産学連携先:株式会社スタジオグッドフラット

 令和5年度、経済学部2年松村ゼミでは、定藤ゼミが軸として中西ゼミとも共同してキャリアゼミを実施しました。
 鹿児島県いちき串木野市における食をテーマとした問題ですが、悪戦苦闘しながらも日頃学んでいる「法」や「経済」という切り口で分析することを試みました。

学生活動状況報告

経済学部2年 葉山 碧志

 私は、夏休みに2泊3日のゼミ合宿に参加し、鹿児島県の畜産業や給食センター、いちき串木野市市役所見学などを体験させていただきました。
 まず定藤ゼミが別枠で実施した家畜農家・家畜市場の見学も、関係者の皆様方のご厚意で参加することが出来ました。普段私たちは、肉が食べたいと思うと加工されたお肉を買い、焼けばすぐに食べることができ、お店では注文すると料理が提供されますが、私たちの元に肉が届くまでに、たくさんの方が関わっていることを具体的な形で目にする機会を得ました。まさにいま目の前で動いている牛を見ると、可哀想だという気持ちと共に、その命を頂くことを感謝しないといけないと改めて感じました。牛の競りでは、全国からバイヤーの方が大勢来られていました。実際に牛を見て評価して競りが行われており、1頭1分程で取引が次々と成立していました。普通では体験することができない貴重な経験になりました。
 次に、松村ゼミでの本来的な活動内容に入っておりました給食センターの見学ですが、見学前にニュース等で、入札価格が低く、資金繰りが難しくなり、破産した給食センターのニュースを見ていたこともあり関心がありました。物価が上がっていて値上げをしたい生産者と、仕入を安く抑えたい企業との双方の利益を図るということが難しい点であると思いました。いちき串木野市の給食センターでは、地元で採れた食材を使い、栄養バランスも考えられており、いわゆる食育の一つの姿を見た思いでした。普段私たちは消費者という立場ですが、合宿では生産者側の立場に立ち考えることができたと感じました。
 いちき串木野市市役所見学では、市の魅力や事業開発などについて学びました。
いちき串木野市は、まぐろやサワーポメロと呼ばれる文旦の仲間の大橘が特産品であり、ふるさと納税(寄付金控除)の返礼品にもなっています。これらの特産品を活かして「食のまちいちき串木野市」を目指して、持続可能な食のまちづくりの実現に向けて取り組んでいます。しかし、事業開発には資金も当然必要であり、どのようにして資金を確保するのかも難しい問題です。事業再構築補助金などの制度もありますが、補助を受けるためには様々な要件を満たす必要があり、すべての事業者が補助を受けられるわけではありません。事業開発は当然リスクを伴うものでもありますが、自治体や事業者の事業開発に前向きな姿勢を事業開発計画書などから評価して、国が事業開発を支援するような制度が整備されれば、経済活動も活発になっていくのではないかと感じました。最近では空き家物件を活用することで費用を抑えるという事業開発が行われています。「2023年度新規開業実態調査」では開業費用は平均1027万円であり、かなりの費用がかかってしまいますが、空き家を利用すれば費用を抑えることができ、経済的負担やリスクを減少させることができると思います。
 事業の性質によっては、採算性の観点から行政等による支援が欠かせないものもあり、法律による行政の観点から、公平性等の観点も重視されるため、独特の難しさがあることを実感しました。

連携先コメント

株式会社スタジオグッドフラット
市村 良平 氏

 いちき串木野市は、食を特色としたまちづくりを進めるため、令和4年に第2期となる「食のまちづくり基本計画」を策定し、計画に沿った事業実施を官民が連携して進めています。平成23年から計画されていた第1期の計画に比べて、第2期の計画ではいちき串木野市のシティプロモーションとシビックプライドの形成が新たな目的として盛り込まれ、あらためて地域の資源や課題を整理し、資源が活かされ、課題が解決され、よりよい未来となるように計画されています。
 お越しいただいた学生の皆さんには、事業の概要をはじめ、進められているキャッチフレーズの制作過程や官民が意見を交わす場としてのパートナーシップ会議の運営についてもお伝えさせていただきました。「食」とひと言で言っても、経済、観光、健康増進、教育、環境など様々な領域に跨り、それらを総合的に見ながら関係調整を行い、事業を広範囲に展開している現場の空気が伝わっていると幸いです。
 法律学の視点からも計画を見ていただけたとお聞きしました。特に学校給食センターを見学させていただいた際には、学校給食を提供する際の衛生責任と食材を納入する生産者の経済合理性のバランスをとる難しさを感じていただけたのではないでしょうか。

教員コメント

経済学部
松村 幸四郎 教授

 日頃学ぶのは「法」についてですが、それを身近な「食」や「地域」、それらの関係性といった点に目を向けた際にどのように座学の成果を活かせるのか。悪戦苦闘しながらもゼミ生達は一所懸命に事前学修を行い、ヒアリング合宿ではメモを真剣にとりながら、分析の視点を見つけ出そうとしていました。
未知なる事象に対して懸命に食らいつこうとする姿勢を持つようになり、実りあるキャリアゼミとなったと思います。
 来年度はさらに進化するように、一緒になって考えていこうと思います。