講演の背景

 阪南大学は、教育内容の一層の充実・発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(小橋康之校長)と高大連携協定を締結しています。
 法隆寺国際高等学校では、「総合的な探究の時間」を3年間通して実施する学校独自のカリキュラムとして「創生」を編成し、2年生は12月のユネスコフォーラムで発表することを目指した探究活動に取り組まれています。私はその2年生に向けて、「探究活動のノウハウ」を主題とした講演を令和6(2024)年4月17日(水)に実施しました。

講演の概要

 この講演では、探究が何かを生徒の皆さんが考えを深め、主体的に探究活動を進めていくための導入になることを目的として、次の5つの問いを設けました。これは、4月5日に1・2年の先生方に向けて行った教員研修を生徒さん向けにアレンジし、先生のご要望から5つ目の問いを加えたものです。 
 1.探究とはどういう活動か。
 2.何のために探究をするのか。
 3.探究ではどういうプロセスを踏むのか。
 4.探究では何を身に付けることができるのか。
 5.探究をするとどんな良いことがあるのか。
 先の教員研修を経て、先生方からいただいたご要望では、1つめの「探究とはどういう活動か」と3つめの「探究のプロセス」、4つめの「探究では何を身に付けることができるのか」も生徒の皆さんに説明し、さらに5つめの「探究をするとどんな良いことがあるのか」を加えることがありました。先生方にお話した内容を生徒の皆さんと共有することで、2年生全体が同じ目的に向かって探究活動に取り組むことを目指されています。
 私からは、4で説明する「探究の方法」の一つとして、先生方にも体験していただいた「メモの取り方」を生徒の皆さんにも実施しました。私の講演で「気になったこと」や「もっと知りたいと思ったこと」などのメモをとり、そのメモをもとにしたグループワークを2年生全員(約320名)で実践しました。
 その場でグループワークを振り返る時間を十分に取ることはできませんでしたが、生徒さん相互で自分の考えをアウトプットする経験をしてもらえたと考えています。講演についてのアンケートでは、生徒の皆さんからたくさんの感想や質問をいただきました。全てのご質問にお答えできないことが残念ですが、一部を抜粋してコメントします。
先生はグループワークにしたメリットは何だと思いますか?
 
⇒グループワークのメリットは大きく2つあります。1つは自分の考えていることを整理してアウトプット(言語化)すること。もう1つは他の人の意見を参考にすることです。探究活動を一人で進めるには限界があります。他の人(先生や学校外の人も含めて)の協力を得ながら進めると良いでしょう。
探究は相手の意見に対して疑問を考えるということですか?
 
⇒相手への「疑問」を考えることは、探究の入り口になります。相手の意見に「いい意見だね」で終わらせるのではなく、何が良いのか「疑問」を持つことが「問い」を深めることになります。相手の意見を考えることは自分自身への「問い」になり、自分の考えを深める探究になるのです。
課題の作成の仕方について知りたかった。疑問を出すのが難しい。
 
⇒「疑問」は「なぜ?」と問うことから始めてください。そして、自分の「なぜ?」をアウトプット(言語化)して、他の人に話したり、もう一度自分で「なぜそう考えたのか」考え直したりしてください。それが小さな探究のプロセスになり、課題の作成(設定)につながります。
探究を始めていく時、何からまず手をつけて行ったらいいのかが気になった。
 
⇒まずは、自分の興味や関心のあることに「なぜ?」と問うことから始めてください。例えば「なぜ、○○は□□なのか?」「どうすれば○○の□□は良くなるのか?」「そのために自分たちは何ができるのか?」という問いを何度も繰り返すことです。その時に色々な人から情報を集めて、客観的に考えると自分の考え(主観)が整理できていくでしょう。
 生徒の皆さんの率直な感想からは、探究を始めるにあたっての疑問や不安が見て取れます。学校で探究に取り組む時間は限られるでしょうが、日々の生活の中で「アンテナを立て」色々な情報を集め、自分の考えを深める「問い」を繰り返すことが探究的な学びとなります。特に、この2年生は初めての本格的な探究活動になるので、結論を急がず、じっくりと取り組まれると良いと思います。私も、2年生が探究の成果を発表されるユネスコフォーラムに向けて、引き続き協力していきたいと考えています。