産学連携先:JAグループ鹿児島

 鹿児島県の牛の飼養状況では、肉用牛(肉用種)の飼養頭数は、全国1位となっています。飼養頭数は平成21年をピークに減少していましたが、平成28年から増加傾向で推移し、令和4年は、全国2位337,800頭となっています。肉用牛の中でも肉質の優れた黒毛和種は、全国1位の321,000頭を飼養しています。飼養戸数は、高齢化や後継者不足等から小規模層を中心に減少傾向で令和4年は平成24年の11,100戸から6,690戸になっており、1戸当たりの飼養頭数は増加傾向で年々規模拡大が進んでいるようです。
 鹿児島黒牛は、一頭一頭しっかりと育てられており、和牛のオリンピックでの優勝によって鹿児島黒牛は日本一を獲得し、肉の質は日本のみならず海外でも高い評価を得ています。
 今回はこのような鹿児島の畜産業の現場として、牛の農家さんと子牛のセリを見学させていただきました。
(経済学部3年 仲西 授)

学生活動状況報告

■経済学部3年 渡邊 聖矢
 初日に見学させていただいた牛農家の下田様は20代のころ派米研修で畜産について学んだのち、帰国し畜産経営を始められました。現在では、母牛130頭の育成牛を育てています。130頭もの数多くの母牛を下田様たちは少数精鋭で少ない人数でお世話しているそうです。
 見学させていただいたときは母牛だけでなく小さな子牛も見学しました。ヤギのような見た目でとてもかわいかったです。すべての牛たちに番号が振られており、下田様たちがお世話をする過程での病気の有無や骨折経験などを、出荷するとき業者の方に事細かに説明するそうです。
 次の日は子牛のセリを見学しました。セリ会場の周りにはセリを待つ子牛がいる場所がありました。そこでの子牛の様子は本当に多種多様でした。おとなしい子や暴れている子、そんな状況を意に介さず、興味のなさそうな子などがいました。子牛は、頭上から垂れた鎖につながれて、セリ会場へ連れていかれます。会場へと向かう際に子牛たちは一列に並ばされ、体重を測定してから、向かっていきました。それをもとにセリでの大体の金額がきめられるようです。ほとんどの子牛たちはおとなしいですが、なかなか体重計に乗らなかったり、そもそも行くときに暴れたりする子もいました。そんな子牛たちは自分がこれからどうなるのかわかっているように見え、複雑な感じがしました。

■経済学部3年 片井 奨
 鹿児島の黒牛は、5年に1度開催されている『全国和牛能力共進会』と言う和牛のオリンピックで2017年に『種牛の部』3部門、『肉牛の部』1部門で農林水産大臣賞を、『肉牛の部』では最優秀枝肉賞を受賞しており、2022年に開催された大会でも6部門で1位、種牛の部の第4区繁殖雌牛群も内閣総理大臣賞を受賞した他、最優秀枝肉賞も受賞しています。
 品質の良い肉牛になる理由の一つは鹿児島県の気候にあります。鹿児島は温暖な気候であり、牛にとってストレスが少なくのびのび育つことが出来るのです。
 そしてもちろん、農家やJAの取組があります。見学させていただいた下田様は母牛の飼育、出産から子牛の生産をされています。JAの肥育牛センターは薩摩センターと大口センターの2か所があります。ここの目的としては子牛の能力判明と子牛セリ市の価格安定です。肥育牛センターが購買することにより、子牛価格の下落防止を図り、肥育能力(育種価判明)早期判明の手助けとなることです。
 子牛のセリ会場では、会場内の緊張感をより肌で感じることができ、普段の生活では体験出来ない空気を味わえました。もう一つ気づいたのは過去のけがや病気を予め提示することによるその後のトラブルへの配慮もしっかりとしていることでした。生き物を扱うことの大変さを感じました。

連携先コメント

JA北さつま畜産部
次長 吉祥庵 様

 阪南大学の皆さん、見学お疲れさまでした。実際に牛舎やセリを見られ、現地に来たからこそ感じること、学ぶことも多かったかと思います。日本の畜産業や農業について、これからも勉強を続けてください。

教員コメント

経済学部
定藤 博子 准教授

 日々、食べ物は当たり前に目の前にならびます。しかし、学生を含め教員も、肉牛の繁殖・肥育・セリなど、畜産業の現場を見る機会はほとんどありません。今回、学生自身がJAと畜産業について調べ、そして、現場でお話を伺ったことにより、日本の農業が置かれている状況だけでなく、JAの農家を育て支える取組、そして、農家の方のやりがいや大変さなど、文献や数字だけではわからない部分を強く感じ取ることができたようです。
 製造業、観光業やサービス業、そしてAIなど、我々の生活は目まぐるしく変わっていきます。農業や食も変化を迫られます。その中で、生活の基盤を支えるものは何か、どのような関わり合いの中に生きているか、自分たちが現代の経済社会で生きていくとはどういうことか、考えるきっかけにもなったように思います。