活動の目的及び取り組む課題

目的:産学連携型のマングローブ植林による地球温暖化問題へのアプローチ
課題:地球温暖化対策の一環として、タイのプーケットにおいてマングローブ植林に取り組む。マングローブは、二酸化炭素の吸収力が極めて高いといわれ、しかも植林技術が容易であるため、これまで植林経験のない学生にも植樹が可能である。こうした課題への取り組みは、マングローブの生態環境の特性を知るとともに、現地タイの文化や歴史を含む総合的な地域性を把握することも重要となる。さらに、タイにおける異文化理解をベースとした現地の人々との交流活動も不可欠となる。こうした課題をまとめると、下記のとおりである。
1. マングローブ植林活動−自然と人間の関係
2. マングローブの生態環境の特性とタイの総合的地域性の把握
3.各種ボランティア活動を通した異文化理解による現地の人々との交流

活動内容

 石井キャリアゼミでは、これまでの長年の実績をふまえて、タイ・プーケットにおけるマングローブ植林と現地の児童たちとの多彩な交流活動を中心に、国境を越えた社会貢献を行うことを課題とし、それにアプローチする中で、社会人に必要とされる基礎力の養成を図ってきた。今回の活動で特筆されることは、2004年に発生したスマトラ島沖地震の影響で深刻な被害を被ったタイ・プーケットをフィールドに、津波で被災した児童たちが共同生活を送っている孤児院を訪問し、そこで事前に準備した交流プログラムを実施したことである。マングローブには、様々な多面的役割や機能があるが、なかでも津波を瀬戸際で抑制する防災機能という面で大きな威力を発揮する。津波の被災をきっかけに設立された孤児院での異文化交流活動を通して、マングローブ林の大切な役割を理解しながら、植樹の現場で実践的に学んでもらうことが、今回の活動の最大の課題であった。活動内容の概略は、下記のとおりである。
○実施期間:2016年9月7日〜12日
○参加人数:石井ゼミ2年生16名、3年生16名 総計32名
○マングローブ植林:パンガー湾エリア・バングラン村で約1000本の植林
○孤児院でのアクティビティ・交流プログラム:
 ①折り紙 ②塗り絵 ③紙飛行機 ④大縄跳び ⑤野球 ⑥フットサル ⑦紅白玉入れ
 こうした課題を実現するうえで、現地での情報収集によって活動を円滑に推進し、学生たちの学びと自己成長を図るうえで、連携先企業としてアズトラベルサービス株式会社を選び、産学連携型の活動方針を採用した。産学連携のあり方は、現時点では学生たちとの相互交流と企画内容の双方向型の協創段階にとどまっているが、最初の試みとしては大きな成功を収めたと思われる。
 産学連携の本格的な始動するために、来年度は今回と同じエリアで植林を行い、同じ孤児院で交流を実施することによって、現地の人々との持続性あるつながりを構築しながら、さらにレベルアップした企画内容をたて、学生たちに、それを実行するだけの社会人基礎力が強く求められ、これまで以上に①一歩踏み出す力、②考え抜く力、③チーム力を総合的に養成することが必要となろう。

代表学生の感想

 2017年1月10日、あべのハルカスのキャンパスにおいて、経済学部アジアビジネス・パッケージ所属の3ゼミの合同報告会が開催され、石井ゼミの1年間の活動内容と成果について報告しました。ゼミの授業で、グループに分かれて報告資料を作成し、事前に口頭発表の練習を何度も行って大変苦労をしましたが、当日マングローブの生態特徴や津波との関係、孤児院での様々な交流活動などについて、1年間の活動成果を自分なりに報告でき、ホットしました。それ以上に、少しばかり成長した自分に大きな歓びを感じることができました。 
 タイ・プーケットでの活動では、マングローブ林が津波の被害を防ぐ役割があることを学び、その津波の被害で両親を亡くした子供たちが共同生活を営む孤児院を訪問し、そこで多彩な交流を行い、孤児たちとの暖かな心の交流の経験は、一生の財産になると思います。今回の活動から、何よりも一歩前に踏み出す勇気をもって、ゼミの仲間と苦楽を共にする大切さを学ぶことができました。

経済学部 3年生 砂川 理乃

参加学生一覧

石田 智輝、岩崎 翔太、小坂田 涼、樫野 敦志、北野 弘隆、佐伯 紗百合、重谷 智也、柴田 亮佑、島袋 拓也、鈴鹿 結女、砂川 理乃、平良 有、高橋 雄吾、高山 賀友、辻ノ内 潤治、西井 美聡、福田 健翔、真下 修平、鉾久 晶三、山元 綾乃、安藤 優大、梅本 圭介、大植 浩平、坂口 憂飛、清水 優希、杉山 亮輔、高橋 満世、高平 佳映、高松 邑弥、谷口 顕汰、谷村 祥太、辻 優風、仲宗根 菜々、中山 絵美、鱠谷 雄人、西村 寿貴、堀田 成美、増田 勇希、松本 綾乃、峯 愛美、山岡 利沙子

連携団体担当者からのコメント

アズトラベルサービス株式会社 柴辻 章氏

 2014年のベトナムでのマングローブ植樹の経験から、本年度は植樹の本数を少なくしましたが、プーケットでの植樹場所は足場も良く短時間で終わってしまいました。来年度は植樹本数を増やすことと、現地バングラン村の村長や役所のスタッフと意見交換の場を設けて、毎年交流が深まるような植樹にしていきたいと計画中です。孤児院(2004年のスマトラ島沖地震で親を亡くした孤児のための施設)は初めて訪問しましたが、この施設が学生の皆さんに一番印象深かったのではないでしょうか。施設には小学生から高校生くらいの子供達が生活しており、そこでのスポーツ交流や折り紙などの室内交流で僅かな時間でしたが、学生の皆さんと孤児たちの絆が深まったようで、参加した学生たちの意見では、日程があれば孤児院には再度訪問したいという声をたくさん聞きました。現地からも、訪問に対する多数の感謝が寄せられております。来年度は、滞在時間を長くして孤児たちとの交流が深まるような訪問にしたいと考えております。

教員のコメント

経済学部 石井 雄二 教授

 これまでタイやベトナムでマングローブ植林を経験してきましたが、今回の植樹活動は、きわめて明確なコンセプトで実施されたところに、大きな意義を見出すことができます。
 今回は、マングローブの防災機能に焦点を当て、2004年にスマトラ沖地震で甚大な津波の被害を受けたプーケット島をフィールドに植樹を行い、津波の被害を緩和するマングローブの役割に想いを馳せて学ぶことができました。同時に、その津波の被害を受けて親を亡くした孤児たちとの交流活動を通して、タイの異文化理解を深めたたけでなく、孤児たちの存在の背景にある文脈や関係性にまで踏み込んで考えるきっかけを現地から得ることができました。
 異なった文化や環境のもとでの海外での活動は、その準備作業や事前の情報収集、学生たちとの相互理解など、また安全性や安心の面からも気苦労は多くありますが、海外に行く前と以後では、学生の成長ぶりには目を見張るものがあります。学生たちの自己「変化」には驚きや新たな発見があり、将来社会の各方面で活躍するための「軸」となる貴重な経験を積ませる機会を提供し、多様な人々との交流それ自体がもつ教育効果を確信して、今後とも学生たちと共に自らも成長していきたいと思っております。

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