ビジネス経済学パッケージでは、2年生から4年生までの「専門演習」での学習と研究の成果を共有する機会として、学生による研究の発表会を実施しております。本年度は1月21日から23日に開催し、2年生から4年生まで合計41件の研究報告がありました。発表会は学年ごとに分かれて行いましたが、それぞれの発表の後、会に参加していた学生と教員の投票によって最優秀賞と優秀賞各1名ずつを決定して表彰いたしました。今年度表彰されたのは、以下の6名になります:
4年生:最優秀賞 野口万緒  優秀賞 渡辺翔汰
3年生:最優秀賞 迫田直樹  優秀賞 松田樹
2年生:最優秀賞 北田有輝  優秀賞 西本香奈
 すべての研究内容をここでご紹介することはできませんので、4年生の報告の一部を簡単にご紹介できればと思います。
 野口さんは、学生があまり勉強しなくなるケースが行動経済学で知られているあるパターンに当てはまることに注目し、それを検証する実験を行いました。たとえば消費者は、選べる商品がより多ければ自分の気に入る商品がある可能性が高くなるのでどれかを買う可能性も高くなるというわけではなく、実際には、選べる商品が多すぎるとかえってその商品を買わなくなることがあると知られており、多すぎる選択肢は選択自体を躊躇させるような傾向があります。野口さんは、学生が勉強方法や進路の選択肢が多すぎることで結局はどれも選ばずに過ごしてしまっている、という可能性を考えました。教員が勉強の手につかない学生に対して別の勉強法や進路の可能性を提示して学習意欲を喚起しようとする、ということはよくあることです。ですが、野口さんの考えたことが当てはまるなら実はこれは逆効果であり、学生の選択肢を増やすことで一層勉強が手につかなくさせてしまっていることになります。そこで、以下のような実験を行いました。すなわち、授業の履修者を2つのグループに分け、一方には1種類だけ、もう一方には多数の教材を推薦してその後の学習や能力向上を比較する、というものです。得られたデータが限られたものであったこともあり、薦める教材を1種類に絞ったグループの方が課した問題に高い正答率を示したものの、統計的に有意な差ではありませんでした。とはいえ、大学で学んだことを用いて身近な問題の新たな解釈とその解決を図った研究は明快で、発表会の参加者による投票で最優秀賞に選ばれたのもそうした点が評価されたのではないかと思います。
 他方、渡辺さんの研究は、やはり行動経済学的な手法を用いてアルバイト先の商店でお客様から要求されるレジ袋を減らせるか、というものでした。同じような試みは国外でも、また、この後にご紹介するように学内でもされているのですが、渡辺さんは様々な手法を広範に用いており、また、詳細な分析とわかりやすいプレゼンテーションで教員を含めた聴衆からの投票で優秀賞に選ばれました。
 学生の研究報告ですのでやはりこうしたアルバイト先を舞台としたものは多く、たとえば黒田さんはコンビニエンスストアでのレジ袋利用削減を試みた成果を報告されています。また、張さんは商品の品揃えを増やすことが逆に店の売り上げを減らしてしまうという研究を、大江さんや奥田さんはそれぞれ飲食店における決済手段や商品の薦め方がどのように売上を増やせるかという研究を報告されました。売上の拡大以外では、スーパーのスタッフのミスを減らすにはどのような方法が有効かを検証した重松さんの研究、イベントに来たお客様の誘導にはどのような方法が有効かを検証した宮浦さんの研究、あるいは、働く本人の能力向上に多様なアルバイト先を経験することはプラスかマイナスかを分析した金本さんの研究などが報告されました。
 また、前述の野口さんのように大学を舞台とした研究も多く見られました。たとえば大学の授業を受けるためにかかっている授業料を改めて認識させることで出席率を改善できるかという松本さんの研究、課題は(教員がしばしば信じているように授業時間内にやってもらうよりも)持ち帰ってしてもらう方が良くやってくるという小林さんの研究、授業アンケートに実際にかかる時間やかかると予想される時間を変えることでアンケートの回答率や回答内容にどのような影響があるかを検証した森貞さんの研究がありました。また、ここではまとめきれなかった研究にも興味深いものがたくさんあり、いずれ別の記事でご紹介できればと思っております。
 彼らの研究指導に携わる教員として、今後も大学で勉強を続ける学生にも、また、卒業して就職先や大学院に進む学生にも、研究室での活動などを通して培った能力を今後の人生に活かしていただけることを願っております。
 なお、表彰された研究報告を行った学生には、副賞として図書カードを贈呈いたしました。彼らの今後の研鑽に活かされることを願っております。この副賞の贈呈は、阪南大学学会2019年度学部教育研究活動助成事業補助を受けて実施いたしました。ご支援を頂けたことに心より感謝いたします。