<半端ないプロローグ>

日本文化を研究する傍ら、世界にはびこる都市伝説や陰謀論にも精通する神尾教授。都市伝説などはなぜ生まれ広がるのか。また、情報があふれ返る現代において、どう情報と向き合うべきなのかを語ってもらった。

都市伝説とSNSの共通点とは?

聞き手:先生は都市伝説も研究されているのですよね?

神尾:そうです。都市伝説ってどうして生まれるかご存知ですか?

聞き手:わからないです。

神尾:人々の不安です。

聞き手:不安?

神尾:例えば、コロナ禍でも一つの都市伝説が生まれました。
コロナワクチンの中にマイクロチップが紛れ込んでいるという噂です。考えてみてください。あの細い針の中にどう技術が進歩しても、マイクロチップなど入らないですよね。

聞き手:確かに。

神尾:けれど、あの当時人々は恐れていました。未曾有のウイルスがどんどん広がり、ニュースでも大きく取り上げられ、毎日のようにワイドショーを賑わす。そして政府がワクチンを推奨し始めている…。
その信憑性は?体への影響は?不安が不安を呼び、”コロナワクチンにマイクロチップ”といった都市伝説が世の中に生み出されたのです。

聞き手:つまり、都市伝説は人々の不安が具現化した物語ということですか?

神尾:その通りです。人はネガティブな状態から脱するために、嘘と真実を交えたストーリーを作り、誰かと共有することで気持ちを楽にしているのではないかと私は考えています。

聞き手:なるほど。

神尾:これって今のSNS時代とどこか似ていませんか。
知り合いでもない誰かから回ってきた情報を簡単に鵜呑みにし、伝え、それが世の中に広がっていく。
結果、被害を受ける人もいる。
もしかしたら、あなたも都市伝説を世に生み出しているのかもしれない。その感覚を持つことが大事だと私は思いますね。

聞き手:都市伝説もSNSも自分でしっかり情報を理解して、自分なりの答えを導き出すことが大切ということですね。

神尾:そういうことです。


口裂け女の裏側に潜む、アメリカ軍の存在。

聞き手:先ほどコロナ禍での都市伝説を聞かせていただきましたが、他にも教えてもらえませんか?

神尾:いいですよ。
それでは、とっておきの口裂け女の話なんてどうですか?

聞き手:口裂け女の話?興味あります!

神尾:口元が大きく裂けた女性が話しかけてくる「口裂け女」はご存知ですよね。

聞き手:もちろんです。

神尾:この話の誕生には、アメリカ軍が関わっているというのです。

聞き手:アメリカ軍?

神尾:はい。1970年代後半、まだ日本で通信機器が発達していなかった頃の話です。
アメリカ軍が日本で噂話を流すと、どれくらいのスピードで日本全土に伝わるのかを計るために流したものだと言われています。

聞き手:えぇ!!!半端ない!どれくらいのスピードで伝わったのですか?

神尾:真偽は不明です。ちなみに口裂け女の話には続きがあります。

聞き手:続き?

神尾:そうです。口裂け女が、実はオリンピック選手並みのスピードだと言われたり、追いつかれて捕食されそうになった時に、ある言葉を3回放てば口裂け女から逃げることができると伝わったり。どんな言葉かわかりますか?

聞き手:検討もつきません。

神尾:その言葉は「ポマード」です。

聞き手:ポマード?

神尾:髪の毛にハリを出す整髪料のことです。それを3回呟くと口裂け女が怯み、逃げ出すことができると言われています。

聞き手:どうしてポマードなのですか?

神尾明確でないからこそ、都市伝説なのです。

巷で流れる噂話はリアルか、フェイクニュースか。

聞き手:今後、ゼミの中で都市伝説を学生たちに教えられるとか?

神尾:そのつもりです。先ほども少し話したのですが、都市伝説を通じて情報の取捨選択について学生たちには考えて欲しいと思っています。

聞き手:情報の取捨選択?

神尾:1969年にNASAが達成した人類初の月面着陸がありますよね。けれど裏では、あれはフェイクニュースだという人も絶えません。
もし現代であれば「月面着陸はアメリカ政府が作った嘘」などと呟かれ、瞬く間にSNSで拡散されているはずです。
私はSNSの情報を簡単に鵜呑みにするのではなく、本当はどうなのか、実際にフェイクニュースなのかと学生たちには一度、自分の頭で考えて欲しい。
そして追求していく先に真実や学びが隠されていると思っています。

聞き手SNSの情報に踊らされず、考える…

神尾:そうです。私に言わせれば、インターネットに答えはありません。インターネットにあるのは一種の情報。それを一人ひとりが「本当はこういうことかな?」「もしかしたらこうかもしれない」のように自分で考える習慣を身につけることが大事です。その積み重ねが物事の本質を見極める力につながります。

聞き手:なるほど。

神尾:考える力を養うためのツールとして、都市伝説を学生たちにどんどん届けていくつもりです。

聞き手:半端ないお話の数々、ありがとうございました。