経済学部 千葉 知世

産学連携先:和歌山市観光課

 阪南大学は大和川のすぐ近くに位置し、大和川は大阪湾へ注いでいます。阪南大学に所属する私たちにとって大阪湾は最も身近な海ですが、大阪湾には流域から多くのごみが流入していることが知られています。そのため、一部の沿岸域の海岸には多数のごみが漂着しています。中でも紀淡海峡に位置する友ヶ島(和歌山市)は無人島ですが、その海岸には大阪湾や瀬戸内海由来の可能性がある漂着物が多数存在しており、その回収・処理が課題となってきました。そこで本ゼミでは、和歌山市さまの協力を得て、友ヶ島や加太地区における海岸漂着物の組成や現存量を検討するための調査活動を数年間にわたり実施してきました。阪南大学でのキャリアゼミ活動が最終となる今年度は、加太・友ヶ島だけでなく、流域の上流へと遡り、大阪の市街地でもごみの回収を行いました。

学生活動状況報告

 千葉ゼミでは、一昨年度・昨年度に引き続き、加太や友ヶ島で海岸ごみの浄化活動を実施しました。友ヶ島は無人島ですが、貴重な戦時遺跡が残っていたり、「ラピュタの島」として多くのアニメファンが訪れる島でもある観光地です。その友ヶ島には、外から流れてきたと思われるごみがたくさん流れついています。今年度の活動でも、ごみを拾うだけではなく、ごみの個数や組成の調査を行いました。今年は友ヶ島だけでなく、ごみの排出源での対策を考えるため、大阪の市街地などでも活動を行いました。たとえば一部の学生は、高速道路の高架下に落ちているごみを調べたり、繁華街の清掃活動を行ったりもしました。実際にごみで困っている現場で3年に渡り活動させていただいたことで、その深刻さと対策の必要性を強く実感することができ、社会人になってからも間違いなく生きる力を得ることができました。
経済学部 金井 一輝

参加学生一覧

姥谷 健心、片山 息吹輝、金井 一輝、岡本 侑也、阪本 葵、大木 颯、奥西 凌、香西 智也、小林 勇斗、反甫 浩弥、松崎 瞳真、松本 凌、三原 帆貴、山本 彬斗、大嶋 音々、河島 那月、篠原 海翔、曽根 祐也、藤井 雄生、藤本 峻輔、松井 謙征、松岡 健辰

連携先コメント

和歌山市 産業交流局 観光国際部 観光課
稲垣 智久 様

 「友ヶ島」は、和歌山市が特に力を入れている観光地の1つで、最近ではアニメの舞台として注目され始めています。元々、明治時代に造られた砲台などの戦跡が点在するほか、400種を超える植物が生育すること、日本標準時子午線が通る最南端の地などとして有名で、コロナが流行する前までは年間6万人前後の観光客が訪れていました。そんな中、令和2年度から千葉先生が「友ヶ島」をフィールドに海岸漂着物調査に取り組んでいただき、その頃から、「友ヶ島」の来訪目的に環境学習というカテゴリーが加わったような気がいたします。和歌山市としても無人島である観光地「友ヶ島」における漂着ごみ問題は永遠の課題ですが、和歌山市だけが声を上げても解決できない発生抑制というテーマにターゲットを絞り、将来を担う学生の皆さんとともに取り組んでいただいていることは、これ以上ないありがたいことです。今後とも、立場は異なりますが、同じチームとして、「友ヶ島」を愛していただければ幸いです。

教員コメント

経済学部
千葉 知世 先生

 皆さまのご協力をいただき、複数年度にわたり実施してきた阪南大学千葉ゼミのキャリアゼミ活動は、教員の退職に伴い本年度が最終年となりました。今年度も昨年度と同様、和歌山市様のご協力を得て加太・友ヶ島の海岸漂着物調査を行いました。フィールドでは散乱ごみ・漂着ごみを限られた人数で、決められた時間内に回収し測定せねばなりません。真夏の太陽が照り付ける下、あるいは雨の中でも、その場で求められたデータを取ってくる必要があります。今年度の参加学生はこの活動を3年間継続して実施してきたので、初年度のころに比べると、かなり手慣れた様子が見られるようになりました。指示されたタスクをこなすだけでなく、周囲の状況を適切に把握しながらいま自分が何をすべきかを考え、相互に議論しながら効率的に調査を終えられる段取りを柔軟に検討し、実行している姿が見られました。また、今年度は大学付近の高速道路の高架下のごみの組成を調査したり、繁華街のポイ捨てごみを清掃する活動を行うなど、学生たち自身の手によって排出元での活動の拡大が図られました。この活動を通して、海洋ごみ問題に関して生の体験を伴う学びを得られただけでなく、タスクマネジメントの総合的な力やコミュニケーション力を高めることができたと思います。ご協力いただきました連携先の和歌山市観光課様に、深くお礼を申し上げます。