高大連携の背景と概要
阪南大学は、大学と高校相互の教育の充実と発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(小橋康之校長)と高大連携協定を締結しています。2024年度は、別の記事で紹介する2年生の総合的な探究の時間の活動とともに、総合英語科2年生2クラス(7組・8組)の「総合英語Ⅱ」の授業で取り組まれている、SDGsをテーマとした探究活動に関わっています。
この探究活動は、法隆寺国際高校が12月に実施されるユネスコフォーラムでの発表を目指して行われており、私は4月の2年生全員に向けて実施した「探究のノウハウ」についての特別講義に引き続き、9月5日(木)に仮説検証のグループワークを、11月6日(水)にユネスコフォーラムに向けた発表会で講評を行いました。そして、12月5日(木)にはユネスコフォーラムに出席して代表2つのグループの発表に対して講評をしました。
9月5日(木)仮説検証のグループワーク
総合英語科の「総合英語Ⅱ」の授業では、2クラスがそれぞれ7つのグループに分かれて独自のテーマを設定し、探究活動を行っています。このグループワークでは、別のクラスのグループでできるだけテーマの近い組み合わせで新たなグループ(以下、班)を7つ編成しました。それぞれの班には経済学部中西ゼミの学生が1名ずつファシリテーターとして参加し、グループワークをサポートしました。
※この活動の詳細については、日本学校教育学会実践研究委員会図書『教育の実践と理論の往還を求めて -日本学校教育学会 実践研究委員会での学びから-』に「高等学校における探究学習の展開-英語科の取組みを主な事例として-」として公表していますので、ご参照ください。
11月6日(水)発表会での講評
この講評では、7組と8組それぞれ7つのグループの発表を拝見し、評価とコメントをしました。その際の評価の観点は次の4つです。
(1)目的:何を明らかにしようとしているか。
(2)方法:4つの方法のいずれかを用いているか。
①「タテ」と「ヨコ」で考える。(「先行研究」と「現代の課題」で考える。)
②「数字・ファクト・ロジック」で考える。(データから根拠を導き、論理的に説明する。)
③「本・人・旅」と出会う。(他者の考え方に触れる。)
④「メモの取り方」と「本の読み方」を身に付ける。(「主観と客観の切り替え」を養う。)
(3)内容:自分事として捉えようとしているか。
(4)独自性:発表に独自性が見られる点がある。
このうち、(2)と(3)は4月の特別講義で紹介している探究学習の方法と内容です。この授業ではユネスコフォーラムで発表するグループが、各クラス1つずつ決まります。発表しないグループも、発表を改善させる活動があるため、これで探究活動が終わるわけではありません。そのため、全てのグループに対して改善点を含めたコメントをしました。また、個々のグループ発表へのコメントとは別に、発表者全員に対して次のようなコメントもしました。
◇良い点
①5分間の時間制限内で、探究の視点に基づく調査・研究を行い、発表に取り組んだこと。
②スライドに日本語を併記しているグループがあり、ユネスコフォーラムで他の学科生に配慮があること。
③全員ではないが、英語を自分の言葉として使っている人がいること(覚えた文型は忘れない!)
◇改善点
①5分間の制限からか、ほとんどのグループの発表で、大なり小なり論理の飛躍があること。
(発表の流れを見直そう!)
(発表の流れを見直そう!)
②課題を明らかにするデータは多くの発表で見られるが、仮説・提案を裏付けるデータ(根拠)を示せているグループが少ないこと。
(仮説・提案の根拠を見つけよう!)
(仮説・提案の根拠を見つけよう!)
③総合英語科らしい発表でも良いのではないか。
(英語を自分の言葉にする。スティーブ・ジョブズなどのようなアクティブな動きがあっても良い!)
(英語を自分の言葉にする。スティーブ・ジョブズなどのようなアクティブな動きがあっても良い!)
これらのコメントを参考に、それぞれのグループが発表の改善を行い、代表となったグループが12月のユネスコフォーラムで発表します。
12月5日(木)ユネスコフォーラム
総合英語科2年生を代表して、7組と8組からそれぞれ1つのグループがユネスコフォーラムで発表をしました。
2つの発表テーマは次の通りです。
2つの発表テーマは次の通りです。
7組 Waste Less Save More
8組 Make Haste, No More Food Waste!
今回の総合英語科の発表では、いずれも食品ロスをテーマとして探究活動に取り組み、その成果を英語で表現することになりました。総合的な探究の時間ではなく、英語の授業の中での探究活動であることが、総合英語科の学びの特徴です。そのため、この学びの中で体が覚えた英語は、今後の財産になるはずです。そして今後の探究活動では、発表のアウトプットの時だけでなく、調べる時にも英語の資料を探してみるなど、インプットの段階で英語を使ってみると学びが深まると思います。
総合英語科の皆さんの探究的な学びはまだまだ続きます。それは大学に進学し、社会人になっても変わりません。その学びに英語が加わると、より世界が広がります。SDGsは大きなテーマですが、自分事として考えることで、より良い未来の実現に取り組むことになります。総合英語科の皆さんも、このユネスコフォーラムで終わりではなく、今後も英語を使ってより良い未来を探究し、自分の考えを英語で伝える取組みを続けられることを期待しています。