パリ五輪開催企画
審判を見ると、競技の視点が変わってくる⁉   

はじめに

私は教員をしながらJリーグで審判をしており、二足の草鞋を履いています。
審判として競技に関わる立場から、日本全国を熱狂の渦に巻き込んでいるパリでのオリンピックの各競技の審判についてお話したいと思います。大会の主役はもちろん選手で、審判は支える裏方の役目であまり注目されることは少ないかもしれませんが、この機会にぜひ注目していただければと思います。審判に目を向けることで、競技の見方が広がり、さらに競技が面白くなることでしょう。

審判の種類

スポーツの審判は、主に「計測型」、「採点型」、「判定型」の3つに分類されます。どのスポーツがどの型かわかりますか?
それぞれの種類が持つ役割と特徴を理解することで、競技観戦の視点がより豊かになるでしょう。以下ご紹介します!
  1. 計測型
    計測型審判は、時間や距離、速度などの物理的な計測を行う役割を担います。
    例えば、陸上競技や水泳のタイムキーパー、スキーやスケートの距離計測など。
    0コンマを争う競技では、計測において人間の力では限界があります。これらの審判は、高精度の計測機器を用いて正確な記録を取り、公平な競技結果を確保します。計測型審判の正確さは、選手の努力を正当に評価するために欠かせません。
  2. 採点型
    採点型審判は、主観的な評価基準に基づいて選手のパフォーマンスを採点します。体操、シンクロナイズドスイミングをはじめ、パリ五輪から正式に競技として認められたブレイキン(ブレイクダンス)、そして東京大会で初採用されたサーフィンなども当てはまります。
    審判するにあたって、審判自身の主観を排除して評価することが求められます。
    しかし、どうしても審判の感性によるところが出てきてしまう一面があります。(計測型のように揺るがない数字が出ないので難しい…)
    そこで、採点型ではこんな仕組みが…
    5人の審判が採点をし、それぞれの採点が大幅に異なっていた場合は最も高い点をつけた審判と、低い点をつけた審判は除外し残りの3人の採点値で中央数値を算出し、採点を行います。
  3. 判定型
    判定型審判は、競技中のルール違反やプレーの適正性を判断する役割を持ちます。サッカーやバスケットボールの主審、野球のアンパイア、テニスのラインジャッジなどがこれに該当します。判定型審判は、その場で迅速かつ的確な判断を求められ、試合の流れや結果に大きな影響を与えることがあります。

審判の役割

審判には試合を円滑に進行し、定められた時間内で終了させる進行役(MC的な役割)と、ファウルなどを取り締まる裁判官のような二つの役割があります。一般的には後者の役割が強調され、時には悪者扱いされることもありますが、審判の目的は観客やTV前の視聴者に試合が面白いと感じてもらうこと、選手にとっても楽しい試合を提供することです。
決して、審判は警察官のようにピッチ上の細かい違反を捜し求めているわけではありません!

サッカーの例を挙げます。
ボールがピッチの外に出たとき、複数の審判がAチームのボールであると思っています。
でも、Aチームも相手のBチームもBチームのボールだと思っていたとします。
皆さんが審判だとしたらどうしますか?
自分たちが目で見た通りAチームのボールにしますか、それとも選手やお客さんが望んでいるBチームのボールとしますか?

審判は目で見た情報で判定しますが、時には第六感を働かせ「この状況では何が期待されているか」を感じ取ることが必要になります。審判は時には「スマート」にゲームを進めることが求められるのです。

審判が人でなくなる時代が来る⁉

五輪で採用されている多くの競技の審判機能に測定機器が導入されています。
例えば、強豪国相手に毎回手に汗握る戦いをみせてくれているバスケットボール男子日本代表のバスケットボールでは、シュート後のボールが放物線の下降中にディフェンスがカットブロックを試みる場合、ファウルになるルールがあります。しかし、ゴール周辺では多くのプレイヤーが密集し、スピードの速い中で行われるため、これらを審判の肉眼で確認するのは困難を極めます。
次に水泳競技でも、プールの両端に電子タッチパッドが設置されており、選手がこれに触れることでタイムが正確に計測されます。これも機械無しでは正確に計測することは不可能です。
こうして、競技ごとに特化した最新技術の計測システムが導入されており、大会中にはこうした技術にも注目することでさらに大会がおもしろくなることでしょう。

「審判は人ではなく、機械だけでいいのでは?」という考えもあり、現代技術を駆使すれば機械のみで審判を担うことも可能です。しかし、競技の流れを理解し、公正な判断を下すためには人間の判断が不可欠です。この点はスポーツ業界に限らず、世間一般でも共通する認識です。機械と人間の融合が重要であり、最良の判断を行うためには両者の役割を適切に組み合わせることが必要です。今後も、機械や人工知能(AI)がスポーツにおいてどのように活用されていくかについては、さらなる注目が集まるでしょう。

赤阪個人的なパリ五輪での注目ポイント!

~女性の審判の活躍~

スポーツ界におけるダイバーシティはますます促進され、パリ五輪では多種多様なアスリートや役員の活躍を目にすることができます。サッカー国際審判員の山下良美さんは、2022年カタールW杯に女性審判員として選出された主審の3人のうちの一人です。今大会にも選出され、すでに男子の試合を担当しています。そんな山下さんと私は大学の同級生になります。当時、男子サッカー部の前後の時間で彼女がプレーしていたことをよく覚えています。そんな身近な存在であった彼女が、こうして五輪の舞台で活躍していることに勇気をもらっています。世界最大のスポーツイベントで輝く同級生に心からエールを送ります。
がんばれ、よっち!!