Plaza de Comunicación(プラサ・デ・コムニカシオン)vol.08

 2023年度ももうすぐ前期が終了し、卒業研究に本格的に取り組むシーズンがやってきました。
 賀川ゼミでは例年、各自が「世界に誇れる卒業研究」を目指し、前期のうちにタイトルを固め、卒業研究の完成に向けてゼミ活動を中心に議論を重ねています。
 7月7日現在、卒業研究提出予定者は目次、はじめに、第1章、そして参考文献のリストアップまでを書き終えました。卒業研究の最終締め切りまでは残り5か月ほどありますが、私たちは10月末に仮提出期限を設定し、ケアレスミスなどもないように確認し合うことにしています。
 さて、本年も国際関係を主眼とした賀川ゼミの卒業研究(論文)のタイトルと要約が出揃いましたので、ご一読いただければ幸いです。なお氏名につきましては、学生の希望により、イニシアルに変更した場合があることをお断りさせて頂きます。
       国際コミュニケーション学部 賀川 真理

1.「昆虫が導く人類の明日—食の新しいあり方」

田中 隆清

 昆虫は食べるものではない。多くの人はそう考えているだろう。執筆者も少し前まではそうした考えを持っていた。しかしある日、友人に連れられて行った爬虫類カフェで、ハチ、ミルワームを食べ、その味に衝撃を受けた。本当に自分が食べているのが昆虫なのかと疑うほど、美味しかったのである。そこで執筆者は、昆虫食が人類の食の未来を支えることになる可能性を見出し、世界にこれから起こりうる食料問題の解決策の一つになるのではないかと考えた。
 今、世界中で食料の高騰が問題視されている。地球温暖化や自然災害などによる環境問題、ロシアのウクライナ侵攻による物流の停滞、日本ではそれらに加えて円安や2022年10月からは鳥インフルエンザの流行が起こった。2050年以降には、世界の人口が現在の80億人から100億人に達すると言われている。そうなれば食料問題から目を背けることはできない。
 本研究では昆虫が秘める栄養価を知り、中国やミャンマーなどの昆虫食文化が盛んな国と日本の昆虫食文化を比較し、昆虫食が食料問題の解決策になるかを考察する。

2.「昆虫食がタンパク質危機を救う—昆虫に苦手意識がある日本人が生き残ることはできるのか」

N.O.

 ある日、執筆者は叔父から手渡されたクランチチョコレートを口に入れ、飲み込んだ途端にコオロギパウダーが使用されていることを告げられた。感動するほどの美味しさではなかったが、コオロギが食材として頭角を表していることに驚き、昆虫食に興味を持った。
 世界人口は、2080年には約104億人に達するといわれており、人口増加による食料不足が問題視されている。特に、タンパク質は2050年に不足し、タンパク質危機が起こるとされ、この問題を解決する為に昆虫食が注目された。そのため昆虫食の製造が拡大し、執筆者も食すことになったのである。
 しかし、現在の日本の食卓や食料品店で昆虫を用いた食品を目にすることは少ない。一方、昆虫食大国である中国では昔から様々な昆虫が食卓に並んでいる。中華料理や韓国料理など海外の食べ物に興味を示す日本人がなぜ、昆虫食には無関心であるか疑問である。
 本研究では、今後必要不可欠になるであろう昆虫食への意識を変化させることは出来るのかについて独自のアンケートを行うとともに、龍谷大学・地頭所理沙教授の研究を踏まえて、自身の見解も加えて論じていく。

3.「Instagramにおけるマーケティングの重要性」

A.O.

 SNSの発達にともない、SNSマーケティングは様々な形で変化している。ストーリーと呼ばれるInstagram内の機能で、とあるインフルエンサーが企業から依頼を受けた。ところが実際は、説明を受けたものと内容が異なるURLを指定され、誤って誘導していたことについてお詫びと注意喚起を掲載しているのを見かけ、これは深刻な問題として捉える必要性があると考えた。
 あらゆるSNSの中でもスケールとインパクトが最も大きく、世界中に多数の利用者が存在するInstagramは、「ハッシュタグ」・「タグ付け」・「コラボ」・「広告」などが利用でき、コンテンツの制作者としても、選別者としても同等に成功を収めることが可能な場所であり、かなり効果のある集客ツールと考えられ、SNSマーケティングには欠かせない。
 本論文は主にこのInstagramに焦点を当て、海外と国内のユーザー数比較をし、収益化の仕組みをもとにしたアプローチを用いて、インフルエンサーやアパレルブランドがどのようにSNSマーケティングを活用しているかについて調査を行うものである。そして、今後さらに発展させていくにはどのようにすべきかについて提言したいと考える。

4.「日本における多文化のカタチ—移民政策の比較」

小倉 愛子

 少子高齢化が進む現在の日本の課題の一つとして、人手不足が挙げられる。パーソル総合研究所による2018年度の「労働市場推計2030」では、2030年には日本で644万人の労働者が不足すると述べられている。
 そこで注目されているのが外国人労働者たちである。さらに、コロナウイルスの収束により、外国人旅行者に加え、在留外国人も増加している。これらの社会的ニーズを受けて、政府も法制度の見直しに動き始めている。私たちは現在、彼らとの向き合い方を見直す重要な局面に立っていると言える。
 これまで外国人受容の在り方として、「多文化共生」という言葉が用いられてきた。なぜその言葉が用いられ、どのような意味があるのか。その言葉の基となる多文化主義についても、同化主義と比較しながら、日本よりも外国人労働者の起用が進んでいるフランスとシンガポール、アメリカの事例をもとに検討する。
 なお本稿では、ICT(情報通信技術)による異文化理解にも触れ、今後の日本に合った外国人受容の新たなカタチについて歴史的、文化的観点から考察していく。

5.「AIが支えるこれからの当たり前—AIとの共生」

門脇 典哉

 AIの進化と普及は、社会に大きな変化をもたらしている。本論文では「AIが支えるこれからの当たり前」というテーマに焦点を当て、AIの普及がもたらす日本及び世界への影響とその重要性について探究していく。
 AIが活用されている例として、電車の運転手や工場の作業員等、決められた作業を繰り返す職種や、膨大な情報を基にデータを振り分ける単純作業の分野が挙げられる。AIが導入されることによりヒューマンエラーが発生せず、労力の削減、事業の効率化が図れる。 
 2023年現在、AIは単純作業の分野だけではなくクリエイティブの分野でも活用されている。しかし、学習もとである作品と類似のものを生成していることから、著作権侵害への対策を求める声も多く、法整備がAIの進化に間に追いついていない。
 そこで本論文では、海外の国々のAI使用に関する法律と現行の日本の法律とを照らし合わせていくことにより、様々な問題点も洗い出していきたい。

6.「逸脱するオタクの心理—正義の暴走」

M.K.

 2023年現在のアイドルオタク市場の規模はどのぐらいであろうか。2022年に矢野研究所が行った調査によると、2021年の市場規模が一番大きいのが「アニメ」で2650億円、二番目に大きいのが「アイドル」で1500億円だと言われている。しかし、一人当たりの年間消費金額を比べると、「アニメオタク」は約3万円なのに対し、「アイドルオタク」は約9万円とされており、後者がいかに一人当たりの金額において大きいかが読み取れる。すなわち、「アイドルオタク」がいかに熱狂的なファン集団を持つ市場であるかが分かる。
 同調査からは、2020年309万人だった「アイドルオタク」人口が、2021年には365万人まで跳ね上がっていることも指摘されている。このようなオタク人口の拡大により、アイドルに求めるものや、それぞれが主張する「正義」の幅が広がった。その結果、アイドルの熱愛や言動に対する炎上や誹謗中傷、転売などの犯罪が増加したのである。
 そこで本論文では、そのような熱狂的な日本の「アイドルオタク」たちがアイドルに求めるものは一体何なのか、韓国のCD輸出先第三位のアメリカのオタクと韓国のオタク、日本のオタクのそれぞれを比較して調査する。さらに、「グレーゾーン」と犯罪の境目をアンケートや先行業績をもとに見極め、解決策を論じていく。

7.「大阪梅田に迫る南海トラフ巨大地震~避難計画で命を守る~」

K.K.

 最も恐れられている災害の一つに南海トラフ巨大地震がある。2022年3月4日に発表された内閣府の「南海トラフ巨大地震の被害想定」によると、今後30年間で70%から80%の確率で地震は起きるとある。そして最悪の場合、関東から九州にかけて30の都道府県で建物の倒壊や津波などによる死者は32万3000人、けが人は62万3000人にのぼるとされている。
 執筆者の地元、大阪府の中心部にある大阪梅田では、最大2メートルの津波が押し寄せることが想定されている。人でにぎわう梅田の街で、避難場所がどこにあるのかを事前に把握することがパニックにならず避難ができる最低条件となる。
 そこで本研究では、高層ビルが立ち並ぶ大阪梅田を拠点とした避難計画を立てる。また、大阪に迫る南海トラフ巨大地震の被害想定や2023年2月に起こったトルコ・シリア地震との比較を論じていく。そして、必ずやって来る南海トラフ巨大地震への備えや意識向上を研究目的とする。

8.「日本におけるサードプレイスの在り方」

M.K.

 昨今のストレス社会の中で、学校又は仕事とプライベートの両立は多くの人にとって重要な課題となっている。大多数の人は、自宅と学校又は職場を往復するだけで1日が終わってしまい、心の豊かさや他者との交流に欠けた生活を送っているのではないか。
 サードプレイスとは、自宅やオフィスから離れ、自分が自分らしくいるために必要な場所であり、カフェやフレキシブルオフィスだけでなく、オフィス内の空いている場所も含め、さまざまな場所がサードプレイスとして有効活用できる。中立的な場所であること、コミュニケーションが活発であるといった条件を参考にしながら、リフレッシュできるサードプレイスを見つけることが必要である。
 この論文では、サードプレイスの概念、海外とのサードプレイスの在り方の比較を論じ、現状、課題については学生、社会人に調査を行い、考察していく。

9.「遊びの影響力—サッカーの経済効果」

R.K.

サッカーは現在、主にヨーロッパでものすごい経済効果を生み出している。4年に1度のスポーツの祭典、FIFAワールドカップでは、直近の2022年に開催されたカタール大会を例に挙げると、2020年東京五輪(開催は2021年)と比べて30倍以上の約32兆円という史上最高額の費用が、ホテルの建設やインフラ整備などの準備に費やされた。
 個人の移籍市場の価格を見ても、一人に100億円以上の価値が付くのが当たり前になってきている。選手一人の影響力を考え、国の大統領が移籍市場に参入するという事案も出ている。もはやサッカーというスポーツの経済効果が、国を動かすほどの巨大なビジネスマーケットになっているのである。これまでは圧倒的な強豪チームが存在し、プロサッカー選手たちはそこに入団することを夢として努力してきたが、オイルマネーと呼ばれる中東産油国が自国チームに選手を買い漁りしはじめるなど、サッカー市場は大きな転換期を迎えている。
 本論文では、プロサッカー選手たちが何を目的としてサッカーを職業にしているのかを明らかにしたうえで、日本のサッカー界における発展のために、海外と日本を比べた場合の日本のスポーツ界における課題点などについて考察する。 

10.「コロナウイルスがもたらした化粧品産業への打撃—ビューティービジネスからみる資生堂の経済戦略」

M.S.

 コロナ禍によって化粧品産業はかなりの打撃を受けた。2020年から化粧品産業の売り上げが大幅に減少したのだ。テレワークへの移行や外出自粛を余儀なくされたことにより、メイクをする機会や化粧品を購入する機会なども減ったことが売り上げの減少につながったと考えられる。
 執筆者はコスメショップにアルバイトとして働いるが、この業界が新型コロナウイルス拡大の影響を直に受けていると感じた。店の売り上げが毎日の売上目標を達成できない日が続くことはもちろん、店長は2023年度も更なる人件費削減を強いられていると嘆いていた。
 そのような厳しい状況にある業界の中で、唯一コロナ禍での売上げが下がらなかった大手化粧品メーカーが資生堂である。資生堂は1872年に創立された日本の歴史あるメーカーであり、常に業界トップを走ってきた。特に海外市場では日本ブランドの中でかなりの人気があるため、コロナ禍でも海外市場での売上げは下がらなかったのである。
 では資生堂はなぜ、コロナ禍でも海外市場からの需要を保つことができたのか、その経済戦略の全貌を日本ブランドや他国のブランドとも比較し、世界のビューティービジネスの歴史と共に追及する。

11.「日本アニメの立ち位置」

水口 彩香

 昨今、日本ではサブカルチャーと言われている漫画やアニメであるが、これらについてかつてはオタクが見るものという偏見を持つ人が多かったと考えられる。執筆者も幼いころからアニメを見てきたが、友人とアニメについての会話をしたことはない。
 現在では「アニメ=オタク」という偏見は無くなりつつあるが、まだまだアニメという言葉に悪い印象を持つ人は一定数いるのではないか。それでも何十年と放送し続けているアニメ作品も多くあることから、日本人とアニメの関連性は高いことが分かる。また、アニメという言葉はすでに世界共通語となっており、海外でも日本の文化として認識されている。日本のアニメは世代を超え、そして国境を越え世界中で愛されている。このように世界の多くの人々が日本のアニメに触れる機会が多くなった一方で、執筆者は日本アニメ特有の価値観が世界の人々に十分認識されていないのではないかと考える。
 本論文では、そもそも世界におけるアニメの定義や歴史について触れながら、日本のアニメが世界の人々から日本独特のカテゴリーとして認識されているのかどうかについて、鬼滅の刃を基に考察する。

12.「スターバックスと無印良品の広告戦略—CMを流さずとも人気が続いているのは何故か」

宮良 南奈実

 しるしの無い良い品、というコンセプトを持つ生活雑貨ブランドでおなじみの「無印良品」は1989年6月の創業開始から現在に至るまで、テレビコマーシャルでの宣伝を行っていない。ある時、アルバイト先の店長から「世界最大のコーヒーチェーン店スターバックスは、我が社と同じ理由でブランドを保つためにCMを出していない。しかし、スターバックスは年々売り上げが伸び続けているのに対し、無印良品は売り上げが年々伸び悩んでいる。何故だろうか。」という問いかけがあった。
 企業には宣伝が欠かせない。売り上げが落ちているのにも関わらず、CMを流さないことを貫く理由はあるのだろうか、という疑問が生じた。
 本論文では、「国内企業の無印良品」と「外資系のスターバックス」の2社を取り上げ、無印良品がスターバックスに劣る原因は一体どこなのか、という問いを明確にする。また、同じ「製造小売業」である日本企業のニトリや海外でトップを誇るアメリカの企業ウォルマートと無印良品を比較し、企業が考えてゆくべきこれからのテレビCMの費用対効果、消費者への影響を分析する。