでいただくことができた。
 また、今年度こだわったのが、煎茶である。一般に煎茶を飲むときは“暖かい(熱い)お湯”で“湯のみ”に入れて飲むものであるが、今回は、“冷たい水と氷”で“ワイングラス”に入れて飲んでいただいた。これは、ワインがブドウから作られる農作物(お酒)として産地や品種の違いによる味だけでなく、香り、色等の違いを楽しむ傾向にあるように、煎茶も茶葉から造られる農産物(飲料)として産地や茶葉の違いによる味、香り、色の違いを楽しんでもらうことが目的であると同時に、日本茶の飲み方について常識を破った新しい日本茶の楽しみ方の提案であった。
 会場で山内ゼミの“おもてなし”を体験された方々は、口々に「面白かった」「改めて日本茶の奥深さを知った」等のコメントをいただくことができた。

参加学生一覧

有山恵大、石本晃洋、市場涼介、一柳宣仁、伊藤龍樹、陰山祐太、植田敦士、河本愛美、隈淳貴、小森律枝、竹中沙織、知念愛香、土屋直紀、中津川匠、中山慎之介、橋本和哉、林駿太、枡本尚、壬生茜、山戸鈴華、和田大河、青木美樺、池側はるか、石倉雅隆、井上由貴、今井詩都、川東樹矢、北清千裕、木村智貴、國澤和眞、阪田愛、泰中達也、高井優、伊達雅典、徳永圭佑、峯徹、宮西智亜紀、村田百合、燃脇千寛、森下智矢、芳井里沙、芳本祐暉、渡辺未來、浅野勇斗、生田聖人、稲荷裕一郎、猪上和貴、上田成都、浦野雅史、岡本聖也、小野良太、笠井翔太、金本眞、鎌田理紗子、木村公大、日下龍磨、今野智支、貞中紅輝、塩湯圭祐、柴山瑞生、竹腰竜也、永橋緩一、野上大地、山本魁人

学生の感想

経営情報学部 渡辺 未来

 船場まつりに参加してお茶のおもてなしをしましたが、一番よかったのがお茶を飲んでいただいたお客様の「おいしいね」という言葉とその時に見せる笑顔です。最近は、家に急須がなくて、家族団らんでお茶を飲むことが無くなったと言われるお客様が多かったのですが、冷たいお茶をワイングラスで飲むことを提案したことで、「こんな風にして飲むこともできるんだね」と驚かれたり、「お茶って、こんなに奇麗なグリーン色しているんだ」と、新しい発見をしてもらうことができたのは嬉しかったです。
 また、船場まつりには山内ゼミが全員で取り組んでいるので、先輩や後輩との繋がりができたことは良い経験になったと思います。 
 今年は4回生になりますが、この活動で身につけた“おもてなし”の心を活かして就職活動を始めたいと思います。

教員のコメント

経営情報学部 山内 孝幸 教授

 毎年、この船場まつりに参加する目的は、山内ゼミが顧客満足をテーマにマーケティングを学び、毎年6月には3回生が東京ディズニーリゾートで“おもてなし”のフィールドワークを行う中で、その“おもてなし”実践編として位置づけている。
 お茶の提供の仕方(今年度であれば“冷たい水と氷”で“ワイングラス”)等のアイデアに関しては、指導教員である山内と学生達との議論で決めている。しかし、“おもてなし”の方法に関しては山内が一切関与せず、東京ディズニーリゾートで“おもてなし”のフィールドワークを経験した先輩が後輩に指導を自主的に実施することで受け継がれてきている。
 その意味において、船場まつりに参加することは、祭りに参加することで世代の違う方々(お客様)とのコミュニケーションが図られるとともに、ゼミ内においても学年を超えたコミュニケーションが発生し、知識(暗黙知)の伝承が発生しており、学生達の成長を促しているといえる。