韓流アイドルが日本で成功を収めるまでの戦略と、
彼らが日本のファンに与える影響についてを深掘り!
早速ですが、表1を見てください。花丸マークがついているものが、いわゆる韓流グループのアルバムです。2023年度の上位10アルバムのうち、5アルバムを占めており、いずれも男性グループです。
さらに詳細にオリコンのランキングを見てみると、11位と13位に、「TOMORROW X TOGETHER」、16位に「V」、17位に「Jimin」、18位に「Jung Kook」といずれもBTSのメンバーがランクされています。加えて、15位の「JO1」は、2019年に日本最大級のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で選ばれた日本人11名で構成されていますが、この番組は元をただせば、韓国の人気オーディション番組「PRODUCE 101」の仕組みを使ったものです。
さらに詳細にオリコンのランキングを見てみると、11位と13位に、「TOMORROW X TOGETHER」、16位に「V」、17位に「Jimin」、18位に「Jung Kook」といずれもBTSのメンバーがランクされています。加えて、15位の「JO1」は、2019年に日本最大級のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で選ばれた日本人11名で構成されていますが、この番組は元をただせば、韓国の人気オーディション番組「PRODUCE 101」の仕組みを使ったものです。
韓流アイドルが人気な3つの理由
今回のお話は、上記の結果をみて「なぜ、日本では韓流アイドル・アーティストが人気なのか」について、考えてみたいと思います。
結論から言うと、私は、韓流アイドルが人気である理由は次の3点であると考えています。
結論から言うと、私は、韓流アイドルが人気である理由は次の3点であると考えています。
- 国際的な動画配信サイトの普及と韓国コンテンツの拡大
YouTubeやNetflix・Amazonプライムといった有料・無料を問わず、全世界向けの動画配信サイトが充実したことで、日本や世界のどこにいてもが、気軽に韓国生まれのコンテンツを見ることができるようになったこと。
加えて、韓国政府や韓国のエンターテインメントに関する企業が、積極的にこれらツールを駆使し、自社の韓流アイドルを、日本をはじめ世界に売り込んだこと(言語学習も含む)。
- 韓流アイドルの高い完成度とその背景
韓流アイドル自身が極めて高い完成度を有していること。
すなわち日本のスカウトやオーディションを経てデビューした歌手よりも多くの練習や訓練、指導を受けることで、デビュー当初から圧倒的な品質を有していること(田中絵里菜(2021)『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』朝日出版社)。
- 日本における韓国文化受容の背景
1990年代以降、日本でも、IT化の進展などで、韓国の文化などを見聞きできるようになったこと。
また海外旅行の行先として近場の韓国人気があったことから、韓国の文化や習慣を受け入れる土壌ができていたこと。
韓国アイドルの日本上陸大作戦 ~音楽業界の戦略と成功の秘訣~
<国際的な動画配信サイトの普及と韓国コンテンツの拡大>
➀について、例えば、2009年、韓国文化体育観光部(日本で言う、文化庁、観光庁、スポーツ庁に該当)が、音楽産業振興のために1,275億ウォン(約140億円)を投じると発表したそうです(増淵敏之, 岡田幸信(2023)『韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか : ドラマから映画K-POPまで知られざる最強戦略』徳間書店)。
さらに、韓国のSMエンターテインメントやYGエンターテインメントなどの大手音楽事務所が、2000年代以降積極的に、韓国で人気のあるタレントを日本でデビューさせてきました。例えば、BoA(2001年に日本デビュー)や東方神起(2005年に日本デビュー)、BIGBANG(2009年に日本デビュー)、2NE1(2009年に日本デビュー)、少女時代(2010年に日本デビュー)、KARA(2010年に日本デビュー)、その後、一時的に政治的な日韓関係の悪化があったものの、2014年に防弾少年団(現、BTS)、2017年にはTWICEとBLACKPINK、2020年にはNiZiUとJO1が日本デビューを果たしています(山本浄邦(2023)『K-POP現代史 : 韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』筑摩書房)。
彼・彼女たちは、YouTubeなどを積極的に活用することで、日本デビューの前に日本語で積極的に自らの情報を公開することで日本国内の認知を高めています。
さらに、韓国のSMエンターテインメントやYGエンターテインメントなどの大手音楽事務所が、2000年代以降積極的に、韓国で人気のあるタレントを日本でデビューさせてきました。例えば、BoA(2001年に日本デビュー)や東方神起(2005年に日本デビュー)、BIGBANG(2009年に日本デビュー)、2NE1(2009年に日本デビュー)、少女時代(2010年に日本デビュー)、KARA(2010年に日本デビュー)、その後、一時的に政治的な日韓関係の悪化があったものの、2014年に防弾少年団(現、BTS)、2017年にはTWICEとBLACKPINK、2020年にはNiZiUとJO1が日本デビューを果たしています(山本浄邦(2023)『K-POP現代史 : 韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』筑摩書房)。
彼・彼女たちは、YouTubeなどを積極的に活用することで、日本デビューの前に日本語で積極的に自らの情報を公開することで日本国内の認知を高めています。
なぜ韓流アイドルは心をつかむのか? / 憧れと共感の理由
<韓流アイドルの高い完成度とその背景>
②について、心理学的に自分にないものを持つ人に魅力を感じる「相補性の原則」を用いて考えてみると、厳しい練習に耐えて、圧倒的な歌唱力とダンス、立ち振る舞い、ファッションなどで固めた韓流アイドルは、日本の若者を中心に、「とてもこんなことできないよ。けれど格好いい(=憧れ)」というイメージを抱かせることに成功しているとおもいます。また、デビューまでの道筋(例えば、厳しい練習風景など)をYouTubeなどで配信している場合もあります。これらを見て、応援しようと考えたファンは、韓流アイドルやアーティストのライブやコンサートに参加し、同じ歌を歌い、グッズを購入することで、極めて強い一体感を持つことができます。これは「同質化の法則」といい、同じ共通点を持つことで、よりその人を応援しよう(=魅力的に感じる)という流れが生まれるのです。
最後に、精神医学の世界では、憧れや崇拝するものを持つ人はストレスが低く、幸福感が強い傾向があるとのこと。つまり、韓国発のアイドルやアーティストを通じて、個人では実現できない憧れを代替的に具現化することで幸せを感じているのです。
ちなみに、K-POPアイドルの作り方について、田中絵里菜(2021)『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』朝日出版社の記述を借りれば、「スカウトやオーディションで選ばれたアイドルの候補生は「練習生」と呼ばれ、デビューに向けて、芸能活動に必要な能力を伸ばすありとあらゆるトレーニングを受けています。たとえ、芸能事務所が開催する厳しい倍率のオーディションを勝ち抜いても、すぐにデビューが約束されるわけではなく、毎日ただひたすらトレーニングを受ける練習生として契約する。この期間は3か月の人もいれば8年の人もおり、千差万別。何年経ってもデビューできないケースも多く存在します。」
つまり、「芸能事務所が人材をさらに選別するための過酷なシステムだ」と指摘しています。さらに田中氏は、韓国には、「「完成した人」こそがデビューできるという韓国芸能界の価値観」があるといい、その一例として、ある韓国のオーディション番組で、すでに日本でアイドル活動をしている参加者のパフォーマンスに対して、「もうデビューしていたんじゃないのか?」と厳しい評価がくだされたことなどがエピソードとして語られています。
でも実は、このような練習生のシステムは、日本の「旧、ジャニーズ事務所(現、STARTO ENTERTAINMENT)」や「AKB48」などに代表されるアイドルグループですでに用いられており、その狙いは、練習生の成長過程を通じて、チームや個人を消費者に応援してもらうことで、CDやグッズの購入、ライブやコンサートへの参加をしてもらうというビジネスモデルであるといいます。
つまり、「芸能事務所が人材をさらに選別するための過酷なシステムだ」と指摘しています。さらに田中氏は、韓国には、「「完成した人」こそがデビューできるという韓国芸能界の価値観」があるといい、その一例として、ある韓国のオーディション番組で、すでに日本でアイドル活動をしている参加者のパフォーマンスに対して、「もうデビューしていたんじゃないのか?」と厳しい評価がくだされたことなどがエピソードとして語られています。
でも実は、このような練習生のシステムは、日本の「旧、ジャニーズ事務所(現、STARTO ENTERTAINMENT)」や「AKB48」などに代表されるアイドルグループですでに用いられており、その狙いは、練習生の成長過程を通じて、チームや個人を消費者に応援してもらうことで、CDやグッズの購入、ライブやコンサートへの参加をしてもらうというビジネスモデルであるといいます。
日本人の海外旅行先ランキング1位は韓国!
<日本における韓国文化受容の背景>
③について、JTB総合研究所「アウトバウンド 日本人海外旅行動向」によれば、日本から韓国への旅行者は、コロナ禍前の2019年で327万人に達し、日本における海外旅行先としてはアメリカの375万人に次いで多かったようです。またコロナ禍後の2023年では231万人と、アメリカの151万人を上回り、日本からの海外旅行先としては最大となりました。さらに、韓国から日本への貿易輸入額も、一時的な減少はあるものの、ほぼ一貫して増加しています(世界経済のネタ帳「韓国の貿易収支・貿易輸出入額の推移」より)。
これらをまとめてみると、韓流アイドルやアーティストが日本で人気である理由は、高い完成度に裏付けさられた、憧れからくる、相補性と同質化を通じて、幸福感を感じることができていること。そして、韓国生まれのコンテンツなどを受け入れる土壌が日本にあることといえるでしょう。
これらをまとめてみると、韓流アイドルやアーティストが日本で人気である理由は、高い完成度に裏付けさられた、憧れからくる、相補性と同質化を通じて、幸福感を感じることができていること。そして、韓国生まれのコンテンツなどを受け入れる土壌が日本にあることといえるでしょう。
参考文献
桑畑優香 [ほか](2024)『韓流ブーム』早川書房
山本浄邦(2023)『K-POP現代史 : 韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』筑摩書房
黄仙惠(2023)『韓国コンテンツのグローバル戦略 : 韓流ドラマ・K-POP・ウェブトゥーンの未来地図』星海社
増淵敏之, 岡田幸信(2023)『韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか : ドラマから映画
K-POPまで知られざる最強戦略』徳間書店
菅野朋子(2022)『韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか』文藝春秋
野間秀樹(2022)『K-POP原論』ハザ
ユンソンミ(原田いず 訳)(2022)『BIGHIT : K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグ
ナル』ハーパーコリンズ・ジャパン
ホンソクキョン(桑畑優香 訳)(2021)『BTSオン・ザ・ロード : BTSはいかにK-POPを超え、世界の人たちを動かしたのか』玄光社
田中絵里菜(2021)『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』朝日出版社
キムヨンデ(桑畑優香 訳)(2020)『BTSを読む : なぜ世界を夢中にさせるのか』柏書房
下瀬直子(2019)『宝塚の美 : そこから生まれる韓流の美』青弓社
金成玟(2018)『K-POP : 新感覚のメディア』岩波書店
黄 仙惠(2022)「なぜ韓流文化は世界を席巻したのか?」『三田評論』(慶應義塾)1266号、
52-58ページ。
牧野 愛博(2021)「時代を読む 韓流文化が世界を席巻する理由 BTS活躍の裏に「移民」
と「競争」」『Aera = アエラ』(朝日新聞出版)34巻46号、32-34ページ。
呉 寅圭(2023)「K-POPの成功要因 : ポスト植民地企業のグローカル戦略」『一橋ビジネ
スレビュー』(一橋大学イノベーション研究センター)70巻4号、82-95ページ
権 容奭(2021)「K-POPアイドルBTSが世界を席巻する理由 : 韓国語の曲でビルボード
一位」『中央公論』(中央公論新社)135巻2号、130-137ページ
金 承福(2019)「鼎談 ヨン様ブームから16年 なぜいまK-文学、K-POP人気なのか」『中
央公論』(中央公論新社)133巻11号、76-85ページ
山本 浄邦(2019)「「日本におけるK-pop受容の歴史的背景に関する一考察─1980年代以
降東アジアの変化を中心として」」『コリア研究』(立命館大学コリア研究センター)9巻、
65-77ページ
JTB総合研究所「アウトバウンド 日本人海外旅行動向」
https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/outbound/
世界経済のネタ帳「韓国の貿易収支・貿易輸出入額の推移」
https://ecodb.net/country/KR/tt_mei.html
山本浄邦(2023)『K-POP現代史 : 韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』筑摩書房
黄仙惠(2023)『韓国コンテンツのグローバル戦略 : 韓流ドラマ・K-POP・ウェブトゥーンの未来地図』星海社
増淵敏之, 岡田幸信(2023)『韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか : ドラマから映画
K-POPまで知られざる最強戦略』徳間書店
菅野朋子(2022)『韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか』文藝春秋
野間秀樹(2022)『K-POP原論』ハザ
ユンソンミ(原田いず 訳)(2022)『BIGHIT : K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグ
ナル』ハーパーコリンズ・ジャパン
ホンソクキョン(桑畑優香 訳)(2021)『BTSオン・ザ・ロード : BTSはいかにK-POPを超え、世界の人たちを動かしたのか』玄光社
田中絵里菜(2021)『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』朝日出版社
キムヨンデ(桑畑優香 訳)(2020)『BTSを読む : なぜ世界を夢中にさせるのか』柏書房
下瀬直子(2019)『宝塚の美 : そこから生まれる韓流の美』青弓社
金成玟(2018)『K-POP : 新感覚のメディア』岩波書店
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と「競争」」『Aera = アエラ』(朝日新聞出版)34巻46号、32-34ページ。
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一位」『中央公論』(中央公論新社)135巻2号、130-137ページ
金 承福(2019)「鼎談 ヨン様ブームから16年 なぜいまK-文学、K-POP人気なのか」『中
央公論』(中央公論新社)133巻11号、76-85ページ
山本 浄邦(2019)「「日本におけるK-pop受容の歴史的背景に関する一考察─1980年代以
降東アジアの変化を中心として」」『コリア研究』(立命館大学コリア研究センター)9巻、
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JTB総合研究所「アウトバウンド 日本人海外旅行動向」
https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/outbound/
世界経済のネタ帳「韓国の貿易収支・貿易輸出入額の推移」
https://ecodb.net/country/KR/tt_mei.html