中小企業が廃業する1つの理由に「後継者不足」がある。この事業では、元々は継ぐつもりがなかったものづくり中小企業を、何らかの理由で継いで、今では成功されている大阪市港区・大正区の若手社長4名を対象に、事業継承する前後の心境の変化を中心に三木ゼミ生がインタビューし、その内容を記事化する。これにより、中小企業を事業継承することの魅力を発信し、また事業継承する若手経営者にエールを送ることを目的に実施する。
今回、成光精密株式会社の代表取締役・高満洋徳さんにインタビューをしてきました。成光精密株式会社は産業用機械の設計・製作、精密部品加工の試作から量産まで、さまざまな材質に対応する会社です。

1.前職は何をされていましたか?

電気工事会社に勤めていました。

2.どのような経緯で今の仕事に就きましたか?

岡山県の実家が電気屋を営んでいて、実家の電気屋は休日出勤が多く、奥さんの実家である義父の会社を継ぐ方が楽そうだなと思い、とりあえず義父の会社に就職して半年働きました。いつかは継ぐつもりでしたが、ITバブル崩壊により急に義父が会社を畳んでしまい、新たに代表取締役として成光精密を創業しました。

3.会社に対してどのようなイメージを持っていましたか?

仕事内容を知らないうちは「お義父様の会社」というイメージでした。

4.この業界はどのような業界ですか? 

海外の方が工場の規模が大きく、量産が可能なため、小規模な日本の工場は次々と倒産しており、アイデアをすぐにカタチにできて高い技術を持った会社だけが生き残る業界です。

5.この会社の強みは?

この会社の強みは、「出来ないと言わない対応力」と「0.01mmの精密さ」です。
港区に一台しかない機械を所有しています。

6.実際に会社を継いで良かったと思うところはありますか?

奇跡がおこっていると思えるような瞬間に出会えた時。
たくさんの企業・研究機関と合同で課題に取り組んで、より良いものができた時はやっていて良かったと感じます。
また、会社を再建した際に、批判もあったが、応援してくれる顧客もおり励ましていただきました。

7.会社を継いで苦労されたところはどのようなところですか?

初めはより良い会社を築いていこうと思い、社員だけでなく会長にも口うるさく言っていました。社長業だけやっていればいいと思っていましたが、自分自身になにも技術がないと何もできず、会社が潰れてしまうと感じ技術を学んでいった時に苦労しました。
もう一点は共感してくれる人が集まらず、仲間(社員)を探すことに苦労しました。自分ができていれば大丈夫という考えがありましたが、なぜ、チームで仕事をしているのか意味を考えるようになり考え方を改めることができました。
また、新しく会社を作った際に、以前の会社から元々お付き合いしていた顧客からの信頼を取り戻すことにもとても苦労しました。

8.継いでみてどのような気持ちの変化がありましたか?

2年前に経営理念(ビジョン)が変わりました、3年前に港区の筋原区長と株式会社リバネスの丸社長に出会ってそれにより少しずつ変わっていきました。自社のことだけを考えずに社会や世界の課題の克服を目指していくようになりました。2011年に自動車メーカーとの仕事で、メーカーになりたいと思うようになりました。

9.今働いている方はどのような方がいますか?

社員24名です。ハローワークなどに求人を出したが十分集まらず、ベトナム人留学生を機械操作に複数人雇っています。社員のスキルを「見える化」してできる人ができない人に指導しています。帽子に星が多くついている人が優秀な人材とわかるようにし、作業できる内容が一目でわかるようにしています。
最近では、インターン生も働いています。

10.どのような人材が欲しいと考えていますか?

モノづくりを通じて、自社の価値を創造し続けてお客様に満足していただくことによって社会に貢献する「私たちは物心(ぶっしん)共に豊かな人財をつくります」という経営理念に共感・納得してくれる人。

11.今の課題はなんですか?

仲間づくり(若手の人に入社していただくこと・共感してくれる仲間を集めること)・「スピーディーに正確に作る」
町工場の問題は、職人や工場が半分近く減ってしまっていること。
GARAGE MINATOとしての課題は、従来よりも強い連携力が町工場間で持てているにも関わらず、率先してやろうと声を上げる人がいないこと。新たなリーダー格が表れてくれれば、もっとよい方向に進んでいくと思います。

12.やりがいは?

全く分からない事が飛んできて、それを周りの町工場と連携して課題に取り組んでいくことが、会社としてもGARAGE MINATOとしてもやりがいを感じています。

最後に、この会社を継いで満足していますか?

現状に満足はしていません。会社が社会にまだしっかり貢献出来ていないし、プロジェクトの課題をしっかりと克服できていません。一つの町工場がプロジェクトを回せるようにしていきたいが、まだ周りを巻き込む力が足りていないので、伸ばせるようにサポートしていきたいです。
そして、弊社の設備はタブレット・アプリなどを十分使用できておらず、まだFAX等を使っています。また、もっと会社を知ってもらうために、SNSなどを利用して会社を広く発信していきたいと考えています。

インタビューを終えて

今回のインタビューを通じて、高満社長が最も私たちに伝えたかったことは自分自身が社会に出た意味や価値を高めることの大切さだと感じました。常日頃から挑戦したい社会問題に目を向け、社長自身がどうすれば社会貢献することができるのかを考えているのがひしひしと伝わってきました。そして、大切なのは課題に向き合うことと情熱を持つこと、最後に連携(巻き込む力、巻き込まれる力)を身に着ければ、自然と成長していけるとおっしゃっていたので、私たちも普段の取り組みから周りに目を向け巻き込み、巻き込まれていこうと思いました。

取材日:2020年11月4日
担当:杉本侑也・緒方稜人・藤田大翼・本田千尋・今井咲利佳(阪南大学経済学部三木ゼミ3年生)