産学連携先:株式会社TSI

 私たち杉田ゼミ3回生は、企業およびその製品のブランド力が如何にして発生し、育てられてきたのかについて学んでいます。

ブランドという言葉は誰もが知っていますが、それの定義は何なのか?それが「価値」を持つとはどういうことなのか?またそれが「価値」を有するようになるにはどのようなことが必要なのか、について意識している人は非常に少ないです。そのため、これらについては意識的に学ぶ必要があります。

今回のキャリアゼミでは、長い間国内のファッションをリードし続けている株式会社TSIでEC(電子商取引)サイトの運営に携わる方々にお話しを伺うことができました。

近年、ファッションアパレル業界ではスマートフォンの普及だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大によってECの比率は向上しており、TSIでは現在34.5%のEC化率を実現しています。

今回のキャリアゼミでは、TSIではどのようにしてECを拡大させることに成功したのか、そしてどのようにしてECを通じてブランディング活動を行っているのか、ECの拡大によって実店舗の役割はどうなっていくのか等について質問してみました。
流通学部 源内 尋貴

学生活動状況報告

 今回の訪問に先立って、私は次の3つの質問をTSIの担当者の方に聞いてみました。

①どのようにしてTSIさんがECを伸ばすことができたのでしょうか?
②今後さらにECを伸ばしていくために、現在どのような取り組みを行なっているのでしょうか?
③ECを増やす一方、実店舗やそこで働く人たちの役割はどう変化していくのでしょうか?

①については、まず複数ブランドをECで出店し、BtoBとBtoCを上手く利用したことだと教えたもらいました。同時にアパレルECの管理、運用を軽減するツールやソリューションが多く生み出されたことで業界全体で業務効率化が進んだことも背景にあるとのことでした。業務効率化を勧めMDサイクルを短くし、販売機会を増やすことで、ECの売上が増加したそうです。

②については、実店舗とECの会員データ統合を進める取り組みを進めているそうです。そして本社や店舗で購買履歴を見られるようにするシステムを導入しているそうです。たとえばお客様が帰った後にメールなどでアプローチを行っています。

③については、店舗のスタッフもECサイトの宣伝やインスタグラムの宣伝を行うことが日常の業務内容となっているそうです。それだけに留まらず、販売社員の評価制度も変えていく必要があるとのことでした。たとえば、店頭では無く、家に帰ってお客が服を買うというケースがECの増加に伴って増えてきますが、そのときECで服を買ったお客に対して店頭で対応した店員も評価する仕組みを採り入れつつあるそうです。

印象に残ったのは、実店舗の役割の変化はECと一体にならなければいけない、というお話しでした。ECは機能的価値を提供し、実店舗は情緒的価値を提供し、それぞれ役割上の違いがあるとおっしゃっていました。

私は将来の進路もファッション業界を考えていますが、大変参考になるお話しでした。
流通学部 渡邊 翼

ゼミ集合写真

参加学生一覧

砂野 佑斗、甲斐 のん子、源内 尋貴、郡 鈴紗、渡邊 翼

連携先コメント

TSIホールディングス
渡辺 啓之 様

 なぜECを伸ばさないといけないのか?というのは実は難しい課題です。経営側の目線だと、ECのメリットは利益率が高いことです。お店で売ると売れた分の3割ほどを家賃としてテナントに払わないといけません。一方お客さま側の論理だと、オンラインに生活基盤があるというケースが増えています。そのような日常的な接点で服を買えるようになる、ということは必然だと思います。その上で、課題は店舗とECがトレードオフになってしまうことです。なぜなら全社的に見るとどっちが増えても意味がないからです。両方伸ばすことが大事だと考えています。

たとえば、実店舗で接客が上手な人はSNSも上手です。お客さまに対する想像力が豊かなんだと思います。お客さまの悩みを解決する視点が出来ているのだと思います。

ファッション業界に就職すると、デザイナーだとか、販売員だとか、プレスだとか、色々な役割があります。それでも大事なのは、世の中のことを知ることです。たとえば自分はデザイナーだったのですが、バリューチェーンの上から下まで知ることがとても大事でした。狭い視点で自分に与えられた役割だけをみていては良いビジネスマンになれません。このことはファッション業界だけに限られませんが。常々社会全体のことを意識的に見渡す必要があります。勉強も一緒です。たとえば杉田先生のゼミでやっていることだけで終わりではなく、それと因果関係のある色々な接点、課題の真因にぶちあたれるような、広い目線が必要だと思います。

教員コメント

流通学部
杉田 宗聴 教授

 日本のファッションアパレル産業をリードしてきたアパレルメーカーの多くは、コロナ禍によって主力な販路であった百貨店やSCの店舗から人が遠ざかることで、新たなマーケティング戦略が必要となっています。

今回訪問させていただいた株式会社TSI(以下TSIと略)も、そのようなアパレルメーカーの1つですが、今回の調査で印象に残っているのは、「ECか実店舗か?」という視点では結局その企業にとっては何のプラスにもならない、ということでした。

TSIでは巧みに実店舗で働く販売員の方とECサイトとを連携させ、お客のコーディネートに関する悩みを解消する、という切り口から企業全体での販売額を増やしていこう、という戦略を採られていたことが印象的でした。

今後も杉田ゼミでは、実店舗であってもネット上のウェブサイト経由であっても、服に関するお客のニーズは同じ、という前提で、如何にそのニーズを発見し、そのニーズを解決する提案力を磨き、これらの製品とサービスをトータルでお客に知ってもらう、そのようなブランディングについて研究していく所存です。