活動の目的及び取り組む課題

 大阪府吹田市は、北は自然豊かな①千里ニュータウンエリア、②古くからの集落が残る山田エリア、③南は吹田駅周辺の歴史ある吹田のまち、さらに④商店や飲食店の多い繁華街の江坂など、多様な歴史文化資源をもち、それらを巡るまち歩きを含めたフットパスも多様である。しかし、それらの地域資源は吹田市民や近隣市民にあまり知られていない。吹田市は、将来の交流人口増加をめざして、近隣地域だけでなく、さらに、新大阪に集まる国内外の観光客を誘導し地域を活性化する必要がある。この課題に取り組むために、本ゼミは、国内外の地域の事例を参考にしながら、吹田歴史文化まちづくり協会(以下、協会とする)とともに、吹田市のフットパスのルートや内容、広報を再検討し、豊かな地域づくりのためにフットパスの活用を促進することを活動目的とする。

活動内容

 2016年4月、塩路ゼミは、「吹田歴史文化まちづくり協会」(以下、協会とする)のご協力のもと、「フットパスを使った豊かな地域づくり」というテーマで活動を開始しました。5月、協会の「吹田まち案内人」の方々の案内で、旧吹田村、山田村と千里山、江坂で、5人ずつの3チームに分かれて「まち歩き」を実施しました。その後、6月から7月にかけて学生たちだけで同じエリアの「まち歩き」を行い、地域の歴史文化だけでなく、商業施設や休憩ポイントを含めて、さまざまな発見をしました。
 8月には学生2名が北海道で開催された「カレッジフットパスフォーラム」に参加し、全国でフットパスと地域づくりの取り組みを行っている大学生たちと交流しました。10月には秋田県本荘市で開催された「日本フットパス協会全国の集い」に学生2名が参加し、地方におけるフットパスの状況について実際に歩くことで視野を広げ、それに関わる人々と交流しました。
 11月にはこれまでの活動について吹田歴史文化まちづくり協会において「フットパス交流会」として中間報告を行い、まち案内人の方々と学生の気づいた点について意見交換をし、3チームがフットパスとして歩くコースを提案しました。12月には学生5名が千葉県の江戸川大学で開催された「日本観光研究学会」においてポスターセッションを行いました。そこでは夏休みにイギリスやオーストラリアにおいて学生たち自身で実施した海外フットパス調査について報告しました。報告を通して、「フットパス」という言葉の認知度が日本では低いことに気づき、報告を聞いた人から「まち歩き」との違いなど多くの質問を受けました。また、他大学の学生の発表を通して、観光の多様性を知ると同時に、より一層フットパスと地域づくりの可能性について実感したようです。
 2017年3月には、今年度の知見をまとめた最終報告会を吹田歴史文化まちづくり協会で開催しました。そこでは、11月の交流会で話し合ったさいに出されたフットパスやまち歩きの問題点や課題についてまとめ、フットパスがまち歩きとは異なり、観光化ではなく、まちづくりや活性化に貢献できるという点について提示しました。同協会の方々から大変貴重な感想や質問をいただきました。このゼミ活動は、まだ取り組むべき課題はとても多いですが、次年度に向けて継続していく予定でいます。

代表学生の感想

 1年間を通して、多くの人と交流し、フットパスについての知識を深めることが出来ました。なかでも、私が参加した全国フットパス大会が印象に残っています。秋田県のある小学校では授業の一環としてフットパスを学び、実際に歩いて地域を知るだけでなく、案内人として地域を紹介していました。その取り組みを聞き、今まで海外のものだと考えていたフットパスがぐっと身近なものに感じました。私たちも吹田市を例にフットパスルートを考えていく中で吹田市は神社や寺などの古い文化と大型複合施設やカフェなどの新しい文化が融合している町だと気付きました。
 また、私自身プレゼン力がついたと思います。交流会で年配の方に話すときと学会やゼミ報告会で同年代の人へ話すときでは、話すスピードや言葉の説明を変えることで相手の理解が深まることを学びました。今後、様々な場面でプレゼンは必要となってくるので、この学びを生かしていきたいです。

国際観光学部 3年生 中尾 美帆

参加学生一覧

薗田 輝弥、藤原 ロッテー、池側 杏、沖本 光平、唐崎 隼、田中 葉月、徳永 豊、中尾 美帆、永田 稜、萩原 竜太郎、淵上 貴弘、舟引 千春、三井 紅実子、山口 実土里、山本 美帆

連携団体担当者からのコメント

吹田歴史文化まちづくり協会 瓢 正男氏

 2016年5月に、塩路教授から「フットパスとまちづくり」をテーマにして吹田市内の「まち歩き」のガイドを依頼されました。「フットパス」と聞いても聞きなれない言葉のため、調べてみると、「発祥は英国で、森林や田園地帯、古い街並みなどの地帯に昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩くことができる、古径のこと」と説明されています。吹田には、森林や田園風景は見られませんが、歴史ある寺社仏閣、古い街並みや歴史街道などが多く残されていることから、その分野であれば得意分野であると引き受けました。
 昭和15年から昭和30年の町村合併まで、旧吹田村・旧榎坂村・旧山田村・旧佐井寺村と独立した村でした。学生さんたちには、「まち歩き」の中で各村の特徴を感じて頂けることを期待していました。しかし、コースに精通したガイドが担当しましたが、「観光まち歩き」の傾向が強かったようです。
 しかし、後日、学生さんだけで同じコースを歩かれ、「吹田まち案内人」から聞けなかった、多くの情報(休憩場所、・公園・古民家・路地・商店街・飲食店)を得て、地域の人々と交流する中で地域の特徴を学ぶなど、多くの収穫があったことが発表会で報告されており、「さすが」と感じました。

教員のコメント

国際観光学部 塩路 有子 教授

 4月に開始当初は、まち歩きもしたことがない学生たちでしたが、5月に吹田まち案内人の方々と一緒に歩き、6月に自分たちだけで歩いたことで、歩くからこそ見える、感じる、考えることがあることに気づいたようです。その後は、海外調査や他大学の学生との交流、地方でのフットパス経験、学会での発表を通して、自分たちが調べ発見した内容をまとめ、口頭で発表し、さらにその内容をもとにして他者と意見を交換するという、社会人にとって不可欠な力を身につけることができたと思います。とくに、内容を発表するさいに、学生同士、目上の社会人、年配の地域の人々に対する場合と、多様な人々に向けて、自分たちの考えをどのように伝えればよいのかを工夫するようになりました。また、地域の現状を自ら歩いて知り、地域の人々と交流して学んだことは、実社会における人との関わりの重要性を身をもって知る機会となったと思います。

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