活動テーマ:新製品事業化における市場開拓の学習と利用シーンの開発
産学連携先:ヤマハ株式会社 新規事業開発部(NBDD)


 三好ゼミのキャリアゼミは,体験を通してビジネスマンの企業活動を学ぶことを目的としています.ヤマハ(株)新規事業開発部の協力を得て,新製品を事業化するプロセスを学ぶとともに,その活動に貢献することを目標に活動を展開してきました.本年度は,本プロジェクトの2年目であり, 前年度のプロジェクトを踏まえて,以下の活動に取り組みました.
 本プロジェクトでは,ヤマハ(株)新規事業部で,種々の利用シーンを開発しその事業化を進められている紙製平面軽量スピーカFlatoneTMの活用方法を学生目線で検討し,その成果を担当者に報告する活動に取り組んできました.特に,本年度はFlatoneTM の軽量性や薄型で場所をとらない特徴を活かして屋内施設の天井への配置を行い,それを利用した来場者誘導の可能性について実験を通して実証する活動を行いました.そして,定期的に活動の進捗状況を担当者への報告を行うとともに,2月28日—3月1日にヤマハ(株)本社新規事業開発部で,年間の報告を行いました.
 自らの意見やアイデアを簡潔に表現する能力や他者からの意見を理解しそれに応答する能力は,コミュニケーション能力の基本能力で企業人として求められる能力だと思いますが,これらの活動を通して学生の発表力の育成ができたのではないかと感じています.

学生活動状況報告

 三好ゼミの活動として,ヤマハ(株)にご提供いただいている平面スピーカ(flatone TM)を用いた避難誘導の可能性についての探求に取り組みました.今回は,1年間の活動報告のために初めてのヤマハ(株)本社に訪問させていただきました。
 まず,本社屋のミーティングルームで,ヤマハの現況の説明を受けた後に,企業の歴史,楽器,デジタルライブラリー,最新鋭設備などを展示している本社1階のイノベーションロードという展示場見学をさせていただきました.展示場では,特に、詳しく知らなかったYAMAHAの歴史を知りました。オルガンから始まり様々な音を作りだされてきた技術が世界に認められ、今では誰もが一度は耳にする「YAMAHA」というブランドが形成されてきた過程を知ることができました。
 その後、ミーティングルームでゼミ活動のプレゼンテーションを行いました。発表に入ると真剣な様相で聞き入る担当者を前して,三好ゼミ一同も真剣な表情になり,緊張感の中発表を終えました。その後のミーティングでは,企業の方の考え方を知る良い機会になりました.企業担当者の方の話の中に「昔から好きな事だからこそ仕事に出来ている」という言葉が印象的でした.内容的には,普段耳にしない音響に関する専門的内容が多数含まれており,スムーズなコミュニケーションには知識が必要であることを痛感しました.
 夜には鍋料理屋さんに連れて行っていただき、そこではプライベートな話をたくさんし、凄く楽しい時間でした。今回のような貴重な経験は今後にあるとは限らないし、忘れられない経験になりました。すぐには出ないであろう結果を長時間かけてコツコツと取り組んだ結果をまとめて,発表できたことは今後の自信につながったと感じています。

経営情報学部 西岡 由浩

 この度、ヤマハ本社にてゼミ活動で1年間取り組んできた「災害時の音響刺激を用いた積極的避難誘導に関する研究」について発表させていただきました。ヤマハ本社に訪問させていただくのは、昨年に続き2度めですが、去年訪問させていただいた建屋とは異なる建物での発表でした。その建物は、2018年度に竣工された新築の建物で,ミーティングルームもとても綺麗で魅力的なものでした。
 ゼミ活動として音源や発信条件を変えて音響刺激の走査方向を判定する実験を行い、その結果を集計し考察した成果をヤマハ本社で発表させていただきました。とても寒い中で実験をした体育館は忘れもしません。この実験を通してたくさんのことを学びました。何度も何度も同じような実験を繰り返す意味や収集したデータを統計的に処理する方法を学びました。特に,繰り返し回数のが多いために多数のデータを効率的に処理する方法が習得できたと感じています。
 私たちが取り組んだことは,音響刺激により避難誘導を行う際に、音響刺激の走査方向を認識できるかどうかという基礎的な実験でした.これらのことを確認するために様々な要因に関して実験を繰り返す必要があり,地道な作業が必要であることも理解できました.音響刺激で確実に避難誘導を実現するためには,私たちの学年ではやりきれなかったことが多数あります。次の代が引き継いでより実用性が出るように頑張って欲しいと思いました。企業と製品について考えるという普段はできない経験をさせていただいているのだと自覚し引き続き取り組んでいきたいと考えています。

経営情報学部 佐々木 健太

参加学生一覧

奥林 洋人、北村 健也、佐々木 健太、澤井 奎佑、柴田 昭人、竹山 晃弥、玉置 和杜、中村 良泰、西岡 由浩、松崎 海斗、井上 翔太、川本 信圭、杉田 光基、田下 大貴、時実 亨、中園 和希、橋本 実可子、丸 磨里子、由谷 未咲、吉岡 蓮、渡邉 開

ゼミ集合写真

連携団体担当者からのコメント

ヤマハ株式会社 研究開発統括部 研究開発企画部 技術企画グループ
川原 正順氏

 昨年度に続けて今年度も三好ゼミの皆さんを中心に、弊社のFlatone平面スピーカーを使った避難誘導場面での活用の可能性探求を継続して頂きました。その過程でFlatoneの特長を生かした用途の具体的なアイデアを得る事や、Flatoneの性能向上に必要な情報を得る事が出来ています。ありがとうございます。
 更に、学生さん自身で考案されたアイデアにも積極的に挑戦を頂いている事は、弊社にとって新たな研究テーマのヒントにも繋がる可能性もあり、感謝致しております。これからは避難誘導のみならず、他の分野での活用も意識した独創的なアイデア創造に視野を広げた活動も期待出来、私達はひとつの企業として、こういった教育現場での豊かな創造力育成に微力ながら貢献出来ている事を嬉しく思っております。

教員のコメント

経営情報学部 三好哲也教授

 三好ゼミでは、キャリアゼミを通して、学生の主体性、協調性、意見形成、傾聴力など社会人として必要な基礎的能力の養成を目指しています。これらの能力はチームとして活動する中で醸成されると考えて、企業との共同プロジェクトを計画しグループワークによって活動しています。幸いにも、本プロジェクトでは、ヤマハ(株)新規事業部の協力を得ることができ、取り組むべき課題も災害避難誘導という社会的にも重要な課題に対して検討できる機会であり、参加学生にとってもやりがいのある課題になっていると考えています。
 本プロジェクトでは、単にアイデアを報告するだけではなく、新製品の利用シーンを考案した上で、そのシーンで利用した場合にどの程度効果的なのかを実験などを通して実証することに取り組んでいます。そのために、種々の実験を繰り返いし行い、得られたデータの集計を行って、数量的な考察を行うことを目指しています。学生の物事に対する数量的思考力の養成も行えていると考えています。
 また、プロジェクト活動で取り組んだ課題をとりまとめ、定期的に協力企業の担当者に報告できる機会を設けていただいています。さらに年度末には2月28日から3月1日にかけて、ヤマハ本社の新社屋での、活動報告会を開催し学生たちが四苦八苦しながら発表させていただけたことは、年間活動の総括を報告できる機会を通して、学生自身が自ら得た能力や不足する能力を自省できる機会になっていると考えています。