活動の目的及び取り組む課題

 スポーツ庁は2016年2月に「スポーツ未来開拓会議」を立ち上げ、スポーツ産業の活性化に向けた議論を始めた。その中では、大学スポーツも有望な分野の1つとして成長が期待されている。こうした新たな動きに先行して、株式会社アシックスと早稲田大学は組織的連携を締結し、スポーツ振興を通じた地域社会貢献や大学スポーツの産業化を推進すると発表した。
 近年、本学においても全国トップレベルの競技力を有するサッカー部を中心に、協賛企業などと連携してスポーツ振興に寄与する取り組みが盛んに行われている。しかしながら、本学はもとより我が国の大学スポーツの人気は、プロスポーツ並みの売り上げを誇るアメリカの大学スポーツのそれに遠く及んでいない。このことから、産業として成熟していない日本の大学スポーツと企業の連携は、大きな利益に結びついていないことが容易に想像できる。
 そこで本キャリアゼミでは、本学のスポーツ活動に関わっている企業と連携して同クラブの活性化(特に観客数の増大)を図り、それを同企業の利益へとつなげる方策について検討することを目的とする。

活動内容

 本キャリアゼミでは、近年、国が産業化を進めようとしている大学スポーツに着目し、本学の「するスポーツ」と「見るスポーツ」の相乗効果によって、連携先の企業の課題を解決することを目的としました。
「するスポーツ」に関しては、ミズノスポーツサービス株式会社が運営する「スポーツパークまつばら」で定期的に学生を対象としたフットサルイベントを開催して、学内における同施設の認知度と利用率の向上を目指しました。この活動に関わった学生たちは、仮想の会社組織を設立し、頻繁に会議を開催しながら与えられた予算を有効に活用する方法について話し合いました。その際、簿記や会計を専門とする臼谷ゼミが経営陣となり、予算の管理や執行の承認を担当しました。一方の早乙女ゼミはスポーツマネジメントを専門としていることから企画の立案・運営を担当しました。
4月から開催した、個人で参加できるフットサルイベント、通称「個サル」では、新入生が積極的に参加してくれて、同学年の友人や先輩たちとの縦のつながりを作る良い機会となっていたようです。最終的には今年度は計10回(平均参加人数:約15名)の個サルを開催し、本キャリゼミの活動の看板企画となりました。また、9月以降から本格化した「朝サル」では、毎週月曜日と金曜日の7時から学生と教職員(平均参加人数:約10名)が一緒になって汗を流し、運動不足の解消や爽やかな気持ちで9時からの授業や仕事に臨むことにつながりました。その後、この朝サルから「朝ソフト」が派生し、野球が好きな学生たちが朝からソフトボールを楽しんでいます。来年度は、これらの活動を「朝活」と呼んでヨガやランニングなどの誰でも参加しやすい種目を増やしていく予定です。
「見るスポーツ」に関しては、株式会社デサントと連携して大学運動部のスポンサーやサプライヤーのメリットを向上させる方策を検討することを目指しました。しかしながら、8月に本学サッカー部の応援Tシャツを作成するだけにとどまり、当初予定していた連携は実現できませんでした。
「するスポーツ」と「見るスポーツ」の相乗効果については、フットサルイベントなどに参加してくれた学生でコミュニティを形成し、その中のメンバーが中心となって7月と11月に本学のサッカー部の応援イベント(試合の宣伝と観戦)を実現しました。その際、株式会社デサントで作成して頂いた応援Tシャツが一体感の醸成に寄与してくれました。このシャツは、スポーツをする際にも適しているため、学生が企画した各種「するスポーツ」のイベントでも大いに役立っています。
今後は、引き続き学生や教職員、松原市民がスポーツをする機会を創出すると共に、今年度の課題となった大学スポーツを見る機会を増やし、阪南スポーツのステークホルダーの課題解決につなげていきたいと考えております。

代表学生の感想

 私たち早乙女ゼミでは、2015年度の後期より、個人参加型のフットサルイベント(以下、個サル)を月に1,2回程度、定期的に開催してきました。その後、それに参加してくれた学生を集めた「ほっとサル」というコミュニティを作り個サルの参加連絡や告知をスムーズに行えるような工夫をしていました。
 今年度からはそれらの活動をより本格的に行うために、臼谷ゼミと連携して、「ほっとサル株式会社」という仮想の会社組織を立ち上げました。この組織は、スポーツマネジメントを勉強している早乙女ゼミが実働部隊として個サルを中心としたスポーツイベントを開催し、簿記や会計などを勉強している臼谷ゼミが収支の計算等を行うという形式で運営しました。
 以前は個サルのみの開催でしたが、ほっとサル株式会社となってからはフットサル大会や朝サル、本学サッカー部公式戦の応援企画などにも取り組み、活動の幅を広げました。”する”と”みる”両方の視点からのスポーツ学生に提供することを目的に様々な活動を行なっています。
 私は、この活動を通して普段学んでいる知識を実際の現場で活用することで、より学びを深めることができました。さらに、スポーツを通じて多くの人間関係を形成することが出来ました。今後は現在中心となっているサッカー・フットサル以外にも沢山のスポーツに触れ合っていき、活動の幅を広げたいと思います。

流通学部 3年生 大塚 楠斗(早乙女ゼミ)

 私たち、臼谷ゼミは早乙女ゼミが昨年度より活動している学生を対象としたスポーツイベントに携わるのと同時にこの活動をより本格的に行っていくために仮想の会社組織「ほっとサル株式会社」を立ち上げました。この組織はスポーツマネジメントを学んでいる早乙女ゼミが中心となって企画の立案・運営を行い、簿記や会計を学んでいる臼谷ゼミが活動の収支の計算を担当する形で運営してきました。
 今年度が本格的に動き始めた初めての年だったため、イベントの予算報告や決算報告でうまくいかなかった部分や業者との連絡ミス・備品の発注ミスなどで使わなくてよかった予算を無駄に使ってしまうなどの失敗がありました。また、サッカー経験者が多かったためイベントの内容がサッカー・フットサルに偏ってしまい、メンバーが固定化してしまったという反省点が目立ちました。
 しかし、この活動がなければ繋がることがなかったかもしれない人間関係や、普段、自分からすることのないスポーツの楽しみを知ってもらえたというメリットもありました。
 来年度以降は全員がやるべきことを明確にして、メリットの部分は継続し、反省点を改善していきながら、また参加したいと思ってもらえるような活動を目指していきます。

流通学部 2年生 伊賀 太一(臼谷ゼミ)

参加学生一覧

荒瀬 貴史、石田 美咲、射水 涼、上田 康平、上田 千尋、大塚 楠斗、大野 夏月、大野 莉央、大本 菜桜、岡田 留奈、鎰谷 友紀子、木下 佳那、小嶋 大輝、酒井 一磨、清水 里美、高村 圭祐、武田 紗依、津田 徹也、寺岡 大希、中野 美咲、二瀬 悠貴、人見 耕大、平尾 奈々、藤長 悠平、藤本 実咲、堀本 えみり、宮田 廉、山本 葉月、奥谷 文栄、香川 柊、瀬戸 樹季、藤井 亜佑美、宮脇 若菜、和田 静流、伊賀 太一、池田 隼哉、稲田 真希、越智 大哉、柏原 孝昭、杉本 陸、竹川 弥優、西村 友宏、畠中 雄大、古川 翔大、森岡 昌弘、山下 快生

連携団体担当者からのコメント

ミズノ スポーツサービス株式会社 太 健二氏(スポーツパーク松原 支配人)

 松原市のスポーツ振興をテーマに昨年オープンしたフットサルコート&スケートパークの複合施設、スポーツパークまつばら(松原市施設・指定管理者ミズノグループ)の「稼働率、利用者増加」を課題とし、積極的な対策実施に取り組んでくれました。
施策として阪南大学生さんが運営する学生フットサルプログラムの提案を受けミズノグループのフットサル施設運営のノウハウ共有と学生企画案との融合し、プログラム導入を実施してくれました。導入にあたり、課題の抽出から、立案、対策実施、検証、改善とPDCAサイクルをうまく取り入れながら運営の実施ができており、スポーツ施設運営においても非常に重要な対策実施までのスピード感は素晴らしいものがありました。
 今回の活動により、当施設での学生フットサルプログラム実施による稼働率、利用者増加はもちろんですが、阪南大学生の施設認知度が大幅に向上した結果として対策実施前の阪南大学生利用団体は毎月5%程でしたが、現在では15%前後を推移、約10%の増加がみられます。今後は、多様化が進むフットサルコートにおいて、今回の経験を元に更なるチャレンジによる利用者層の拡大に期待をしております。

教員のコメント

流通学部 早乙女 誉 准教授

 昨年度に引き続き、「やりたいことをやる!」というテーマのもとに、学生が自分自身の興味・関心に合わせて各々の課題を設定し、その解決に取り組みました。その中で最も重要視したことは、「常に目標を意識してPDCAサイクルを回す」です。
 例えば、定期的に「個人フットサル(通称「個サル」)を開催した学生には、担当者を集めての事前打ち合わせと議事録の作成、事後報告と情報共有を徹底するよう求めました。特に、約10名の主要メンバーには毎回の打ち合わせで各自の役割を認識しもらうことを重視しました。そうすることで、全員が自主的に活動に参加し、自分が担当したイベントを通して積極的にPDCAサイクルを回すことができるようになりました。しかし、その一方で自分が担当していない仕事の進捗状況を把握できていなかった、という反省点もあります。とりわけ、SNS上での話し合いが上手くかみ合わず、直接会って打ち合わせができない時期に、一気に作業効率が低下しました。
 これからの時代、ますますSNSを活用した仕事の重要性が高まることが予想されます。これからのキャリアゼミ活動では、そういった時代の変化の中でも、自分の役割を全うしながらチームの目標達成に貢献できる人材を育て行きたいと考えております。

流通学部 臼谷 健一 准教授

 臼谷ゼミは、昨年度から本学学生対象のスポーツイベントを企画・運営されている早乙女ゼミに、おもにマネジメント面から支援することを目的に連携させていただきました。
 学生の企画力・発想力には素晴らしいものがありますが、企画を実行に移す際に必要となる構想力(物事を体系的に考え、まとめあげる能力)や、事後に検証してさらなる改善へと繋げる力にやや物足りない面もあります。
 今回のキャリアゼミではこれらの力を伸ばすために、予算、決算、収支報告の流れをシステム化し、「イベントごとに何が必要か?」、「そのコストは?」、「コスト・ベネフィットからの視点から本当に必要か?そうであればその代替案は?」ということを常に意識してもらうようにしました。今後彼らが社会に出るにあたっても、コスト・ベネフィットの視点と、それを明文化する力、そして検証する力は常に求められるものであり、今回の活動がそれらの力を磨く契機となったと思われます。今後は各々のフィールドでその力を発揮し、さらに向上させてくれることを大いに期待します。

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