活動の目的及び取り組む課題

 今日、旅行需要の地域への分散化が課題となっているが、地域社会が観光による活性化を図るにあたって、基本的な課題であるといえるのは、魅力あるハード(観光施設等)の整備とともに、ソフト面での充実(洗練された人的サービス)である。とりわけ、観光関連産業においては、そのサービス商品の提供や品質管理が重要な課題となっている。一方、大都市への集中化という共通の課題を持つ日韓両国の旅行市場において、地方都市での新たな観光資源の再発掘等が求められている。しかしながら、そのような地域においては、ある程度の観光施設は整っているがそれを効果的に運営する仕組みやサービス提供のあり方等のソフト面に難がある場合が多いと考えられる。そこで、キャリアゼミでは、地域における弱点であるソフト面(洗練されたサービス)での充実を支援する活動に重点を置く。それぞれの市場(地域)に見合ったサービスのあり方について検証する。具体的には、福井県あわら市や韓国清州市において顧客が求めるサービスはどのようなものなのか。それぞれの企業等が、ターゲット顧客に満足感を与える「よいサービス」とはどのようなサービスなのか。また、「よりよいサービス」の提供に適した仕組みやすぐれた顧客満足の実践を行っている企業の戦略とは、等についても考察する。この活動により、観光による地域活性化に貢献すると同時に、学生の実践的課題解決能力の向上という双方向での効果が期待できるものと考える。

活動内容

 観光振興による地域活性化を目指して「福井県芦原市あわら温泉地域の活性化」に向けて、阪南大学国際観光学部の2つのゼミ学生がゼミ担当教員指導の下、それぞれの専門性に基づいた観点から、取り組むというこれまでにない新たな産学官連携事業の試みです。具体的には、李ゼミは、サービスマネジメントの視点から温泉地域にある宿泊施設等ホスピタリティ事業に対して改善点の提案を行いました。芦原温泉における大型旅館を対象にオンライントラベルエージェントである楽天トラベルの口コミサイトを調べ、幾つかの旅館のサービスについての比較分析を行いました。そして、現地芦原温泉でのフィールドワークにおいて、宿泊顧客に対するアンケート調査を実施しました。口コミサイトの比較分析結果とアンケート調査の分析により、旅館での宿泊顧客が満足するサービスや不満なサービスについて明らかにし、顧客が求めるサービスについて提案を行いました。
 一方、小林ゼミでは、地域サイドの意向を踏まえ、「訪問者=学生」の視点を交えながら観光素材等を再発掘し、地域の魅力をテーマ性のある旅行プランに仕立て企画商品として提案しました。具体的には、①都会に住む若年層をターゲットにした「運気アップツアー〜新しい運気を呼び込む〜」金運、恋愛運等7つの運気に関連のある地域に体験を交え訪れる②シニア層をターゲットにした「オトナの秋学旅行〜自然と体験と食欲の秋INあわら〜」自然、体験、歴史、文化をキーワードに秋のあわらを舞台に訪れ、体験し学ぶというシニアの新たな秋学旅行の提案③関西地域の若年層をターゲットにした「良縁巡りの旅〜Happy Life〜」幸福度ランキング全国1位である福井県において様々な縁を結び幸福になる旅、以上3つの作品を提案しました。活動は、以下の行程で行いました。
① ㈱阪急交通社、福井県芦原市芦原温泉観光協会等の産学官連携プロジェクト説明会の実施
② 芦原温泉地域活性化に向けた産学官連携プロジェクトの各ゼミの役割分担の確認
③ 各ゼミ指導教員の専門性を活かした視点からの芦原温泉地域の現状と課題の分析
④ 複数回の現地調査の実施
⑤ それぞれのゼミ活動のまとめ、報告書等の作成
⑥ 芦原市温泉協会、観光協会、㈱阪急交通社を交えての最終報告会の実施(2017年2月16日実施済み)

代表学生の感想

 私達のゼミは、おもにホテルや、旅館についてのサービスやマーケティングについて学んでいます。その過程で、芦原温泉における旅館の集客を図るにはどうすればよいのか?というのをテーマにゼミ活動を行ってきました。その中で私達は、本大学の学生と芦原温泉で実際に宿泊されたお客様に対してアンケート調査を行いました。若者が思っている意見、実際に現地に宿泊された方々が考えている意見を集計し、それをまとめ、対策を練っていきました。私達も実際に旅館に宿泊させて頂いたので、その中で実際に感じた事などを話し合い、意見をまとめました。そして、まとめた意見を実際にあわら市観光協会や(株)阪急交通社の方々に発表させていただきました。そして、あらゆる観点からのご意見を頂き、私達の未熟さを実感しました。しかし、私達に至らなかった点、良かった点等のお言葉を頂き、私達が成長できる大きなものを今回の活動で得ることができました。この経験を活かし、これからのゼミ活動もなお一層励んでいきたいと感じました。

国際観光学部 2年生 板原 尊 (李ゼミ)

参加学生一覧

高橋 由季絵、岩根 みのり、宇高 正規、大西 杏香、佐藤 舞、花房 良太、日浦 久実、岡崎 龍矢、橋本 悠紀、船尾 篤史、眞鍋 良介、板原 尊、内海 純、大平 恵梨香、小川 柾樹、妹尾 美帆、東川 侑可、鍋島 海、西川 未涼、西村 直恭、福富 健、堀 聡那、三木 俊治

連携団体担当者からのコメント

一般社団法人 あわら市観光協会 会長 前田健二氏

 この度は、芦原温泉・福井県を題材に取組をして下さり、誠に有難うございました。あわら市・福井県の観光に携わる者として、大変嬉しく心より感謝申し上げます。
 今回全部で六つの発表がございました。どれも素晴らしい内容でとてもびっくり致しました。そのまま即実行に移せる出来上がりの提案もありましたし、アンケート分析によるご指摘は、納得出来る内容でした。
 私には内容も重要でしたが、着眼点を重視して聞いておりました。「灯台下暗し」「隣の芝生は青く見える」と言われる様に、私たちは外からの目線をなかなか持てないものですし、無い物ねだりをしてしまいます。そういった中で、足元を見つめなおすアドバイスを頂いたと思います。有難うございました。発表内容は、目的と手段がはっきりしていましたし、聞き手として分かりやすかったと思います。個別の評価はあえて申し上げません。それは、全ての発表が私たちに沢山の事を気づかせてくれましたし、現時点での完成度よりも着眼点の方が大事だからです。
 今回の提案内容を観光協会として活かして行き、学生の皆さんが卒業旅行などで福井を訪れた際に、「あっ!」「これって?」と思ってもらえる様努力して参ります。
 この度は本当に有難うございました。

一般社団法人あわら市観光協会 事務局長 武田正彦氏

 参加された皆さんのプレゼンテーションを拝聴し、テーマ設定や切り口に若者らしさがあふれ、とても新鮮に感じました。
また、とても素晴らしいと感じたのは、「あわらのために、福井のために」という皆さんの気持ちが伝わってきたことです。実際に当地に足を運び、チーム全員で様々な角度から調査・研究されたことに深く敬意を表したいと思います。
 旅行プランの提案については、過去様々な大学、団体からご提案をいただいておりますが、今回はあわら温泉の旅館が提供するサービスについての口コミサイト等の分析を踏まえた提案など、これまでにない提案が多く、驚きとともに非常にうれしく思いました。
 今回ご提案いただいた各プランは、当協会の旅の企画チームとも共有し、今後造成する各種プランに活かして参りたいと考えています。

教員のコメント

国際観光学部 李 貞順 教授

 李ゼミは、芦原温泉における大型旅館を対象に楽天トラベルの口コミサイトを調べ、幾つかの旅館のサービスについての比較分析と現地芦原温泉でのフィールドワークにおいて、宿泊顧客を対象に、アンケート調査を実施しました。これを通して、旅館での顧客が満足するサービスについて明らかにするとともに、旅館がより多くの顧客を集客するための取り組むべき課題について明らかにしました。以上の活動では、データの収集や分析、検討、課題解決に向けて新たな提案といった一連のキャリアゼミ活動を通じて、コミュニケーション能力や実践的行動力、プレゼンテーション能力の向上にも大いに役立ったのではないでしょうか。今後の就職活動にとっても大きなメリットとなり、卒業後、就職先での即戦力にもつながるのではないかと考えます。

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