矯正施設退所者にも高齢化の波が!

西本ゼミ3回生がキャリアゼミの活動の一環として、厚生労働省が創設した沖縄県地域生活定着支援センターを訪問してきましたので、その内容について報告いたします。

地域生活定着支援センターとは
3回生 山本幹也

 高齢者人口が増えていくなかで、過ちを犯した人たちが高齢になってから刑務所や拘置所などの矯正施設を退所した場合、その後の生活をどのように送っていくのか、また十分な福祉サービスを受けることができるのかが疑問でした。
 地域生活定着支援センターでは、矯正施設を退所された高齢者と障がいのある方に福祉サービスを受けてもらえるように更生保護施設や福祉施設と連携をとり、支援対象者との橋渡しをおこなっています。
 具体的には、コーディネート業務、フォローアップ業務、相談支援業務という3つの業務が行われています。まず、コーディネート業務とは、保護観察所からの依頼を受け、支援対象者が必要としている福祉サービスを考慮したうえで計画を作成し、入所先施設の確保や福祉サービスの申請をおこなうなどの業務です。次に、フォローアップ業務とは、コーディネート業務により矯正施設退所後に福祉施設等を利用している者や、対象者を受け入れた施設に対してアドバイスをおこなう業務です。最後に、相談支援業務とは本人の意思や状態を確認したうえで今後どのように福祉サービスを利用し、また社会復帰や自立をするかのアドバイスをおこなう業務です。
 先日、沖縄県地域生活定着支援センターを訪問させていただき、様々な疑問について教えていただきました。

沖縄県地域生活定着支援センターを訪問して
3回生 周藤幸子

 地域生活定着支援センターでは、矯正施設を退所された高齢者と障がいのある方たちのサポートを行っています。そのサポートとは、出所者の受け入れ先を決めたり、住民票・療育手帳の取得の手伝いなどのことで、大きくコーディネート業務、フォローアップ業務、相談支援業務の3つがありますが、それぞれ業務を振り分けることなく、総合的にサポートを行っています。
 対象者の中には、出所後に他県への帰住を希望する人がいます。その場合、気をつけていることは、軽い気持ちで他県への帰住先を希望してはいないかを確認することで、どのような生活を送りたいかも含めて、面談で詳しく質問しています。

 また、就職先を決める場合、一般的な企業に行くことはあまりなく、福祉的な作業場が多いです。住居をアパートなどにする場合は、保証人が必要となるため不動産業者との相談が必要となります。出所者を受け入れてくれる施設などは数に限りがあり、入所できない出所者もいます。そういった人たちのために、できるだけ多くの施設に声をかけ、受け入れてくれる施設を探しています。場合によっては住居を決める際に保証人が必要になるという制度上の課題や、出所してから生活保護などが支給されるまでに期間があいてしまうなど、出所後の生活がスムーズに進まないケースもあります。
 また逆に帰住先、就職先が決まった場合でもやめたりする人がいます。地域生活定着支援センターは支援を必要としている人たちのためのセンターなので、支援の必要がないという場合には支援は終了することになりますが、そういった帰住先、就職先が決まったにもかかわらず、辞めてしまうような場合においては、どうしてそうなったのかの理由を考え、次の事例に活かせるように努めているそうです。
 こうしたセンターの方々の熱心な取り組みがあり、協力的な受け入れ先があることで出所者が出所後の生活を前向きに考えることができているのだと思いました。

沖縄県地域生活定着支援センターの実情と成果
3回生 久保田悠斗

 私たちは沖縄県地域生活定着支援センターに、センターの役割などについて実際に取材をしに行ってきました。沖縄県におけるこれまで数年間の成果を依頼件数でみると、平成22年は14件、23年は18件、24年は21件、25年は14件、26年は22件でした。平成25年度で一度件数が下がりましたが、それ以外は右肩上がりで推移しています。今年度(平成27年度)も8月末時点で6名の依頼が来ている状況だそうです。
 また、1か月に何人くらいの受刑者に対応しているのかという質問に対しては、コーディネート業務、フォローアップ業務、相談支援業務をあわせて、8月は15人の支援対象者に対して支援を実施、7月は18人の支援対象者に、そして6月は16人の支援対象者に対して支援を実施したそうです。この数字は刑務所に服役している方への面談と刑務所出所後に支援した人数をあわせた件数で、月ごとに対応する人数は変化しますが、平均で月に約15人〜18人の支援対象者の支援を行っているそうです。
 現在、業務はセンター長、相談員5名の計6名で業務にあたっており、これまで対応してきた中で最長の支援となったのは、センター開始の平成22年度から今年度まで支援を継続していた人です。実際、対象者によっては短期間で支援が終了した方がいたり、長期間になる方がいたりと様々です。

 また、出所後の希望の帰住地が他県の場合、どこの都道府県が多いか、またなぜその都道府県が多いのかという質問に対しては、沖縄県では出所後の帰住地が他県になるケースはほとんどなく、センター開始から現在まで、2名の方が県外へ帰住したケースがあるだけだそうです。逆に、他県の地域生活定着支援センターから依頼があって、沖縄に帰住するケースは多いということでした。そして、その場合、他県の刑務所や少年院で服役している沖縄出身者が本人の希望により沖縄に帰住するケースがほとんどだそうです。
 センターの一番の目的は、犯罪を犯した人が更生して社会に出るように促すことです。このセンターが機能することで、犯罪を犯した人たちが更生できず、出所後に再犯をおかしてしまうというケースを減らすことができるので、とても重要な施設だと思いました。

沖縄県地域生活定着支援センターの課題
3回生 田村和滉

 今回、沖縄県地域生活定着支援センターに訪問させていただき、センターの役割や機能、活動、支援の状況について普段では聞くことのできない貴重なお話を聞くことができました。
 センターでは、矯正施設の退所予定者で高齢または障害を有し福祉支援を必要とし本人が希望する場合において支援が必要だと認められた方を支援しています。業務の中に就職先を探したり、住居を確保したり、対象者の受け皿となってくれる介護施設や老人ホームを探したりする仕事があり、対象者にとってはとても大きな役割を担っていて再犯の防止の役割もあることが話を聞いてわかりました。そして、対象者の社会復帰、生活の定着に必要な役割を果たしており、重要度の高い施設であると感じました。
 しかし、職員の方の人数は不足しており、なかなか支援がうまく進まない時などはかなり大変で、特に沖縄県のセンターでは、対象者が施設で禁止されているお酒を隠れて飲んで問題を起こすなどのお酒の問題、そして離島に帰住の希望があるときが大変だそうです。  
 また、この他にも様々な役割や課題があることが話を聞くことで理解し学ぶことができました。私は、このセンターの事についてもっと多くの人に知ってもらい、早期の課題解決が可能になることを望むとともに、センターの役割がもっと大きく良いものになればいいなと感じました。とても、貴重なお話を聞けてよかったと思います。

これからの地域生活定着支援センターにおいて必要なこと
3回生 浦聡

 今回、沖縄県地域生活定着支援センターを訪問し、様々な質問について回答をいただきました。その中の質問に対しての回答で私が気になったこと、思ったことがいくつかありました。
 まず一つ目は、「沖縄県地域生活定着センターの前年度の成果はどうだったか」という質問に対しての回答で、「前年度の成果は上がっているが、人手が足りないのでこれから下がる可能性がある」とおっしゃられたことです。これから高齢化がどんどん進んでいき、センターで取り扱かっているような事例が増えていくことが予想されると思います。そんな中で人手が足りないというのは大きな課題であると思われ、早急に何か対策しなくてはいけないことだと思いました。

 二つ目は、「罪を犯す背景には困窮や生活苦がみられるが、年金などの老後の給付金は再犯防止に役立っているのか」という質問に対しての回答で、「年金をもらっている人は少なく、生活保護をもらっている人が多い」というものでした。生活保護の不正受給が問題になっている近年において、本当に生活ができなくて生活保護のお金がライフラインになっている人達もたくさんいるという事実が改めて分かりました。そのような人がスムーズに社会生活に復帰し、再犯を防ぐために、センターの存在を世の中の人に認知してもらい、もっと多くの人の対応が可能になるようにすることが重要だと思いました。
 センターを訪れて、今まで知る機会もなかったお話やセンターに携わる人達のお話を聞けて自分の視野が広がったように感じられ、非常に良い経験ができたと思いました。