活動の目的及び取り組む課題

 観光マーケティングの実践的な学びを目的として、株式会社名門大洋フェリーが運航する大阪南港・新門司港間のフェリー航路を利用する旅行者を増やす活動を展開する。学生側にとってはプロジェクトベースでこのような活動を行うことにより観光マーケティングを中心とする観光学の学び、そして社会人基礎力について高い教育効果を得ることが期待される。株式会社名門大洋フェリーにとっても、協働を通じて観光について高い意識と意欲を持ち学問として観光を学んでいる学生達の視点をマーケティングに生かすことができるような、また、旅行市場の一つであり、かつ今後の主要な市場となりうる大学生・若者のニーズをとらえることができるような、意義を感じていただける活動にしたい。

活動内容

 国際観光学部大谷ゼミ(2回生)はゼミの研究テーマである観光マーケティングをより実践的に学ぶことを目的に、株式会社名門大洋フェリー企画営業部よりキャリアゼミ活動の機会を頂戴し、大阪南港と新門司港を結ぶ航路を利用する旅行者を増やすための提案と実践を行いました。
 学生が実際に乗船・観光を行う取材活動を2回実施し、また運航していない時間帯に港を訪問し時間をかけて船内を取材するなどして、フェリーとその就航先の北九州及び周辺地域の観光について魅力を探りました。それらの活動をふまえ、別のフェリー会社(株式会社フェリーさんふらわあ)と活動している3回生とも協力しあい、フェリーを利用する観光の魅力を多くの人々にSNSとウェブサイトを通じて発信していくことになりました。
 具体的には、3回生と合同でTwitter(https://twitter.com/funelog)・Instagram(https://www.instagram.com/_funelog.com_/)のアカウントを開設し、試験的な運用を始めました。フェリーと就航先観光の魅力が伝わりやすいよう写真や文章にこだわり、特に若者・学生に訴求しようとしています。また体系的に情報を発信するためにウェブサイト(http://funelog.com)も構築しました。これらの取り組みはフェリー会社がオウンドメディアを活用することの提案も兼ねています。
 あわせて、紙媒体での情報発信にも取り組みました。若い女性がフェリーを利用して観光することを想定し、フェリーと就航先観光の女性にとっての魅力をさぐり、女性が興味を持つような内容や表現とした冊子を制作しました。これらはフェリー会社が若者・学生向けにプロモーションを行う場合に活用することも想定していますが、自分たちが大学祭やオープンキャンパスで配付したり、交流のある他学部・他大学ゼミでの配付も想定しており、フェリー会社がアプローチしづらい大学生へ、SNSとともに重層的にプロモーションを行うことを想定しています。
 このほかフェリーに関する情報を消費者がSNSで共有・拡散することを促す提案も検討し議論を重ねたたものの、企業として実際に取り込みたくなるような案を用意できず提案を断念しました。 
  • 打ち合わせの様子

  • 若者へフェリー旅の魅力を伝えるために制作した冊子

  • 若者へフェリー旅の魅力を伝えるために制作した冊子

学生の感想

 私たちはフェリーを利用する旅行者を増やす活動に取り組みました。名門大洋フェリーの船旅の魅力と就航先の観光を多くの人々に紹介しその魅力を伝えるために、リーフレット制作、SNSとウェブサイトでの情報発信、フォトプロップスの作成、動画制作などの取り組みを行いました。ターゲットを若者に絞り、その若者達にどのような情報を伝えれば乗船してもらえるのか議論を重ねました。そして実際にフェリーに乗る機会を作り実態を調べ、情報発信に使える写真・動画素材をたくさん集めるよう努力しました。それで得られたことをさまざまなテーマの旅の提案につなげ、情報発信に力を入れました。
 どの取り組みも効果を評価いただけるようなものにはなりませんでした。しかし、SNSを活用するプロモーションとそこでのリアリティあふれるコンテンツが重要であることをお伝えでき、特に私たちが自らモデルとなった写真・動画素材を使って若者達に発信しようとしたことに注目していただけたように思います。その結果、次年度にSNSと公式サイトを用いた同社のプロモーションをお手伝いする機会をいただけることになりました。今年度の活動では、企業の方に評価いただける成果を出すのは簡単なことではないことを痛感しましたが、もう一度機会をいただけるということでぜひ成果を出したいと思います。
 この活動を通して、ある商品の魅力を発信するということの楽しさを知りました。SNSなどまさに今大きな変化をしているプロモーションや企業・消費者間のコミュニケーションのあり方を考えることもできました。このような貴重な経験は3回生から始まる就職活動にも生かしていきたいです。
 そして何より得られたことは、フェリーの魅力を知ることができたということです。ゼミ活動だけでなくプライベートでもフェリーを利用するようになりました。今後も魅力あふれるフェリーの旅を楽しんでいきたいです。
 このような機会をいただいた名門大洋フェリーの皆様に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

国際観光学部 2年生 織田 星也

参加学生一覧

織田 星也、家次 未來、梶 こはる、清友 加那子、田川 諒、辻本 菜未、寺島 詩織、野村 りりは、平坂 歩結美、三浦 七星、山口 真実

教員のコメント

国際観光学部 大谷 新太郎 准教授

 ゼミの発足時にはフェリーに乗ったことが無い学生がほとんどでした。そのためまずは実際に乗船し、フェリーを知ることから活動を始めました。そしてフェリーを利用する旅行の強みは何か、就航先の観光の魅力と合わせて議論を重ねました。そして取材を重ねその魅力を発信する内容とその伝達方法について検討を重ねました。
 学生達はフェリーの魅力を理解することはできました。中にはフェリーの旅に“はまって”しまい、ゼミ活動以外でも利用するようになった学生も出てきたほどです。しかしいざそれを人々に伝えようとすると「魅力は乗ればわかる。でもそれは伝えるのは難しい。」と口にするようになりました。やがてSNSでそれが伝えられるという話になり実際にそれを試みました。
 結果的には期待した反応は得られませんでした。SNSに慣れ親しんでいる世代ですので普段利用しているSNSのことをよく理解しているつもりだったのでしょう。しかしそれはあくまでもユーザーの視点によるもので、SNSを企業のプロモーションに活用する視点によるものではありませんでした。そもそも市場調査、つまりターゲットである若者についての分析も不足していました。自分たちが若者だからターゲットのニーズを理解していると思い込んでいたのです。学生ならではの行動力を発揮し“現場”にこだわったのはとても良かったのですが、プロモーションに関する理論や事例の研究と市場分析にも力を入れて欲しかったと思います。
 しかし、若者にとってのフェリー旅行の魅力は何か、同社のフェリーや就航先の魅力は何かについて議論を重ね、リーフレットなど一定の形でそれを表現できたのは小さいながらも成果と考えます。大谷ゼミでは引き続き同社との取り組みを行っていきますので、それにつながるはずです。幸い、次年度の活動についてもお話をいただいています。今年度の反省をふまえ次年度には自分たちの強みを生かした大きな成果を出してくれることを期待します。
 最後にこのような活動の機会を頂戴した株式会社名門大洋フェリーの皆様にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。

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