「あつまれどうぶつの森」をきっかけに探求する「株式」
執筆者:村上 雅俊

 私の子ども(7歳)が「あつまれどうぶつの森」(以下、あつ森)にハマっています。「これがこうで、これがこう」といろいろな機会に私に説明します。このゲームをざっくりと説明するならば、プレイヤーが無人島に移住して移住先の島を開拓し(発展させ)、日常生活とは別のゲーム上での生活を楽しむというものでしょうか。四季があり、さまざまなイベント(例えば最近ではハロウィンイベント)があります。
 このゲーム、子どもの説明を聞くと、大人でもハマる要素がいくつかあるようです。ある日、子どもがゲームする様子を横で見ていたら、蕪(カブ)を売り買いする場面が出てきました。日曜日の午前中に島を訪れるキャラクター(ウリ)から蕪を買うようです。買った蕪は土曜日までに売らないと腐ります。また、蕪の価格は日により、そして、午前・午後により変動します。もちろん、蕪を買った時の価格より売った時の価格が低ければ、プレイヤーは損をします。

 実際の株式の保有や売買を簡素化しています。低年齢の人たちが「わからない」と遊ばなくなることからからもしれません。ただし簡素化されてはいますが、またもちろん、そこから色々と探求する必要はありますが、実際の株式取引を理解するための入り口にはなりそうです。例えば日ごとに、そして、その日の午前・午後で蕪の価格が変動するというのは、実際の株式取引の前場・後場(ぜんば・ごば)を表現したのだと考えられます。
 実際の株式は企業が資金を調達するために発行するもので、企業が広く資金の出資者(=株主)を募ります。ゲームでの蕪の発行(生産?)主体は分かりません。またゲームではプレイヤーが個人的に蕪の売買を行えるようですが、実際は金融商品取引業者を通じて株式の売買取引が行われます。保有する株式の値段(株価)の上昇が見込めないために株式を持ち続けることを「塩漬け」と言うようですが、ゲームでは塩漬けどころか1週間で蕪が腐ってしまい取引停止になります。となると、さながらスイングトレードのような感じもします。
 ゲームと現実で大きく異なる点は、株(蕪)価の変動部分だと思います。「だと思います」というのは、実際は需要と供給、つまり株式を売りたい人はできるだけ高く売りたい(供給)、買いたい人はできるだけ安く買いたい(需要)中で、双方(需給)が一致するところで株価が決まるのですが、どうやらこの仕組みがゲームには無いためです。ゲーム内で蕪の価格は(おそらく)ランダムに決められるようです。
 プレイヤーが住む島を発展させていくゲームですので、島や島の住人が資金調達のために蕪を発行(生産?)し、島が発展したら蕪の値段が上がるのかな?と考えた私が、子どもに「島が発展して、島が魅力的になったら蕪の値段があがったりする?」と確認しました。ゲームに夢中なためか、「わからない」というテキトーな返事でした・・・。
 さて、近年、「金融教育」や「金融リテラシー」の重要性が各方面から指摘されます。例えば金融庁は小・中・高校生に向けて金融・経済教育の教材をWEB等で提供 していますし、高齢者に対するフィナンシャル・ジェロントロジー という研究分野の深化も見られます。また一方で、そもそもゲームシステムの塩梅をどうするか、つまり幅広い年齢層にソフトを買ってもらうためには?・・・あつ森のゲーム開発者の努力をひしひしと感じます。

 ゲームを入り口に社会・経済に関する事柄を色々と調べていくと、新しい発見があるかもしれません。単純に消費するだけで終わるのではなく、消費から開発・生産の糸口をつかむ姿勢は大事だと思います。個人的には株(蕪)価の変動パターンが気になります。そのためにはデータを収集する必要がありますね。でも・・・。

 実は私自身もあつ森をプレイしており、島に家を建てています。この文章を書く前に子どもにいくつか質問したためか、書いている途中に子どもから「あつ森を全然やっていないから、家にゴキブリが2匹いたよ。やっつけておいたけど、あつ森やった方がええでぇ」と言われました。なるほど、そういうギミックもあるのかとプレイしたところ、私を模したキャラクターの髪の毛に寝癖がついていました。きちんとケアせねば・・・。