活動の目的及び取り組む課題

 観光による地域の活性化を目指している国内外地域に対し、地域サイドの意向を踏まえ、「訪問者=学生」の視点を交えながら観光資源等を再発掘し、地域の魅力をテーマ性のある旅行プランに仕立て企画商品として提案する。地域の観光資源を活かした旅行商品化により、観光客を地域に呼び込み交流人口が増加し、地域振興に役立てる、というのがキャリアゼミ活動の目的である。観光が重要な政策課題になった2002年以降、いわゆる着地型観光が様々な地域で積極的に取り上げられるようになった。しかし実際の集客となるとなかなか成果が上がっていないのも現状である。このような現状の課題に対し、キャリアゼミでは、着地型観光の弱みと考えられる現地サイドの一方向的になりがちな観光資源の商品化に対し、学生の視点を交え、地域住民、観光事業関係者等とコミュニケーションを図りながら、地域が提案する観光資源に需要側の要望を加味し市場性を付加する。そうすることによって供給サイド(地域)の旅行商品内容と需要サイドの期待とのギャップが縮小し、市場(消費者)が求めるテーマ性のある体験型等の旅行商品の造成が実現し、交流人口の増加という課題の克服につながるものであると考える。

活動内容

 観光振興による地域活性化を目指して「福井県芦原市あわら温泉地域の活性化」に向けて、阪南大学国際観光学部の2つのゼミ学生がゼミ担当教員指導の下、それぞれの専門性に基づいた観点から、取り組むというこれまでにない新たな産学官連携事業の試みです。具体的には、李ゼミは、サービスマネジメントの視点から温泉地域にある宿泊施設等ホスピタリティ事業に対して改善点の提案を行いました。芦原温泉における大型旅館を対象にオンライントラベルエージェントである楽天トラベルの口コミサイトを調べ、幾つかの旅館のサービスについての比較分析を行いました。そして、現地芦原温泉でのフィールドワークにおいて、宿泊顧客に対するアンケート調査を実施しました。口コミサイトの比較分析結果とアンケート調査の分析により、旅館での宿泊顧客が満足するサービスや不満なサービスについて明らかにし、顧客が求めるサービスについて提案を行いました。
 一方、小林ゼミでは、地域サイドの意向を踏まえ、「訪問者=学生」の視点を交えながら観光素材等を再発掘し、地域の魅力をテーマ性のある旅行プランに仕立て企画商品として提案しました。具体的には、①都会に住む若年層をターゲットにした「運気アップツアー〜新しい運気を呼び込む〜」金運、恋愛運等7つの運気に関連のある地域に体験を交え訪れる②シニア層をターゲットにした「オトナの秋学旅行〜自然と体験と食欲の秋INあわら〜」自然、体験、歴史、文化をキーワードに秋のあわらを舞台に訪れ、体験し学ぶというシニアの新たな秋学旅行の提案③関西地域の若年層をターゲットにした「良縁巡りの旅〜Happy Life〜」幸福度ランキング全国1位である福井県において様々な縁を結び幸福になる旅、以上3つの作品を提案しました。活動は、以下の行程で行いました。
① ㈱阪急交通社、福井県芦原市芦原温泉観光協会等の産学官連携プロジェクト説明会の実施
② 芦原温泉地域活性化に向けた産学官連携プロジェクトの各ゼミの役割分担の確認
③ 各ゼミ指導教員の専門性を活かした視点からの芦原温泉地域の現状と課題の分析
④ 複数回の現地調査の実施
⑤ それぞれのゼミ活動のまとめ、報告書等の作成
⑥ 芦原市温泉協会、観光協会、㈱阪急交通社を交えての最終報告会の実施(2017年2月16日実施済み)

代表学生の感想

 小林ゼミでは、これまで多くの企業や地域と連携し、ツアープランを提案してきました。その経験を活かし、福井県あわら温泉地域が抱える課題を研究。3つのチームに分かれ、それぞれのチームが現地でのフィールド調査を行ってきました。それぞれの視点から観光素材を再発掘し、ターゲット客層を定め、新たなテーマを設定し、温泉・カニだけに頼らない体験型の新たなストーリ性のあるツアープランを提案しました。?あわら市のどのような魅力を訴求していくべきなのか?あわら市でどのような過ごし方を提案して行くべきなのか?旅行商品とするならばどのような工夫をするべきなのか?あわら地域をどのように紹介、露出して行くことが有効なのか?テーマを行程に従ってどのようにストーリー化してゆくのか等、マーケティングの手法を通じてそれぞれのグループで知恵を出し合い考えて行きました。その過程でチームとしての一体感や、コミュニケーションの大切さ、責任感、達成感を学ぶこともできました。

国際観光学部 3年生 山名 恒輔

参加学生一覧

庄司 幸代、松原 ゆう、安達 美幸、扇谷 真実、岡崎 翔太、岡村 奎佑、嶋崎 桃花、曽我 和華、高岸 伊津美、中 千鶴、中瀬 愛子、中土 加菜、中村 聡志、三國 史織、南野 沙綾、山名 恒輔、

連携団体担当者からのコメント

一般社団法人 あわら市観光協会 会長 前田健二氏

 この度は、芦原温泉・福井県を題材に取組をして下さり、誠に有難うございました。あわら市・福井県の観光に携わる者として、大変嬉しく心より感謝申し上げます。
 今回全部で六つの発表がございました。どれも素晴らしい内容でとてもびっくり致しました。そのまま即実行に移せる出来上がりの提案もありましたし、アンケート分析によるご指摘は、納得出来る内容でした。
私には内容も重要でしたが、着眼点を重視して聞いておりました。「灯台下暗し」「隣の芝生は青く見える」と言われる様に、私たちは外からの目線をなかなか持てないものですし、無い物ねだりをしてしまいます。そういった中で、足元を見つめなおすアドバイスを頂いたと思います。有難うございました。発表内容は、目的と手段がはっきりしていましたし、聞き手として分かりやすかったと思います。個別の評価はあえて申し上げません。それは、全ての発表が私たちに沢山の事を気づかせてくれましたし、現時点での完成度よりも着眼点の方が大事だからです。
 今回の提案内容を観光協会として活かして行き、学生の皆さんが卒業旅行などで福井を訪れた際に、「あっ!」「これって?」と思ってもらえる様努力して参ります。
この度は本当に有難うございました。

一般社団法人あわら市観光協会 事務局長 武田正彦氏

 参加された皆さんのプレゼンテーションを拝聴し、テーマ設定や切り口に若者らしさがあふれ、とても新鮮に感じました。
また、とても素晴らしいと感じたのは、「あわらのために、福井のために」という皆さんの気持ちが伝わってきたことです。実際に当地に足を運び、チーム全員で様々な角度から調査・研究されたことに深く敬意を表したいと思います。
 旅行プランの提案については、過去様々な大学、団体からご提案をいただいておりますが、今回はあわら温泉の旅館が提供するサービスについての口コミサイト等の分析を踏まえた提案など、これまでにない提案が多く、驚きとともに非常にうれしく思いました。
 今回ご提案いただいた各プランは、当協会の旅の企画チームとも共有し、今後造成する各種プランに活かして参りたいと考えています。

教員のコメント

国際観光学部 小林 弘二 教授

 連携型キャリアゼミでは、「福井県芦原市あわら温泉地域の活性化」に向けて、国際観光学部の2つのゼミが担当教員指導の下、それぞれの専門性に基づいた観点から、取り組むというこれまでにない新たな産学官連携事業の試みです。小林ゼミでは、学生の視点を交えたツアープラン企画による地域活性化を活動テーマに、3チームに分かれて活動を行いました。新たなツアープランを企画するに当たり、チーム内で徹底的に議論をし、意見をまとめ上げて行く過程で「相手の話を聴く力=傾聴力」、「理解しまとめる力=集約力」、「自分の意見を伝える力=伝達力」が備わってきます。幾つかのプロジェクトでの経験を通じて学生たちは、自ら考え計画し、調査し協力者を仰ぎ行動し、旅行プラン企画提案というところまでたどりつくことができました。このような貴重なゼミ活動経験はこれから直面する就職活動にあたっての経験値でありアピールポイントの大きなヒントになるのではないでしょうか。

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