Excelにはソルバーという機能がある。これは様々な最大化・最小化問題を解く機能であり、各種の制約を設定することもできる。最大化・最小化問題として、社会やビジネスの現場で直面するような問題を考えることができる。Excelソルバーの利点は、問題の定式化さえできれば、数学的な解法を知らなくても、解を得ることができるところにあり、その意味で実践上とても有用である。
 次に簡単な例として、2つのケーキの生産額の最大化を考えてみる。

ケーキの生産額の最大化問題

 小麦、玉子、チョコレートの材料を使って2種類のケーキ1とケーキ2を作る。その生産額の合計を最大化するためにはケーキ1とケーキ2の生産量はいくらにすればよいか。
<目的変数(最大化):目的セル>
 2つのケーキの生産額の合計。
<変数:変数セル>
 ケーキ1とケーキ2の生産量
<係数・パラメータ>
 各ケーキの価格、各ケーキを作るのに必要な各材料の量、各材料の使用可能な量、これらの値が与えられている。
<制約条件>
 全てのケーキを作るのに使用する各材料の量が、各材料の使用可能な量より少ない。また各ケーキの生産量を0以上の整数とする。

煩雑になるので詳しい数値は示さないが、上の問題を定式化したExcelの画面が表1である(まだ最大化は実行されていない)。また図1は、ソルバーの実行には必要ないが、表1の問題を分かり易いようにExcelのグラフで示したものである。
 上の問題は、様々な問題が適用される線型計画法の一例となる。ソルバーを利用するためには、問題の解を得る過程を考える必要はないが、ただ問題を定式化し、それをExcelのシート上で記述する必要がある。記述というのは、変数をシート上のセルに対応させて、数式や関数を使ってセル同士を関連付けることである。またExcelのソルバーの設定画面では、目的変数や、それを最大化するために変化させる変数、各種の制約を設定する。制約としては等式や不等式を設定でき、変数を整数やバイナリ(0,1)とすることもできる。それによって様々な問題が解けるようになる。また方程式を解くこともできる。ソルバーの設定自体は難しくなく、一般のビジネスパーソンでも利用できるといってよい。
 またソルバーはExcel の持つプログラミング言語であるExcel VBAと組み合わせて利用することができ、これによってパラメータを変えながらソルバーを連続的に実行することで、より複雑で実践的な問題にも対応できる。
 ソルバーで解ける他の例として、解析的な関数(経済学における生産関数や効用関数、費用関数)の最大・最小問題、輸送問題、仕事の割当、輸送問題、在庫問題、最短経路問題、資本予算計画、シフト調整(勤務日程表)、在庫問題、最短経路問題などがある。
 このうちシフト調整(勤務日程表)などは、学生の皆さんが直面することがあるかもしれない。これらの例のように、応用できる問題は多種多様で、工夫によって様々な問題に適用できる。ただそのためには、問題を見つける発想力、問題を定式化できる基礎的な数学力、そしてより多くのソルバーの利用例に当たって知識を蓄積して、応用力を身に付ける必要がある。学生諸君にも、卒業後社会・ビジネスの現場で実践的に利用してもらいたいと思う。