中小企業が廃業する1つの理由に「後継者不足」がある。この事業では、元々は継ぐつもりがなかったものづくり中小企業を、何らかの理由で継いで、今では成功されている大阪市港区・大正区の若手社長4名を対象に、事業継承する前後の心境の変化を中心に三木ゼミ生がインタビューし、その内容を記事化する。これにより、中小企業を事業継承することの魅力を発信し、また事業継承する若手経営者にエールを送ることを目的に実施する。
今回、大中工業株式会社の代表取締役・山本雅章さんにインタビューをしてきました。大中工業株式会社は、ガス精密溶断やレーザー切断を中心に、周辺領域加工など、幅広く手がけている会社です。

1.前職は何をされていましたか?

就職活動をしておらず、高校生の頃から父の会社のお手伝いをしていたため、成り行きで入社した。お手伝いのおかげで内容は知っていたので、この会社で働くことにした。父が亡くなってから、長男が社長で、私は3年間部長をやっていた。

2.どんな経緯で社長に就きましたか?

祖父が創業者。父が2代目で、父が亡くなってからの3年間は長男である兄が3代目だったが、3年前に兄が社長業をリタイアしたため、婿養子になった次男の兄より自分の方がいいと思い、ちょっとした使命感も感じていたので、自分から社長をやると言った。

3.会社に対してどんなイメージを持っていましたか?

高校生の頃からやらされている感があった。特に地味だなと思うことは無かった。

4.どんなことをする会社ですか?

シャースリット業(鉄板の溶断業)。製鉄所から出てきた鉄板を様々な形に溶断し、色々な加工屋さんに持っていく一次加工する会社。

5.どんな業界ですか?

物を製作するにあたって工夫が大切な業界だと感じた。独特な風潮はないが、接待ゴルフがあったりはする。

6.会社を継ぐとき家族に反対されませんでしたか?

奥さんからは、社長にはならないでねと釘を刺されていた。

7.継いでみてどんな気持ちの変化がありましたか?

今まで、尻拭いをしてくれる人がいたがいなくなったので、立場をわきまえて動くようにしている。

8.実際に会社を継いで良かったと思うところはありますか? 

納品後に、完成品を見せてもらい達成感を感じること。

9.会社を継いで苦労されたことはどんなことですか?

兄が社長の間は部長として少し楽に過ごしていたし、ずっと兄が社長をやると思っていたので、自分は陰で支えていこうと思っていた。しかし、急な兄のリタイアがあったため誰にも相談できず正当な引継ぎができなかったこと。

10.仕事をする上で慣れないことはありますか?

他の会社の社長と話すときに土俵の違いが見えるので、もっと勉強しないといけないなと思った。

11.何歳まで社長を続けようと考えていますか?

子供が成人するまでは続ける。60歳くらい。

12.次の後継者はどんな人材が欲しいですか?

子供には確認はするが、無理強いはしない。社員がついていくような人間が欲しい。

13.今後何人雇いたいと考えていますか?

1~2人雇いたいと思っている。
自分で現場も事務もやっていて、社長業がおろそかになってしまっているから。

14.現在働いている方はどのような方がいますか?

父の代から続けられている方が数名いる。
現在、現場には7名・事務では6名の方が働いている。

15.どのようにして人材募集をしていますか?

ハローワークで募集はかけていて、半年ほど前にHPも作成した。
どのようなことをHPに記載したらいいかを勉強している。

16.最後に、この会社を継いで満足していますか?

満足はしていない。今で満足していたら会社が潰れていると思う。これからもっと自分の実力で会社を上に上げていきたい。達成感はあるが、満足することはない。

インタビューを終えて

今回のインタビューを通じて、私たちが一番感じたことは、成り行きでなってしまった社長業でも、一つ一つの出来事に使命感・責任感を持って行動されているということだ。お兄様のリタイアで急に社長業を引き継いでしまったが、セミナーなどを活用し、会社をより良くしていく行動に励んだ。山本社長のように使命感・責任感を持つことで、仕事への向上心が高まる。これは私たちの就職活動でも同じで、勤務先で使命感・責任感を持って働ける環境でなければ自分のモチベーションも上がらず、向上心を持って仕事を勤続できないので、向上心を持って仕事をする大切さに改めて気づくことができました。

取材日:2020年11月25日
担当者:緒方稜人・杉本侑也・藤田大翼・今井咲利佳・本田千尋