グローバル経済パッケージ 海外フィールドワークゼミ
執筆者:矢倉 研二郎

 「海外フィールドワーク実習」は、経済学部の「グローバル経済パッケージ」に所属するゼミ(専門演習)の学生が受講できる科目です。ゼミ活動の一環として、海外、とくにアジアの国でフィールドワーク(実地研修)を行う授業です。
 私の担当するクラスでは、自分の研究対象でもあるカンボジアでフィールドワークを行います。農村や現地の日本企業などを訪問し、学生が設定したテーマについてインタビュー調査を行っています。これまでのテーマには、子どもたちの健康や教育にまつわる問題、村人の食生活、日本企業による現地従業員の雇用、日本の外食企業や食品小売業が抱える問題、といったものがあります。
 農村では村人に直接話を聞きます。学生はカンボジアの言葉は分からないので私が通訳を務めていますが、身振り手振りも交えて村の人たちとコミュニケーションをとっています。村でのこうした交流は、フィールドワークの醍醐味です。
 もちろんこのフィールドワークは観光旅行ではなく、訪問先の国の経済や社会について学ぶことがその目的ですが、それにとどまらず、学生にとって次のような貴重な機会となります。
 第1に、発展途上国の人々の暮らしやその直面する問題について、より実感を持って深く学ぶことができます。カンボジアの農村の場合、水道はなく、トイレのない家もまだあること、肉は高価なのでめったに食べないこと、経済的理由で中学校にも行けない子どももいること、など、日本では想像しにくい現実がまだあります。学生たちは事前にカンボジアのことについて学んでいくわけですが、実際に現地に行って自分の目で見て、話を聴くことには勝りません。
 第2に、このように途上国の実態を知ることで、日本の社会のあり方や、自分自身の生活や生き方について見つめなおすことができます。参加した学生の多くが「日本に生まれてよかった」と口にしますが、そこでとどまらず、日本のような先進国では豊かで快適な暮らしは何によって成り立っているのか、ということにまで考えを深めることができます。一方でカンボジアの人たちは、経済的には厳しい生活を送りながらも、私たちのような訪問者を親切に受け入れてくれますし、村では子どもたちは無邪気に遊びまわっています。重病人が出た家に対して皆で寄付をするという村もあります。こうしたことを見聞きすることは、私たちの人生や社会にとって何が本当に大切なのか、気づきを与えてくれます。
 第3に、将来の進路を考えるきっかけとなります。フィールドワークで現地の日本企業を訪問すると、そこで働く日本人スタッフの方に話を聞きますが、それは将来海外で働いてみたいという学生にとって大いに参考になります。また、日本人スタッフの方々が、日本では考えられないような困難に直面しながらも、それに果敢にチャレンジし、やりがいを持って仕事に取り組んでいる姿は印象的です。それは学生にとって将来の進路選択の際に何を大事にするべきかを考えるヒントとなります。
 フィールドワークの期間は1週間程度しかありませんが、それは中身の濃い1週間です。学生の皆さんにとって、日本の社会や自分自身の現在と将来のことを見つめ直すきっかけともなる、忘れがたい経験となることでしょう。

もっと深く知りたい方は…

今年のオープンキャンパスのプログラム一つにて本記事をテーマにした模擬授業を行いますので、是非お越しください。スケジュール等の詳細については以下ページをご確認ください。