活動の目的及び取り組む課題

 近年、少子高齢化や消費者の価値観の多様性などSCを取り巻く外部環境は大きく変化し、市場ニーズを的確に捉えることが著しく困難になっている。加えて、大都市圏では、SCや百貨店など商業施設の大型化によるオーバーストアが問題となり、過当競争が続いている。ここで、競合する商業施設 の中で勝ち残るためには、来店者数の継続的な増加によって「売れる環境」を作らなければならない。ディベロッパーは自らの存在感を高め、来店する価値を向上させるためにどのような戦略を打ち出せば良いのか。広域商圏が対象の場合には、商圏状況や特性を知り、想定顧客のライフスタイル分析に基づく効率的アプローチを模索することが極めて重要となる。また、インバウンド対応やeコマース、SNSへの対応も不可欠である。
 本ゼミでは、SCの価値創造に直結するライフスタイル提案型の集客戦略に着目する。ディベロッパーと出店テナントへのフィールドワークをとおして、その現状と課題を具体的に抽出させ、顧客の「ライフスタイルニーズへの最適化」というキーワードから課題解決へ向け、多面的なアプローチを試みながら、最終的にディベロッパー企業への集客戦略の提言書としてまとめることを目的とした。

活動内容

 6月から17名のゼミ生を3チームに編成し、チーム単位で研究活動をおこなった。フィールドワークは、連携先であるJR西日本SC開発株式会社様のルクア大阪を中心にグランフロント大阪など梅田地区の実態調査を実施した。7月と12月にチーム毎に報告会をおこない、議論を重ねながら、課題発見とその提言を4つにまとめた。
 最終的に代表4名が連携先であるJR西日本SC開発株式会社様へ提言のプレゼンテーションをおこない、担当者からレベルの高い提言と評価していただきました。プレゼンテーションおよび提案の内容は以下の通りです。

1.研究の背景
2.問題意識
3.仮説(4つの価値創造が売れる環境作り)
4.ライフスタイルの定義
5.SCの現状
6.ルクア大阪の概要
7.ライフスタイルの取り組みの現状調査
8.ライフスタイル提案型の4つの集客戦略
提言①高齢者向きフロア
提言②スポーツ施設
提言③健康と美容
提言④ワークショップイベント(エシカルファッションとフェアトレード商品)
9.まとめ

代表学生の感想

 今回大村ゼミは、ショッピングセンターのライフスタイルを通した集客戦略について活動をしました。しかし、最初はライフスタイルという考え方がわからず、何から始めれば良いのかみんなで話し合いました。先生のアドバイスやいろいろと調べるうちに、その輪郭がはっきりと見えてきました。実際にルクアイーレや天王寺ミオなどへのリサーチをおこない、現在の市場の実態がライフスタイル提案に向かっていることが理解できました。それらの実態調査から全員でさまざまな議論やアイデアを持ち寄り、その中からディスカッションの進め方や意見をまとめる意識を実感できました。そして、4つの提言を、JR西日本SC開発の開発責任者である舟本様にプレゼンをさせていただき、最後にお褒めの言葉もいただきました。このときは、正直うれしかったとともに達成感がありました。また、プレゼンも事前準備や読み合わせをしたおかげで、上手できました。先生には日ごろから事前準備の大切さと明確な役割分担を言われてきましたが、そのことが実感できました。今回の貴重な経験を今後に生かしていきたいと思います。

流通学部 3年 高井 亮介

参加学生一覧

應治 花菜加、片岸 千乃、勝岡 真太郎、川野 美香、河本 凌侑、斉藤 里菜、酒谷 知波、嶋吉 諒、高井 亮介、立山 杏奈、大部 宙、長谷川 塁、八軒 綾音、ハヤシ ヒョンス、林田 燿、本井 杏奈、吉田 香葉

連携団体担当者からのコメント

JR西日本SC開発株式会社 営業本部次長兼業態開発室室長 舟本 恵氏

 発表全体について、“1.研究の背景”を押さえ、そこから来る“2.問題意識(課題の発見)”と、今後“提供するべき価値(仮説)”、既に実施されている“7.具体的事例紹介”と今後に向けた“8.新たな提案”という流れが非常に分かりやすく、聞き手の理解を深めるために有効な構成になっていたように感じました。発表の内容についても、コンパクトにまとまっており、情報が必要最低限なものに抑えてあることで、「何を言いたいのか」がより明確になる作りとなっていました。加えて、抽象的な内容に留まることなく、具体的な提案(ライフスタイル提案型の集客戦略(1)〜(4))があったことが、研究成果の質を引き上げることに繋がっていると感じました。また、弊社の良い勉強にもなりました。
 一方、もう少し改善ができるのでは…、と思った点も少しありました。「1.研究の背景」において、売れる環境作りには「差別化」、「集客」、「デジタル化」の3つがポイントであるとし、後半の具体例に話が進んでいきます。「差別化」の具体例としては、高齢者向きフロア、スポーツ施設、健康と美容、エシカルが挙げられており、「集客」についても、「顧客の細分化から集約化」として、集約の具体例が挙げられていましたが、「デジタル化」の具体例がなかったように感じました。「デジタル化」の具体例も加えて頂ければ、より良い研究発表になったかと思います。
 また、具体的な集客戦略を考えるときに重要なポイントとして、「競合他社に容易に模倣されないか」「競合他社の追随を避けることができるか」というように、競合他社を意識する必要があります。(例えば3C分析では、“自社”、“顧客”に加え、“他社”を分析対象としています)折角の集客戦略も、簡単に競合他社に模倣されてしまうようなことになれば、あっという間に集客機能を失ってしまうからです。簡単に模倣されないようにするためには、競合他社にはない、自社の強みを活かすことが重要となります。ルクア大阪に強みの一つに、圧倒的な集客力と規模の大きさがあります。(発表内でも「国内最大級のターミナル型商業モール」と記載して頂いていました)例えば、スポーツ施設として、ホットヨガ、空中ヨガ、フィールサイクル等々を、日本で一番便利な場所(駅から徒歩0分)で、日本で一番の集積(スポーツ施設なら何でも揃っています!など)で展開する、という戦略であれば、競合他社が容易に模倣することはできず、集客戦略として成り立つものと思われます。私からの感想は以上です。
 就職活動や卒業論文の制作など、これからますます忙しくなっていかれるかと思いますが、くれぐれも体に気を付けて頑張って下さい。ファッション業界で一緒に働くことができることを願っています。

教員のコメント

流通学部 大村 邦年 教授

 本ゼミは、近年SCのテナント構成がファッション衣料を中心としたアパレルから、主要ターゲット層の衣食住という組み合せ型のライフスタイルを提案するテナント誘致が増加している現状に注目し活動をおこなった。連携先企業からはSCの中長期的に進むべき方向性である“ライフスタイル”というキーワードによる集客戦略を大学生が、「どのような課題を発見し、どのような提案が考えるのか非常に楽しみ」とかなり期待されてのスタートとなった。先ず、統括とサポートの3チームにメンバーを区分し、活動の骨格となる「問題意識の共有」「役割分担の明確化」「コミュニケーション」の重要性を徹底的に指導した。ゼミ生たちは、その意図を理解し、自ら考えながら議論し合い、活動対象SCなどへのフィールドリサーチの調査立案・企画・実施・見直しを何度も繰り返しおこない、課題発見から問題解決、そして最終的に4つの提案にまとめ上げてくれました。そして、プレゼンテーション資料作成では、スライドの、①全体構成,②ストーリー性、③論理展開、を考え、次に“見やすくて、分かりやすい”を念頭に作成し、完成度の高いスライドが出来上がりました。ゼミ生たちはこれら一連のプロセスから,深く考えるという「思考力」や議論と相互理解から生まれる「チーム力」、自らの考えを相手に伝える「発信力」の重要性とその価値が理解できたと思います。
 最後に、JR西日本SC開発株式会社営業本部次長舟本恵様には、本キャリアゼミ活動に対して、幾度となく貴重なアドバイスやコメントをいただいたことに深く感謝申し上げます。

関連ページ