教員研修の背景

 奈良県立国際高等学校(中尾雪路校長)は、WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業(以下、WWL)における「カリキュラム開発拠点校(令和3年度指定)」となり、「最古の国際都市奈良から発信~持続可能な社会に向けて~」の構想名で本年度から3年間、WWLに取り組まれることとなりました。私は、この事業におけるカリキュラムアドバイザーをお引き受けし、WWLに係るカリキュラム開発に関する指導や助言を行うこととなりました。この教員研修は、WWLに係る活動の一環として2021(令和3)年8月2日(月)に実施したものです。

教員研修の概要

 奈良県立国際高等学校では、学校設定科目「グローバル探究」においてESDを基本とした探究学習を進めておられ、私は、これまでも教員研修で講演とワークショップを担当してきました。
 今回の研修では、先生方から質問の多かった「探究的な学び」について、学習指導要領解説の目標や内容、探究のプロセスを用いながら説明するとともに、第2学年のグローバル探究Ⅱの取り組みを全職員で共有し、第1学年のグローバル探究Ⅰも含めた2学期以降の「グローバル探究」の取り組みの方向性を示すことを目指し、以下の3つの目的を設定しました。
 1.「探究的な学び」について、その目的・内容・方法・評価から理解を深める。
 2.グローバル探究Ⅱの1学期の学習について、6つのゼミで情報共有を図る。
 3.グローバル探究ⅡとⅠの今後のスケジュールを共有する。
 この教員研修を行ったことで、「探究的な学び」のあり方について、探究のプロセスや学習形態の類型化の説明から先生方の理解を深め、第2学年のグローバル探究Ⅱの6つのゼミの取り組みを先生方で共有し、さらに「グローバル探究」の今後の取り組みについては、探究のプロセスを複数回重ねることと、評価を行うことの共通理解を深めることができました。それは、下記のアンケートへの記述からもうかがえます。
  • 初めて知ったことが多くありました。特に探究の目標を知って、今自分たちがやっていることは、このような目標をもとに行っているのかを知りました。(第2学年)
  • 一般的なことだけでなく、それぞれのゼミに対する提案等を親身になってして下さり、自分のゼミ以外へのご助言も、いろいろと参考になりました。(第2学年)
  • もっと知りたいと思ったことは探究のゴール地点についてです。何をもってゴールとなるのか、そのビジョンがまだ少し見えてこないので。(第2学年)
  • 1、2年まとめての研修だったのですが、もう少し「それぞれの学年に向けての説明」という形にしてもらえたら、吸収しやすかった。(第2学年)
  • メモの取り方、レポートの書き方など探究活動をするにあたって、生徒に伝えたいことが非常にわかりやすくまとまっていて、参考にしたいと思いました。(第1学年)
  • このような情報交換の場は、普段の仕事の中ではなかなか設けることができない。各ゼミの方針や、悩みを共有できただけでも、今日は有意義な研修であったと思う。(第1学年)
  • 次回はテーマごとにどれだけ進んだか、問題はないかなど、短い時間でも共有できれば良いと思う。(第1学年)
  • 今の生徒は失敗することに大いに抵抗を持っていると思うので、内容なのか時間なのか、(「探究的な学び」には)余裕が要るのではないかなと思います。(第1学年)
 これらのご意見からは、「探究的な学び」について理解を深められたことと、グローバル探究Ⅱの6つのゼミの取り組みを共有できたことに加え、いくつかの提案もいただきました。特に、「探究のゴール地点(評価)の設定」と、「それぞれの学年に向けての説明」については、今後、早い段階で先生方と共有する必要性を感じました。また、これからも情報共有の機会が必要とされることや、失敗を望まない生徒へ探究的な学びの指導をどのように進めていくのかのご意見から、引き続き先生方との意見交換が必要であることを認識しました。
 カリキュラムアドバイザーとして、国際高校の先駆的な探究学習がより充実するよう、生徒の学びの様子を踏まえ、先生方と意見交換を行い、「グローバル探究」の方法や評価について、検討を進めていきたいと考えています。