文化財を活かした観光振興・地域づくりをテーマに研究活動に取り組む和泉研究室が、
貝塚寺内町の観光まちづくりイベント「春の町屋の雛めぐり」に参加・協力しました。

 国際観光学部和泉ゼミでは、大阪府貝塚市に所在する貝塚寺内町の観光まちづくりに参加・協力しています。
 寺内町とは、中世に寺院を中心として形成された宗教都市です。貝塚寺内町は室町時代末期に貝塚御坊願泉寺を中心に成立した寺内町で、天正5年(1577)に一揆勢力の拠点地であったため織田信長の攻撃を受けました。その後、天正11年(1583)から2年間は浄土真宗本山の本願寺がおかれました。願泉寺住職の卜半家(ぼくはんけ)が領主であった近世には、商工業が発展しました。
 現在、貝塚寺内町には当時のまちわりとともに、江戸時代後期から昭和にかけての所産である町屋が20数軒存在しますが、そのうち13軒は国登録有形文化財の指定を受けています。
 今回、和泉ゼミでは3月15日(土)・16日(日)・22日(土)・23日(日)の4日間、国登録有形文化財である「寺田家住宅」(昭和11年他)、「南川家住宅」(明治、昭和初期)、「名加家住宅」(18世紀中頃〜後期他)の3件の町屋を活用して、雛人形などを公開する観光まちづくりにスタッフとして参加・協力しました。ゼミ生は和泉ゼミの研究活動のテーマである「文化財を活かした観光振興・地域づくり」を顕著に意識し、スタッフとして運営にあたる中、地域や自治体の方々、参加者のみなさんとの触れ合いなどを通じて多くのことを学ばせていただきました。まさに「実学教育」です。
 貝塚寺内町における「町屋の雛めぐり」は今年で12回目を数えますが、今年はじめて、16日(日)に「夜の雛めぐりとお茶会」を開催、ゼミ生が寺田家住宅の日本庭園のライトアップを演出しました。参加者の方々から「素敵なひとときをありがとう」と感謝の言葉をいただきました。また、藤原龍男貝塚市長からもあたたかい言葉をかけていただきました。

世代を超えたコミュニケーションに感銘を受けました
国際観光学部 村田真菜

 今回、私は貝塚観光まちづくりイベントに参加させていただきました。このまちづくりイベントは、国登録有形文化財の指定を受ける「寺田家住宅」や「南川家住宅」などの普段はあまり見学することができない地域の文化財を公開しながら、地域に残る古い雛人形なども合わせて公開するという内容のもので、見学者の案内などのお手伝いをさせていただきました。
 まず、事前に文化財の所有者で、地域の活性化のために熱心に活動をしておられる南川さんにまちづくりイベントの趣旨や個々の文化財についてレクチャーを受けました。実際に見学者のみなさんに自身で案内・説明をしなければならないので、やや緊張してレクチャーを受けました。他者に何かを説明する、教えるということは自身にとって最大の学びではないかと感じました。
 実際にまちづくりイベントがスタートすると、様々な年代の人たちが見学に訪れていました。特に印象に残っているのは、おばあちゃんがお孫さんを連れて見学されていた光景です。世代を超えて楽しいひとときを過ごされているやわらかな光景は何とも言えず今もはっきりと思い出すことができます。地域の文化財の活用の意味が少しだけわかったような気になりました。また、見学者のみなさんは、普段は見ることのできない町屋や庭園、茶室など雛人形などを見学することができ、満足されていたように感じました。しかし、私自身、上手く案内・説明できたとは言い難く、課題が多く残るものでした。
 私は京都に住んでいますが、京都にも町家がたくさんあります。外観はそのままで室内を改装し、お店屋さんや旅館、レストラン、カフェとして利用されている町屋を多く見かけます。これら町屋の活用は昔ながらの町家の景観を残し、利用することで多くの観光客が訪れているようです。私の文化財活用のイメージは観光的収入などが強いものでしたが、今回、貝塚寺内町における観光まちづくりにスタッフとして参加させていただきましたが、先に記したように世代を超えたつながりなど、地域の文化財が人のつながりを生じさせているということを身をもって学ぶことができました。様々な方法で町家などの地域の文化財を活用し、一般に公開することは、とても意味のあることだと感じました。
 実際に貝塚寺内町のまちづくりイベントにおける、地域の方々や見学者の方々との交流を通じて、自分自身、少し考え方に変化が生じたと思います。また、ぜひ、このようなまちづくりイベントがあれば積極的に参加していきたいと思いました。私が普段、興味を持って活動している範囲はまだまだ狭いので、ゼミの研究活動を通して様々なことに取り組み、視野を広げていきたいと思います。

地域での学びの大切さを知りました
国際観光学部 中辻翔子

 今回、私たち和泉ゼミは大阪府の泉州地域に位置する貝塚市で実施されている観光まちづくりイベントに参加させていただきました。貝塚市には寺内町と呼ばれる中世に成立した宗教都市があり、その地域には昭和初期などの古い町屋が多く残っており、歴史的な景観を留めています。私が参加させていただいた観光まちづくりイベントは、この寺内町で実施されたもので、私はイベント最終日の23日に参加させていただきました。文化財の知識はありませんでしたが、何とか地域と見学に来られた方々とのかけ橋のような役割になれればという想いをもって参加しました。
 貝塚に到着し、私たちは今回の会場となる、「寺田家住宅」や「南川家住宅」などの町屋に関する説明を受けました。説明してくださった南川さんの話ぶりから、本当に地域の事が好きで地域のために活動されているという印象を受けました。私たちは3チームに分かれて2時間交代で3つの会場を輪番するというシフトでの参加となりました。
 最初に担当となったのは「寺田家住宅」でした。「寺田家住宅」は、昭和11年の年代が与えられる主屋を中心に、平成23年7月25日に登録有形文化財に登録された建造物で、外観を洋風にした木造住宅です。住宅の応接室の部分にはアーチ形のステンドグラス窓が設けられていますが、この場所で立ち止まって見学されている方々が多かったことを記憶しています。昭和11年という段階でこのような和洋折衷な構造様式をもつ住宅がどれほどきらびやかであったのかが想像されます。見学されていた多くの方々も同じように当時に想いを馳せていたのではないでしょうか。
 また、中学生の友人同士で見学に訪れていた方々とお話する機会がありましたが、とても印象的でした。話を聞いていると、以前にお母さんと訪問したことがあり、今回はお母さんがチケットを用意してくれたので友人と来たそうです。女性スタッフの方が、最近は年配のお客様が多いと仰っていたので、若いお客様が来られたのには少し驚きました。
 以上のように、見学に来られた方々や地域の方々と話す機会に恵まれましたが、このような経験は大学内での講義では得ることのできない時間でした。もちろん、学問における理論的学習の重要性は言うまでもありませんが、このような現場における学びの重要性についても理解できましたし、ゼミにおける学びの中心を地域に求める和泉ゼミでの研究活動にあらためて興味を覚えました。
 今回の観光まちづくりイベントの参加を通して、様々な意味で良い刺激を受けることができました。これからのゼミの研究活動においては、ぜひ企画段階から携わり、課題・問題などをゼミ内で議論しながら、観光振興や地域づくりに還元していくというプロセスのなかで多くの事を学びたいという気持ちになりました。

「地域の情報をいかに発信するか」という課題を見つけました
国際観光学部 奥井美咲

 私は、3月4日(火)、15日(土)、16日(日)の3日間、大阪府貝塚市に所在する貝塚寺内町において実施された観光まちづくりイベントのスタッフとして参加させていただきました。4日(火)に私はゼミを代表するかたちで事前に下見に伺いました。その際、貝塚御坊願泉寺を中心に発達した貝塚寺内町を実際に歩いてみると、数多くの伝統的様式の町家や、環濠跡が残されており、少し大げさかもしれませんがタイムスリップしたような感じがしました。
 この日は観光まちづくり活動の中心である南川さんと待ち合わせて地域のお話を伺いながら、16日(日)に行われる「夜の雛めぐりとお茶会」において、登録有形文化財「寺田家住宅」の庭園をライトアップする予定がありましたので、ライトアップする灯(蝋燭を水面に浮かべたもののまわりに和紙を巻きました)や飾り物の配置を決めさせていただきました。夕方、少し明るいうちから準備をはじめたのですが、なかなかイメージがわかず悪戦苦闘しました。しかし、あたりがすこし暗くなり始めたころ、個々の灯が自分の居場所を主張しはじめ、配置に対するイメージが徐々にわいてきました。しかし、文化財指定を受ける建造物に面した庭園の良さを壊さないで、見学される方々に良い印象を与えることができるのかどうか少し不安を感じました。
 16日(日)、ライトアップの当日、19時頃から準備をはじめました。配置した灯に火を灯してまわりました。灯の火はぼんやりとしていて、趣のあるものでした。見学に来られた方々が「きれいやね」と言ってくれたときは本当に嬉しく思いました。自分たちの力でもってどなたかの心を動かすという行為を成し遂げることができた際の喜びは、想像以上に良いものでした。
 また、お昼間は、私は受付・案内係をさせていただきました。来られた方々は、お年寄りの方や、小さなお子様がいる家族連れの方というふうに年齢層が様々だったように思いました。また来られる方々は、近隣の方ばかりだと思っていましたが、人形に関心があり、各地の人形を展示しているイベントをめぐっているという遠方から来られた方もおられました。案内係と言っても、道順くらいの案内だったので、難しい質問をされた時は少し困ってしまいました。逆に見学に来られた方々のほうが詳しく知っていらっしゃる方が多く、多くの事を教えていただきました。
 私は貝塚に祖父母の家があり、小さい頃からよく訪れていましたが、寺内町に登録有形文化財に登録されている町家が数多くあることは初めて知りました。おそらく、私のように貝塚市にはよく来るのだけれど町屋のことをあまり知らないという方々がいると思いますので、今後、どのような情報発信が有効なのかを検討することも課題の1つではないかと思いました。このことについてはゼミの時間に課題提案していきたいと考えています。今後も何度か和泉ゼミの研究活動でこの地を訪れると思いますが、地域の方々とのコミュニケーションを大切にして、多くの事を学んでいきたいと思いました。

※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。
  • 会場の1つ 国登録有形文化財「寺田家住宅」 

  • ライトアップの準備

  • 地域の方にお茶の作法も教えていただきました

  • 見学者の方々に説明