教員研修の背景
この教員研修は、奈良県立国際高等学校で令和3(2021)年5月19日(水)に実施されました。国際高校では、学校設定科目「グローバル探究」においてESDを基本とした探究学習を進めておられ、私は、前回(3月8日)の教員研修を引継ぎ、ESDとSDGsに関わる講演とワークショップを担当しました。このESDを視点としたカリキュラム開発については、平成30年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)を受けた「世界史教育内容編成論の研究-ESDの視点に基づく「現代の諸課題」からの再構成-」に関連する研究の一環となります。
教員研修の概要
奈良県立国際高等学校(中尾雪路校長)は、2020年度に開校した新しい高等学校で、現在は第1・2学年で構成されています。今回の研修は、3月に実施したものを踏まえ、4月から着任された先生方に国際高校の使命(Mission)を共有し、目標(Goal)である「探究力」「創造力」「協働力」「寛容さ」「挑戦力」「キャリアデザイン力」の6つの「育てたい力」について共通認識を図ることと、前回作成したカリキュラムマップを素材に、探究活動のPDCAについても理解を深めることを目的としています。
私が担当した講演とワークショップは、次の3部で構成しました。
1.ESDと「身につけたい力」
2.探究のPDCA
3.カリキュラムマップ2021の作成
1では、国際高校が目標としている「探究力」「創造力」「協働力」「寛容さ」「挑戦力」「キャリアデザイン力」の6つの「育てたい力」について、そのイメージを中尾校長先生からご説明をいただき、前年度の生徒アンケートの結果を共有しました。
私が担当した講演とワークショップは、次の3部で構成しました。
1.ESDと「身につけたい力」
2.探究のPDCA
3.カリキュラムマップ2021の作成
1では、国際高校が目標としている「探究力」「創造力」「協働力」「寛容さ」「挑戦力」「キャリアデザイン力」の6つの「育てたい力」について、そのイメージを中尾校長先生からご説明をいただき、前年度の生徒アンケートの結果を共有しました。
2では、目標としての「育てたい力」をどのように評価するのか、PDCAの観点から検討していただきました。先生方が個々の授業での評価をどのように実施すれば良いか、具体的な方法を例示しながら共通理解を図り、3月に作成したカリキュラムマップを踏まえ、前年度の先生方の取り組みを振り返るグループワークを実施しました。グループは2年目と1年目の先生が混在するメンバーとしたため、前任者の振り返りを新任者が共有し、疑問点も話し合える機会としました。
3では、3月に作成した第1学年のカリキュラムマップを参考に、6つの「育てたい力」とSDGsの17の目標を2021年度の第1学年と第2学年のカリキュラムマップに位置付けました。今回は、1年目の先生が2年目の先生から説明を受けながら、6つの「育てたい力」とSDGsの17の目標のシールを貼っていく共同作業が見られたことが印象的でした。
この教員研修を行ったことで、2年目の先生にとってはPDCAに基づく授業実践を意識するきっかけに、1年目の先生には国際高校の目標である「育てたい力」とESD・SDGsについて認識を深められる機会となったことがうかがえます。特に、グループワークでは2年目の先生方の振り返りの発言に刺激され、1年目の先生方からも率直な意見が述べられる様子は、新しい学校を共に創っていく意気込みを感じました。その様子は、下記のアンケートへの自由記述からもうかがえます。
- 私は1年目なので、グループワークで2年目の先生から意見をいただけたのが良かった。(1年目の先生)
- 国際高校全体としての初めての研修で、グループワークで「できたこと、できなかったこと」を知ることができて良かった。(1年目の先生)
- 「探究は答えがないことが答え」と聞き、少し明かりが見えたように思えた。(1年目の先生)
- 生徒と共に学ぶ姿勢を生徒に示しても良いのか不安でしたが、「教える」より「共に学ぶ」が探究に向いていると思いました。(1年目の先生)
- 一度、自分の授業の中で何ができ、どう活用するか、できなかったのかを考える時間を持てたことが良かった。(2年目の先生)
- 3月の研修で、教科の中でもESDを…という話を聞いて、今年は頑張ろうという気持ちだったのですが、いざ年度が始まると、横並びで一緒にやるということが、一番大切で、一番難しいと感じます。(2年目の先生)
研修の事前と事後のアンケートからは、教員研修を始める前は、新着任の先生方でESDとSDGsをご存じない先生が目立ちましたが、研修後はESDとSDGsそれぞれの理解がある程度深まったことがうかがえました。しかし、前任の先生方はすでにご存じの内容を振り返ったこともあり、研修後はある程度の理解の深まりに留まりました。この評価結果から、今回の講演は1年目と2年目の立場の異なる先生方に向けての中間的な内容であったことが分かります。ただ、1年目と2年目の先生方で意見交換の機会を設けたことについては、良い評価がみられたことと、カリキュラムマップの作成では、昨年度の振り返りを踏まえ、前年度に担当された先生の意見が参考になっていることがうかがえました。
国際高校のカリキュラムマップのPDCAは、始まったばかりです。大学教員としては、経験値の異なる教員が増えた学校現場で、共通認識を深めることの難しさを実感しました。しかし、今回の研修が一つのきっかけとなり、先生方が互いの成果や課題を共有され、ESDやSDGsと関連付けた学習に取り組まれるようになることを期待します。そして、引き続き、国際高校における先生方と生徒の皆さんの学びが深まることを応援していきたいと考えています。
国際高校のカリキュラムマップのPDCAは、始まったばかりです。大学教員としては、経験値の異なる教員が増えた学校現場で、共通認識を深めることの難しさを実感しました。しかし、今回の研修が一つのきっかけとなり、先生方が互いの成果や課題を共有され、ESDやSDGsと関連付けた学習に取り組まれるようになることを期待します。そして、引き続き、国際高校における先生方と生徒の皆さんの学びが深まることを応援していきたいと考えています。