連携先:行政書士法人 東京国際経営法務事務所

多様性とはある集団の中で異なる特徴を持つ人が存在し、異なる特徴を否定せず、尊重し合い共存する状態を指すことです。私は多様性という言葉は最近、話題になっているジェンダーレスの問題や外国人の労働問題のニュースから聞くようになりました。人間には異なる特徴があることは理解するべきことだと思いますが、それを尊重することは実際はなかなか難しいことではないかと思っております。異なる特徴ということは日本の文化を知らない外国人やジェンダーレスの問題を抱えている人も含めて様々な人々が接する以上、他者に迷惑をかけたり違法行為に及ぶ者も出現します。不寛容に対する寛容、という法哲学的な問題が、多様化する社会を考える上でも有用な気がしております。
今回の見学により、現実の問題を無視した机上の空論では、多様性を真に理解することが難しいのではないか、という考えがこれまで以上に強まりました。現実的な問題をよりニュースや今回の合宿のような機会を通じて、実社会における事実をしっりと目にしながら、今後の社会の変遷について、思考を深めていきたいと思います。

学生活動状況報告

経済学部3年 喜多川 大志

今回、キャリアゼミの活動として、東京出入国在留管理庁の見学を行いました。今回の連携先である行政書士法人東京国際経営法務事務所の熊野雅恵先生に引率・指導をしていただきました。普段あまり関わることのない場所なので、どんな雰囲気なのか少し緊張しながら向かいました。
建物の中に入ると、多くの外国人がいました。手続きをするために来た人、待合スペースで書類を確認している人、そしてどこか不安そうに座っている人が印象的でした。
見学に先立ち、出入国在留管理庁の役割について、熊野先生から説明を受けました。外国人が日本に滞在するためにはビザの取得や更新、在留資格の変更など、細かい手続きをしなければなりません。ルールを守らずに滞在していると不法滞在とみなされ、場合によっては強制送還となります。日本に住んでいると普段意識することは少ないですが、こうした制度があることで国の安全が保たれているのだと学びました。
また、庁内には収容施設もあり、違法滞在や強制退去処分を受けた人々が一定期間留め置かれるそうです。ニュースなどで聞いたことはありましたが、実際にそういう場所があることを知ると、改めて日本の出入国管理の厳しさを実感せざるを得ませんでした。
そんな説明を聞いた後、エレベーターを乗った時のことです。乗り合わせたのは、白人の男性で、大柄な体格、鋭い目つきをしていて、どことなくピリピリした雰囲気をまとっていました。何か納得がいかないことがあったかのような様子で、エレベーターの狭い空間の中で緊張が走りました。彼が不法滞在者だったのかは分かりません。しかし、あの場で感じた雰囲気が印象に残りました。この文章を作成している段階でも、リアルに蘇ります。
見学を終えて、日本で暮らす外国人にとって、こうした制度がどれほど影響を与えるものなのかを考えさせられました。自分たち日本人にとっては当たり前の生活でも、外国人にとっては多くのルールや手続きが絡み、決して簡単なものではありません。エレベーターで出会ったあの男性も、日本に何かしらの希望を持って来たのかも知れません。しかし、今は別の現実に直面しているのだろうと想像します。最近は社会の多様性について耳にする機会も多いです。しかし、抽象的な話ではなく現実の現場を見学することで、普段あまり意識しない「日本における外国人の立場」について考える機会となりました。今後、日本社会がどのように外国人と関わっていくのか、関心を持って見ていきたいと思います。
   

連携先コメント

行政書士法人 東京国際経営法務事務所
行政書士 熊野 雅恵 先生

今回は、学生としてのみならず、国民としても知っておくべきことを学ぶために、わが国の在留外国人を知る上での最前線ともいえる東京出入国在留管理庁を見学しました。庁舎内は録音・録画・写真撮影禁止という物々しさを感じさせる雰囲気があり、緊張気味でした。ただ、事前学修を行った上で、興味本位ではない真剣に在留外国人問題や社会の多様化という問題を考えようとする真剣なまなざしに接することが出来、大変嬉しく思いました。入管行政は知らない間に変化していくものですので、今回の見学で終わりではなく、今後も関心を持って学修を継続してもらいたいと思っております。

教員コメント

経済学部 経済学科
松村 幸四郎 教授

抽象的に「多様化」ということが言われている中で、学生も述べているように「不寛容に対する寛容」という問題を含めた根本的な問題に対する考え方も試されるようになってきています。そうした中で、外国人の在留問題がクローズアップされているタイミングで、行政書士法人東京国際経営法務事務所様のご協力の下で、最前線ともいうべき東京出入国在留管理庁を見学し、専門的な観点からの解説に触れながら学ぶ機会を得ました。参加学生達にとって貴重な機会となったものと言えると思います。学生には難しい問題だからこそ目をそらさず、自分自身の考え方を検証していくきっかけとして欲しいと思います。

参加学生一覧

喜多川 大志、 浅田 侑真、 一ノ谷 陸貴