阪南大学国際観光学部和泉ゼミは「地域・観光の創造(地域資源や人的ネットワークなどを活用しながら、地域づくりや観光振興のための新たなデザインプランを思考・提案し、地域の方々と共創的に実践する)」を研究テーマとしています。
 和泉ゼミでは、兵庫県養父市において、豊富な地域資源を観光資源として活用する観光地域づくりデザインを思考・実践し、コミュニティーベースの経済振興を生成しながら、地域基盤の強化や活性化を目指すという取り組みを養父市商工会と産学連携という形態で共創的に展開しています。
 この取り組みは、2015年度からスタートしたもので、2020年度からは、現3回ゼミ生14名が、「食」・「農」・「観光」をキーワードとする実践的な取り組みを進めていますが、2021年度は、ハチ高原において研究活動を展開しています。
 ハチ高原は、鉢伏山中腹に広がる標高800m前後の高原でスキー場として広く知られています。また、林間学校や合宿先としても著名で、多くの教育機関がこの地の豊かな自然環境の中で学んでいます。このような学びの展開、すなわち、これまでハチ高原のみなさんが懸命に築いてこられた「高原教育」(注1))は、単なる「教育アクティビティ」の展開ではなく、「子供たちの成長を見据えた教育プログラム」の展開であり、ハチ高原のみなさんの「強み・誇り」であると考えられます。そして、これからも伝え、大切にしなければならない宝物であるとも考えられます。
 しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大による観光を取り巻く環境の一変、新学習指導要領の改正によるスキー実習の見直し、暖冬傾向による雪不足などから勘案すれば、これまで通りの展開を継続するだけでは、10年・20年先、現状を維持することは少し困難ではないかと想像されます。このような状況下、ハチ高原のみなさんの得意な「高原教育」をベースにしながら、無理のない、可能な範囲で、新たな取り組みを思考・実践することを考えてみても良いのではないかと考えるところです。
 昭和36年、この地の美しさに感嘆した当時の県知事であった阪本勝氏は「辺地の秋 鉢伏の山々」と題して、この地の開発計画について神戸新聞に綴りました。この記事中には「在来のハチブセ山の観念を脱却せよ」との文章が見られます。もちろん、脱却というつもりは毛頭ありませんが、「これまでの高原教育+可能な範囲での新たな取り組み」というイメージで少し新しい風を取り入れる必要があるのではないか、そして、現在、このことを検討するタイミングではないかと考えるところです。
 このような思考を養父市商工会と共有しながら、ハチ高原観光協会のご理解のもと、新たな取り組みにつながるような提案をまとめるべく、ハチ高原において研究活動を展開していきたいと考えています。
 2021年10月14日、第1回目となるフィールドワークを行いました。ハチ高原観光協会の田中会長や田渕さん、「ホテルプラトーこのはな」の田渕さん、鉢伏開発観光株式会社の西坂さん、養父市商工会の三木課長、谷垣さんなど、多くの方々にお世話になりました。ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

注1)「高原教育」は、現地調査などを通じて得た自身の印象による語です。

お世話になったハチ高原のみなさん。ありがとうございました。

プログラムの体験場所や施設、高原などを見学させていただきました。

  • 標高1,510m。兵庫県で一番高い山「氷ノ山」も頭を出してくれました。

  • 美しい夕刻の高原。思わずみんなで言いました。「今晩、高原に泊まりたいね・・・」