活動の目的及び取り組む課題

 2016年3月、スポーツ庁と観光庁、文化庁が包括亭連携協定を結び、新たに「スポーツ文化ツーリズム百選(仮称)」を策定することが発表された。それに伴って、これまで主にスポーツ業界で使われてきた「スポーツツーリズム」という言葉がさらに一般的に広く普及し、スポーツ参加を目的とした旅行への注目が高まることが予想される。
 こうした動きの中で、地方自治体では域内の観光およびスポーツ資源を活用した参加型スポーツイベントの開催を通じて、その地域を活性化させる取り組みを推進している。加えて、このようなスポーツイベントの開催やそれに伴う環境整備は、観光客数の増大だけではなく、地元住民のスポーツ参加率や身体活動量を増加させる効果があると期待されている。
 そこで本キャリアゼミでは、兵庫県香美町との連携を通じて当該地域内のスポーツ資源を調査し、それらを活用して観光客数の増加および地元住民の身体活動量の向上に寄与する方策について検討することを目的とする。

活動内容

 本キャリアゼミでは、兵庫県香美町のスポーツ資源を調査し、それらを活用して観光客数の増加および地元住民の身体活動量の向上に寄与する方策について検討することを目的としました。しかしながら、実際には当該地域で開催されたトレイルランイベントの魅力を発信する方法の検討と、都市圏に住む大学生が楽しめる香美町ツアーの検討が主な活動内容となりました。
 まず、トレイルランイベントに関する活動は2016年6月中旬に現地調査を実施し、体力に自信がある学生3名が地元のトレイルラン愛好家の方々と一緒に、実際に大会でランナーが走るコースの一部(約25km)を走り切りました。加えて、周辺施設の見学を済ませ、その情報をゼミの授業内で他の学生と共有し、7月上旬の大会本番に向けて運営補助および情報収集の準備を整えました。
 大会当日は11名の学生が香美町を訪れ、ランナーへのコース誘導や応援、完走証の印刷などを手伝いました。その一方で、大会後にこのイベントの魅力を伝えるためのプロモーション動画を作成するためにアンケート調査とインタビュー調査、動画撮影を実施しました。
 その後、収集した情報から香美町ならではの魅力を抽出して動画のコンセプトを検討し、撮影した動画の中からそのコンセプトが伝わるシーンを抜き出して90秒程度の動画を作成しました。これを2017年2月に香美町で行った成果報告会で披露し、そこで頂いた意見を基に修正を加えて「最終版」が完成しました。2017年7月に香美町で開催される第5回目の同大会の集客に、この動画が少しでも役立てば幸いです。
 一方、大学生向けの香美町ツアーに関する活動は、4月から現地の情報や、最近注目を集めているアクティビティとツアーの情報を集め始め、6月と7月の2回の下見を経て、8月に約40名の学生を対象に「夏合宿」を実施しました。この合宿では企画側の学生たちが考えたアクティビティを参加者側の学生に体験してもらい、その感想をまとめたレポートを分析して、目的である「学生向けのツアー」を検討しました。2017年2月の成果報告会で香美町訪れた際には、冬の魅力も体験するためにゲレンデの調査やスノーシュー体験会なども実施しました。
 このように、夏と冬に香美町を訪れた学生たちは、普段、大阪ではなかなか味わえない四季を通じた大自然の変化を体感し、さらに中山間地域の観光・スポーツ資源に興味を持ったようです。来年度は、今回参加した学生の情報発信力を活用して、より多くの人々にこの地域の魅力を味わってもらう予定です。

代表学生の感想 (早乙女ゼミ)

 今年度、早乙女ゼミでは黒部ゼミと合同で兵庫県香美町の観光、スポーツ資源を活用したアクテビティを開発し、地域の活性化に貢献する活動を行ってきました。
 4月から現地の情報収集をはじめ、6月に現地調査、その後、ゼミの時間を使って自分たちが考えた企画をより具体的にし、立体感のある企画作りを目指しました。
 7月には、瀞川平姫ボタルトレイルランの運営補助を手伝わせていただきました。参加者に向けたアンケートや、主催者やランナーへのインタビューを行いました。この結果を後期のゼミの時間を使って集計をしたり、トレイルランの来年度のプロモーション動画やインタビュー動画の作成をまとめたりしました。
 それらの成果物をもって2月に再度、香美町を訪れ、今年度の活動報告を行い、前年度の感謝の気持ちと、来年度への抱負を語らせていただきました。今後は、7月に行われる流通学部のゼミ大会で、キャリアゼミでの活動内容を詳しく発表する予定です。

流通学部 2年生 柴田 佳波 (早乙女ゼミ)

代表学生の感想 (黒部ゼミ)

 この1年間、キャリアゼミを通じて兵庫県香美町で様々な活動をしました。普段都会に住んでいてはできない様な経験をたくさんしました。7月に開催された「第4回姫ボタル瀞川平トレイルラン」ではイベントを成功させるためにはたくさんの人の協力が必要で、イベントが成功した時の嬉しさを学ぶことができました。8月の合宿では人口が減ってきて高齢化が進んでいる香美町を活性化するために、どのようなことができるかを学生たちで考えました。香美町はまだまだ活性化する可能性を秘めており、そのために動いている人がたくさんいることを学びました。
 1年の活動で私は香美町の人たちの暖かさや人と人とのつながりの強さや、自然が身近に感じられるイベントがたくさんあること知りました。他の地域の人に知ってもらうためにトレイルランの動画を作成しホームページで公開することや、SNSを通じて香美町を知ってもらう機会を増やしました。キャリアゼミを通じて少しでも貢献できていたら嬉しく思います。

流通学部 3年生 小林 健太(黒部ゼミ)

参加学生一覧

柴田 佳波、片山 周、川崎 海、河野 美乃里、喜納 一磨、近藤 集、坂本 尚也、佐野 拓海、柴崎 仁、佃 愛実、長田 龍憲、八百谷 真希、山田 純平、山中 里沙、大北 来輝、倉持 純平、赤松 将太、池上 大志、池田 周平、井関 雄介、上林 哲大、北野 貴士、小林 健太、眞銅 遼祐、鎭西 一真、中野 竣、藤岡 崇之、山下 琢真、渡邉 優樹、中川 慎太郎

連携団体担当者からのコメント

株式会社むらおか振興公社 田丸 明人氏(代表取締役社長) 

 今年度、阪南大学の学生に、兵庫県香美町の山岳観光とスポーツアクティビティの開発の手伝いをして頂きました。2017年2月に1年間の活動報告会を開催し、今後、山岳観光の参考になる知見を得ることができました。観る観光から体験する観光へと流れが変わりつつある中、学生自身が活動経験を通して山の楽しみ方や体力と向き合う中で、苦しさ、終わった後の達成感など貴重な体験の報告もお聞きしました。
 お手伝いして頂いた「第4回姫ボタル・瀞川平トレイルラン」のアンケート調査には、沢山の方の回答も頂き、より参考になるもので、今後の運営に役立ものと思います。また、もう一つのプロモーションビデオの作成は、イベントの暖かさと、厳しい中にも楽しさの伝わるもので、ランナーからの評価がとても高く満足しています。阪南大学のゼミの皆さんが真剣に取り組んで下さった結果だと思います。
 今回の取り組みは、この地域の新たな魅力作りとして、期待できるものと考えています。本当にありがとうございました。

教員のコメント

流通学部 黒部一道

 ゼミ生とともに香美町の観光・スポーツ資源を利用した地域振興に協力させてもらいました。学生達が最も香美町との繋がりを感じ取ることができたのはトレイルランの大会ではないかと思います。大会は何千、何万と参加する大規模なスポーツイベントとは異なり、参加者一人一人に満足してもらえるアットホームな大会を目指したイベントでした。学生それぞれが重要な役割を任されており、町をあげたおもてなしとは何か?を感じられたのではないでしょうか。その後も香美町の自然を利用したゼミ合宿を夏と冬に実施し、香美町の持つ豊富な観光資源の利用方法について学生なりに考えることができたと思います。
 今後の課題としてはトレッキングコースの看板整備が挙げられます。道しるべとなる看板が不足していることだけではなく、目的地までの時間や消費カロリーを表記することで健康への意識を喚起できるような新しい取り組みも必要です。次年度以降も継続的に学生達の斬新な発想と積極的な行動力に期待しながら協力していきたいと思います。

流通学部 早乙女誉

 昨年度に引き続き、「やりたいことをやる!」というテーマのもとに、学生が自分自身の興味・関心に合わせて各々の課題を設定し、その解決に取り組みました。その中で最も重要視したことは、「常に目標を意識してPDCAサイクルを回す」です。
 例えば、夏合宿で実施したアクティビティを担当した学生には、情報収集と下見などの準備を入念にすることを求めました。まず、「香美町にどのようなスポーツ資源があるのか」、また「最近、若者の間でどのようなスポーツや運動が流行っているのか」を調べてもらいました。その後、現地調査と大学内での練習会を経て内容をブラッシュアップしていき、8月に約30名の参加者を対象にアクティビティを実践しました。準備段階で失敗を繰り返したおかげで、本番では参加者から高評価を頂きました。
 今回は、仲間内の小規模なイベントに留まってしまいましたが、知らない土地でゼロから「遊び」を創出する難しさを学ぶことができたのではないでしょうか。今後は、対象者を拡大し、さらに香美町の魅力を引き出せるイベントを企画・運営していきたいと考えております。

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