高大連携の背景と概要
阪南大学は、大学と高校相互の教育の充実と発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(小橋康之校長)と高大連携協定を締結しています。2024年度は、別の記事で紹介する総合英語科2年生の活動とともに、2年生7クラスの「創生(総合的な探究の時間)」の授業で取り組まれている探究活動に関わっています。
この探究活動は、法隆寺国際高校が12月に実施されるユネスコフォーラムでの発表を目指して行われており、私は4月の2年生全員に向けて実施した「探究のノウハウ」についての特別講義に引き続き、11月20日(水)にユネスコフォーラムで発表する2つのグループの発表の改善に関わりました。そして、12月5日(木)にはユネスコフォーラムに出席し、2年生の創生の発表に対して講評をしました。
11月20日(水)発表の改善
この授業では、2年生7クラスの代表となった6組と7組それぞれのグループの発表を拝見し、改善に向けたコメントをしました。そのコメントのポイントは次の3つです。
(1)この授業で発表して自分たちが改善したいと考えた点は何か。
(2)発表全体の流れ(ストーリー)はこのままで良いか。
(3)仮説や提案を裏付ける根拠となる資料やデータはあるか。
この3つのうち、(1)は発表を自分事として取り組めているかを確認する意味があります。特に、発表を終えた後、上手くいかなかった点に気づいた生徒がいる様子だったので、私がコメントをする前に発言してもらいました。(2)と(3)は4月の特別講義で紹介している探究学習の内容や方法と関わるものです。(2)は探究活動の内容構成と関わり、(3)は探究活動の具体的な方法となります。この2つの改善点を発表した生徒自身に考えさせることで、自ら発表の改善に取り組む契機となることが期待できます。あくまでも、探究活動の主体は生徒の皆さんにあるのです。
12月5日(木)ユネスコフォーラム
創生に取り組む2年生7クラスを代表して、6組と7組からそれぞれ1つのグループがユネスコフォーラムで発表をしました。
2つの発表テーマと私のコメントは次の通りです。
2つの発表テーマと私のコメントは次の通りです。
6組「法国生の登下校中の危険をなくすにはどうすればよいか」
6組の代表グループの発表は、探究課題として身近な登下校の方法に着目したことが大きな特徴です。なぜなら、総合的な探究の時間は「自分たちの在り方や生き方」について課題を設定することが求められるからです。また自分たちのクラスでアンケートを取ったことも意味があります。単に、本やインターネットからの情報収集だけではなく、自分たちの身近な課題に自分たちが向き合ったことが分かるからです。このアンケートから得たデータを根拠として、登下校で危険な場所や要因を明らかにしていきました。そして、明らかになった危険をなくすために、自分たちでできることを仮説として設定して、ポスターの設置に取組んでいます。
このグループの発表はこれで終わらず、取り組みを検証する事後アンケートを行って、「実際に行動にうつせた生徒は少ない」との結論に至っていることがすごいと思います。その上で、改善策として2つの提案を行っていることがさらに良いと思います。なぜなら、総合的な探究の時間では探究のプロセスを繰り返すことが求められているからです。
このように、6組代表のグループの発表は探究の継続性が見られることが大きな特徴です。この提案を来年の創生で検証する後輩が現れると、法隆寺国際高校の創生が新たな展開を見せる可能性があり、個人的には楽しみです。
7組「学校の使用電力を減らすには」
7組の代表グループも探究課題が学校内の問題であることが、総合的な探究の時間として意味があります。使用電力を減らすことで節約されたお金を、他の学校の課題の改善に使おうとする目的があることも良いと思います。この発表では、仮説が5つあることに特徴があります。つまり、①ポスターでの節電方法の周知。②節電タップの活用。③エアコンの効きの改善。④「でんき予報」の周知。⑤照明のLEDへの切り替え。5つの解決法を仮説として設定し、その効果を検証しているのです。5つの仮説の検証も、アンケート調査や実地調査など、さまざま方法で行っています。ある意味、5つの探究活動の発表のようでしたから、もっと発表の時間があっても良かったのではないかと思ったほどです。結果として、6月から9月の電気代がおよそ4万8千円も節約されたことは、大きな成果と言えるのではないでしょうか。この節電で得たと思われるお金が何かに使われたのかは気になるところです。
7組代表のグループの探究活動としては、ポスターでの周知やエアコンの掃除などを学校全体に広げることができたかどうかの検証が重要になります。自分たちの気付きをクラスだけでなく、学校全体の課題として生徒全員を巻き込んだ取り組みにして、今後の節電につなげることできれば面白いと思います。
法隆寺国際高校の創生としての総合的な探究の時間は歴史文化科を除く7クラスが取り組んでおられ、歴史文化科は課題研究の時間が総合的な探究の時間の代替として扱われているとお聞きしています。ということは、今年、創生の発表がユネスコフォーラムに加わったことで、法隆寺国際高校では学校全体で総合的な探究の時間に取組み、その成果発表をユネスコフォーラムでされていることになります。
探究的な学びに絶対的な正解はありません。また、その学びに終わりはありません。その意味では、生徒だけでなく、先生方も多くの工夫や苦労があろうかと思います。それらを乗り越え、このユネスコフォーラムの発表を通過点として、それぞれの学科やクラス、教科で探究的な学びを続けていかれることが法隆寺国際高校の探究活動の大きな特色であると思います。私は4月から探究活動に関わらせていただきましたが、今後も学校全体の探究活動がさらに発展していかれることを楽しみにしています。