9月16日から9月21日の4泊6日の日程で、中央アジアにあるウズベキスタン共和国にて海外研修を行いました。今回参加したのは5名のゼミ生です。東西文化の交差路であるウズベキスタンを舞台に、これまで学習してきた歴史を肌で感じ、現地の人たちとロシア語やウズベク語で会話し、日本語を学習するウズベキスタン人学生たちと交流するという貴重な経験をしました。以下では、各日程のハイライトと学生の声を紹介します。

【9月16日(1日目)】@タシケント

 アシアナ航空を利用し、韓国・仁川経由でタシケント国際空港に向かいました。現地に到着したのは20:30頃です。1時間強かけて入国審査と荷物のピックアップを済ませ、宿泊先に向かいました。
 空港を出ると、「タクシー!タクシー!」の声が飛び交います。夥しい数の白タク運転手が、ものすごい勢いで営業をかけてきます。ここで折れてしまうと、下手をすれば通常の10倍以上の額を払うことになるため、強気でNo!を突きつけ続けなければなりません。案の定、ある運転手はずっと付き纏ってきましたが、ここではよくあることです。喧騒を背にタクシーを数台手配し、無事チェックイン。これでこの日は終了です。
※配車にはYandex Goというアプリを使用します。使用するには現地で使えるSIMカードが必要です。Yandex Goですと、空港から市内中心までは20分で250円ほど。激安です。
これが、白タクですと3000円ほど、場合によってはもっと取られることがあります。

【9月17日(2日目)】@タシケント

 長旅の疲れを取った後、朝食を済ませ、両替とSIMカードを購入するため、近場の銀行と携帯電話ショップ(Ucell)に移動しました。両替所では、あらかじめ米ドルで持ってきた所持金をウズベキスタン・スムに交換します。レートは1ドル=12700スム。みなさん300ドルほど持ってきていたため、とてつもない量の札束を手にしました。SIMカードも、50GBで600円ほどです。
 予定を済ませた後は、早速ウズベキスタン料理を堪能しにタシケント・シティパークにあるレストラン(Tandiriy)に向かいました。サムサやマスタヴァなどの伝統料理を食べ、食後にスイカ、メロンを堪能しました。その後、自由時間を少し挟み、ウズベキスタン日本センター(UJC)に向かいました。UJCでは15名ほどの日本語を学習するウズベキスタン人学生が出迎えてくださりました。双方で日本やウズベキスタンに関する発表を行いつつ、グループに分かれて交流を深めました。日本チームは、それぞれの出身地(広島、徳島、大阪、奈良)の文化、伝統、歴史、料理などについて発表し、最後は関西弁についてのプチ講座を行いました。大阪での決まり文句「知らんけど」や相手のことを「自分」というなど、ウズベク人学生にとって関西弁講座は非常に新鮮だったようで、交流会は大いに盛り上がりました。
 交流会後は地下鉄に乗り、宿に戻りました。地下鉄駅はあちこちに装飾が施されており非常に美しいです。駅からの道中、大きめのスーパー(Korzinka)を発見し、そこで軽食やお土産を調達しました。

※ウズベキスタンの高額紙幣は100000スム(日本円で約1100円)ですので、両替をするとちょっとしたお金持ち気分を味わえます(笑)。物価は非常に安く、お土産をたくさん購入しても全ての学生がスムを余らせていました。

【9月18日(3日目)】@サマルカンド

 この日は早起きして身支度を整え、タクシーでタシケント鉄道駅に向かいました。特急列車Sharq号に乗り、3時間半ほどかけてシルクロードの要所、サマルカンドに向かいます。車窓から見える岩山やモスクなどの風景は、日本では絶対に味わうことができません。
 サマルカンドに到着後、チェックインまでの時間を使って現地で人気のプロフの名店・Osh Markazi(=プロフセンター)に立ち寄り、サマルカンドプロフとサラダを堪能しました。一部、タクシーが目的地と違うところに行ってしまうなどトラブルもありましたが、全て美味しいプロフで洗い流しました。その後、ホテルへ移動します。この日に宿泊するのは、Bibikhanum Hotelという、背後に巨大なモスク(Bibikhanum Mosque)がそびえ立ち南北の徒歩圏内にレギスタン広場、シャヒーズィンダー廟群等が並ぶ好立地のホテルです。サマルカンドの街並みを堪能しつつ、タクシーで移動しました。
 ホテルにチェックイン後、隣にあるシヨブバザール(Siyob Bozor)でお土産品を購入しました。学生それぞれが英語で、ある方はウズベク語やロシア語を使いながら店員と値段交渉し、美しいお土産の品をおトクに購入していました。その後、2kmほど散歩をしつつ、グーリ・アミール廟へ向かいました。ここは、中央アジアの英雄、アミール・ティムールが眠る場所です。すでに夕暮れ時だったため、綺麗なライトアップに照らされる廟を見学しつつ、サマルカンドの歴史に触れました。

※プロフは、米と羊肉、野菜などを油で炒めた郷土料理です。地域により味や作り方に差があります。サマルカンドプロフは、野菜(特に黄人参)の甘みが染み込む、甘さ重視のプロフです。

【9月19日(4日目)】@サマルカンド

 2日目は、ビビハナムホテルの豪華な朝食から始まります。巨大モスクを背に、現地の野菜・フルーツの幸を堪能しました。その後に設けた1、2時間ほどの自由時間では、再びバザールを訪れ、前日気になっていた&買い忘れたこの品あの品を買い求めました。
 その後、道中で前大統領イスラム・カリモフ氏の壮大なお墓を横切り、徒歩でシャヒー・ズィンダー廟群に向かいます。「生ける王」の墓という意味で、頭部を失った王が地下で今もなお生きているという伝説が伝わる場所です。ティムール王の親族を中心とする人々の美しい墓や装飾紋様を見学しました。その後、旧市街通りにあるチャイハナへ。チャイハナとは、現地語でいう喫茶店のようなものです。チャイ=お茶、ハナ=お店です。そこで、シャシュリク(=肉の串焼き)、ラグマン(=うどん的なもの)、ペリメニ(=水餃子的なもの)などを堪能しました。その後は、現地のトゥクトゥク的な乗り物に乗り、レギスタン広場に移動します。レギスタン広場は、3つの古い神学校(メドレセ)からなるウズベキスタンのシンボル的な存在です。ここでさまざまな歴史的建造物に触れつつ、重要文化財の修復等に関わる職人によるタイル作り教室に参加する、アラビア文字で記念の品を作ってもらうなど、貴重な体験をすることができました。現地で、JICAの特派員であり「地球の歩き方:ウズべキスタン編」でも著名な伊藤卓巳さんと邂逅し、氏の勧めもありサマルカンド観光案内所を訪れました。ここには、サマルカンド市内を流暢な日本語や英語で案内するガイド学生さん達がいます。今回は、アミールさんとアジズさんがご協力くださり、ビビハナムモスクを案内していただきました。特にアミールさんは学生達と同じ年ということもあり、世間話でも非常に盛り上がっていました。
 ビビハナムモスク見学後は、日本人オーナーが経営するカフェ(Ikat Bountiques Café)で夕食。美味しい料理と丁寧なサービスが非常に印象的でした。その後、タシケントへ戻る電車の時間が迫っており大急ぎで鉄道駅に移動します。渋滞にもつかまりましたが、間一髪間に合いました。私自身、こんなに焦って走ったのは久しぶりでした(笑)。帰りの道中、学生達は疲れて寝ると思いきや、カードゲームをしつつ大盛り上がり。学生間の親交も確実に深まっており、教員としては非常に嬉しい光景でした。

※ここまで連日ウズベク料理を食べていますが、慣れない油や乳製品でお腹を壊す方がいました。私自身はそこまで苦手意識はないのですが、チャイハナでペリメニをつけて食べたケフィール(ヨーグルトのようなもの)がよくなかったのか、日中にお腹を下しました。渡航される際は、胃薬はもちろん、爆食いしないことが肝要です。

【9月20日(5日目)】@タシケント

 サマルカンド旅の疲れもあったため、午前中はフリータイムにしていましたが、ある学生達はナヴォイ劇場やチョルスーバザール(Chorsu Bozor)へと足を運び、最後の最後までウズベキスタンを堪能してきました。チョルスーバザールは、整然としたシヨブバザールとは異なり、出店がこれでもかと立ち並ぶ巨大でカオスなバザールです。肉市場では、皮を剥がれた羊や鳥なども生々しくぶら下がっています。好みは分かれるかと思いますが、訪れた学生達は「これこれ」と言わんばかりに日本と全く異なる現地の様子を楽しんでいました。  チェックアウト後は、荷物を受付裏に置かせてもらい、ジョージア料理店(Gruzinskii Dvorik)へ向かいます。日本ではあまり馴染みがありませんが、ジョージア料理はロシアでもウズベキスタンでも非常に人気の高い民族料理です。ここまで毎日味わってきたウズベク料理とは一風違う、しかし非常に美味しいジョージア料理をみなで堪能しました。昼食後、余裕のある学生達は、韓国資本が大量に投入され近年の発展のシンボルでもあるソウル・ストリートで近代的な雰囲気を味わってきました。その後、時間に余裕をもってホテルに集合し、タクシーで空港に向かい、22:50発の便で仁川、大阪へと向かいました。

【9月21日(6日目)】帰途

 空の上で日付が変わり、翌朝、仁川国際空港に到着しました。巨大な空港の中で、それぞれ韓国料理やショッピングなどを堪能し、ゆっくりと過ごしました。昼過ぎの便で関西国際空港へと出発し、帰国したのは16:00前でした。これにて全日程終了です。

参加学生のコメント

平田聡さん(4年生)

 英語や中国語などの身近な言葉が通じない環境に身を投じることで、今までとは全く違った経験をすることができました。ロシア語が通じない地域や人たちもいて、その度に自分のウズベク語の知識を更新していく感覚があり、バザールなどでの1対1の会話が多くなるシーンで使えるフレーズや、「お釣りあげる」「楽しい会話をありがとう」などの表現も使えるようになりました。
 今回の研修では、ウズベキスタンの文化を学習することの他に、日本の文化を伝えるという場面もあり、ゼミ生一人一人がいい雰囲気で取り組むことができたと感じています。ウズベキスタンの学生達が最初に日本語でウズベキスタンの食事や観光地などを紹介してくれましたが、自分を含めたゼミ生達が話すロシア語のレベルよりも彼らが話す日本語のクオリティーの方が高く感じました。
 非日常をたくさん感じることができたことも面白かったです。日本に住んでいると、タクシーにぼったくられたり運転が荒かったりすることはほぼないですし、時間にルーズなことも感じないです。しかし、ウズベキスタンではむしろそれらが当たり前のように感じられます。日本が海外から安全な国であると言われる理由が分かったような気がしました。それらは、さまざまな記事や動画などである程度理解していたことでしたが、実際に体験できたのはとても良い経験です。
 異文化を、実際に自分の目で見て感じることに大きな意味がありました。研修に参加する前までは綺麗な場所くらいのイメージしかなかったですが、実際に現地に足を運ぶことで、ウズベキスタンに住んでいる人々の話であったり、地域によってロシア語が通じる・通じないということがあったり、日本との食文化の違いであったり、様々なことを感じることができました。個人的に研修を通して最も学んだのは、日本のことであったように感じます。日本という住み慣れた環境から飛び出すことで、言語はもちろん、食事、服装、現地の人の過ごし方、時間に対する考え方など、日本とのギャップを味わえたのが1番の醍醐味でした。日本で生きているからこそ、普段当たり前のこととして感じることができなかったことを、ウズベキスタンの地で身をもって感じることができたのは、自分にとって大きな財産です。
 最も印象に残っているのは、タクシーのエピソードです。チョルスーバザールから移動するためタクシーを呼んだのだがなかなか来ず、現地の人に頼んだ結果、その人の知り合いのタクシー運転手がやってきました。彼は、目的地までついた時に定価の10倍以上の金額を要求してきて、非常に腹が立ちました。一方、帰りの空港への移動中の運転手は非常に気さくな方で、サッカー日本代表の話で盛り上がりました。道中があまりにも楽しく、最終的には自分から定価の5倍の金額を払いお礼を伝えました。同じタクシーでの両極端な経験が、私にとって1番のエピソードです。

中西夕樹さん(4年生)

 ウズベキスタンは、景色、人、料理、全てが想像以上のものでした。特にサマルカンドは街全体がとても綺麗で、歩いているだけでもワクワクしてしまうくらい建物が魅力的でした。写真で見ていた時とは感じ方が全く違い、細かいタイルで彩られた建物を間近で見ることができました。ただ自分たちで見学するだけではなく、ビビハニムモスクではガイドをしていただき、そのおかげでモスクについて詳しく聞けたことが一番良い経験になりました。私は中央アジアにおける建物や刺繍の紋様について研究をしているので、建物内に刻まれている紋様やその意味を学習する良い機会にもなりました。
 ガイドの方だけでなく、バザールでナッツをたくさん食べさせてくれたり、3人がかりで買い物に協力してくれたり、英語がお互いに拙い中で人の温かみに触れることができました。
 ウズベキスタンは、最初何も知らない国で、研修としてでなければ行く機会がなかっただろうなと思います。貴重な機会に参加することができ、本当によかったです。

原田伊織さん(4年生)

 初めての海外で緊張感や高揚感に包まれていましたが、大学生活の中で貴重でかけがえのない思い出になりました。今回の研修で経験したことは、今後の人生に大きな影響力を持つと思っています。  今回の研修で、「人を見る」ことの重要性を改めて学ぶことができました。言語を学ぶことも重要ですが、表情や態度、行動など全てを見た上で取る行動が、海外生活では重要なのだと思います。ゼミ生間の親交も深まりました。4日目、サマルカンドからタシケントに戻る特急列車の中で、メンバーでカードゲームをしたことが一番印象に残っています。それまで色々なことがあった中でその日の最後をゼミ生同士で楽しく笑顔で過ごせたことが1番の思い出です。

西本彩乃さん(4年生)

 9月中旬、ゼミの有志の学生でウズベキスタンのタシケント、サマルカンドに研修に行きました。研修は、学生生活の記憶に残る大変素晴らしい経験となりました。特に日本語学校での交流会や、日本語で現地案内をしてくださった方からは、第二言語として日本語を進んで学習する意欲の強さを感じ、言語を習得するにはより密に互いを理解し合うことが重要であるという貴重な学びを得ることができました。英語だけでなく、今後も様々な言語を学習していきたいです。  ウズベキスタンは想像以上に歴史の爪痕を感じ、世界史が好きな私にとっては教科書の世界を自分の目で見ることができたことへの感動がおさまりませんでした。特にビビハニムモスクでは、巨大地震で崩壊したところを再び修復して現在は博物館として使われているところを見た時、タイル職人の技や、古くからあったものと修復されたところの違いから感じる歴史に感銘を受けました。タイル装飾で細工がされている中には、アラビア文字が混ざっていたり、イスラム教の祈りの意味が込められた紋様があったりなど建物がなす意味の壮大さを直に感じることができました。  ウズベキスタンでは、トラブルも発生しました。特に乗り物に関するトラブルは冷や汗ものでした。ぼったくりのタクシーに乗せられそうになったり、列車は渋滞のために乗り遅れそうになったりなどがありました。これらのことが起きた時、どれだけ現地の言葉が話せたらいいだろうかとしみじみと感じました。  この研修を機に、もっと自分の足で世界を歩き、自分の目で世界を見にいきたいという意欲が増し、同時に歴史や言語への興味関心がさらに沸きました。今回の研修を企画してくださった柴田先生には、当初断ろうとも思っていたのですが、今では感謝しても仕切れません。後輩達も、こうした機会をぜひ活用してほしいと思います。

樫根望さん(4回生)

 日本ではできない様々な経験ができ、とても充実した6日間でした。研修ではレギスタン広場やシャヒーズィンダー廟群、ビビハニムモスクなど多くの歴史的な場所を巡りました。どの場所でも建物の大きさと神聖な空気に圧倒されるとともに、タイルの装飾が非常に細かく綺麗だったことが印象に残っています。特に、シャヒーズィンダー廟群では青のタイルの装飾が息を呑むほどの美しさでした。また、現地の移動手段は基本的にタクシーでしたが、タクシーの運転が衝撃的でした。スーツケースを乗せたトランクを半開きのまま発進させ、車間ギリギリを走り続けるような運転で非常にスリルがありましたが、後になってみると良い思い出です。  タクシーやバザールなどでは現地の人に拙いロシア語で何とか自分の意思を伝えようと頑張りました。特にバザールでは、値段の表記がないものも多く、価格交渉を必死に行いました。現地の人も違う表現で聞き返してくれたり、ジェスチャーで伝えようとしてくれたため、自分の言葉や意思が伝わった際は非常に嬉しく感じました。このことから、簡単な挨拶や単語だけでも現地の人の言語を覚えて使うことで、コミュニケーションが楽しくなることを学びました。この研修を通して、ウズベキスタンという国の歴史や文化、人の魅力を十分に実感できたとともに、ロシア語の学習をより深く取り組みたいと考えるきっかけになりました。

総括

 柴田ゼミでは、ロシアや中央アジアを舞台に、異文化の理解・尊重、異なる背景を持つ人々とのコミュニケーション、多文化共生などについて学んでいますが、今回のウズベキスタン研修は、まさにゼミ活動の総括に相応しいものでした。ウズベキスタンは、地域によりますが、イラン系、ギリシア系、アラビア系、モンゴル系、トルコ系、ロシア系などの多様な民族や文化が入り混じる、世界的にも稀な国の一つです。こうした国を実際に訪れ、現地の人々と交流することで、私たちが普段暮らしている環境が如何に恵まれ、また限られた空間であるのかを実感し、異文化理解を促進するだけでなく、日本のことや自分が常識だと考えてきたことを疑い省みるきっかけにもなりました。参加者の皆さんは、6日間という限られた日程の中で、期待していた以上のことを経験し、学んでくれたことと確信しています。
 参加者の皆さんには、ウズベキスタン研修で得た経験を他のゼミ生と分かち合い、興味をもったことをさらに深く学ぶ機会とし、自身のさらなる成長へと結びつけてくださることを切に願います。また、今回の研修を陰でサポートしてくださった関係各位、さらに研修への参加をお許しくださった保護者の皆様に、この場をお借りして感謝申し上げます。
 来年度以降も、こうした海外研修を実施していく予定です。引き続きご理解・サポートのほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。