イノベーション論では(経営学部 千島 智伸 准教授 担当 )
日建リース工業 株式会社 渡邊 将介 様をお招きし、「既存のリース事業から新たに水産の事業開発を行った同社のイノベーション」をテーマに、特に現在リース業に起きているイノベーションとエコシステムの関係をご紹介頂きました。

日建リース工業様は、建設用作業足場、工事現場事務所の仮設、介護用品、物流で使用する機器や備品を扱う企業で、近年は水産分野での物流網構築に創意を傾けています。そして、新たな活魚輸送テクノロジー「魚活ボックス」を活用した流通の普及に取り組んでいるところです。

魚活ボックスは、魚を運ぶ水槽内の海水に二酸化炭素を一定濃度溶け込ませて魚を低活性化(眠ったような状態)させることで、一度にたくさんの魚を鮮度良い状態で生きたまま輸送する仕組みに繋がっています。

輸送コスト・卸売業の加工コスト・鮮度を維持し新鮮な魚を消費者に提供できることで、顧客満足にもつながります。

天然魚漁獲量の減少、水産事業に従事する人員数、慣れた方法が早いという観念など、業界の慣習を変えるのは当初難しい状況が続き、しかしながらどうして新規開発を進めたのか?失敗をしても、どうやって取り返したのか?そもそも、イノベーションにおける失敗とは何か?

イノベーションは、既存のアイデアを活用した商品・サービス開発に取り組み、顧客の行動を変え、価値が普及することへの挑戦を意味します。当然、その挑戦には数多くの失敗が伴いますが、同社の講演にそうした点に対するヒントが数多く含まれていたため、特別なお話を頂くことができました。

受講した学生から、

・「失敗とは成長であること」の意味が、具体的な例で理解することができた
・普段のやり方に人はなぜ拘り、それを崩したり変えることは相当な困難を伴うが
 それには新たな価値を認めてもらうことが必要だ
・価値を認めるのは顧客で、価値に気づいてもらう人を顧客として見る必要がある
・価値を創造するための技術であり、周囲企業との連携が存在するのはそのためだと
 理解した

このような講義所感が出ています。

特別講義を受け、水産活魚市場は、これからの取り組みで市場の拡大が見えてくる一方で、活魚ボックスの仕組みが、魚を扱う流通業以外にも広がる可能性も新たに見えてくるのではないか、それがビジネスエコシステムの本質だとするご説明に、とても納得する時間となりました。