【松ゼミWalker vol.119】大阪市福島区の街歩きツアー実施計画が始動!!

大阪市福島区へインバウンド客を!! (レポーター:3回生 池田千紘)

 2013年5月16日(木)午後,いつも通りの松村ゼミに,大阪商工会議所からの来客がありました。来られたのは,大阪商工会議所北支部の友田裕之さんと岡辺龍彦さん。友田さんと松村ゼミは,かつて作成した「新世界・西成 食べ歩きMAP」で協働した間柄です。
 新今宮TICを運営する松村ゼミでは,毎年数回,外国人向けの街歩きツアーを実施してきました。このツアーの一環で,「大阪市福島区界隈を対象地域として,街歩きツアーを企画していただけないか」,と友田さんから松村先生へ何度か打診があったそうで,「ではゼミにお越しいただき,みんなに事情をご説明していただこう」となった次第です。
 ゼミでは,友田さんより,福島街歩きツアー実現への想い,福島区内の観光・地域資源などについてご説明いただきました。友田さんのご説明によると,福島にはわかりやすい観光資源は無いが,とても面白い街で,梅田からも新今宮からもアクセスが良い。だからベタな観光ではなく,体験・交流型の街歩きツアーが企画されれば,外国人にも受けるのではないか。梅田近くに宿泊されている外国人個人客も多いので,その人たちが福島に来るような仕掛けができればいい,とのことでした。友田さんが紹介された福島の資源は,福島聖天通商店街(売れても占い商店街),月亭八方師匠の寄席「八聖亭」,中央卸売市場,古い街並みなどでした。

 その後,色々とみんなで議論しました。例えば,「占い」は面白い企画で,アジアの女性向きかもしれないが,微妙な言葉の問題があり,動きも少なく,大人数で占いを聞いて楽しいのかという疑問も残り,なかなか外国人向けとしては難しいのではないか,という感じで議論が進みました。落語も言葉の壁があるのでやはり難しいのではないか。松村先生からは,阪南大学OBの桂あさ吉さん,林家染太さんならば英語落語もできる,との情報提供がありました。しかし,非英語圏の方も参加されるので,英語落語でも理解していただけないのではないか,との懸念が残りました。
 商店街にある住居一体型の日本的な店舗で,何か面白い体験ができるようなお店はないのか,という話はかなり盛り上がりました。例えば,食品を製造しながら販売しているような,豆腐屋さん,天ぷら屋さん,魚屋さんなどで,店で簡単な調理や作業を体験させてもらい,その出来立てを食べられるようなお店があれば,外国人にも受けるのでは,という松村ゼミらしい発想でした。友田さんは,いくつかそのような店舗の心当たりがある,とおっしゃっていました。
 それとやはり,大阪市中央卸売市場の見学は欠かせないであろう,とも話し合われました。ただし,マグロのセリなどは,早朝5時くらいまでには終わるそうで,どうツアーに組み込むのか,やはり課題が多いこともわかりました。

やっぱり下見せな,何にも始まらん?! (レポーター:3回生 橋田翔子)

 友田さんのご説明で,福島の地域事情はわかったのですが,松村先生からは,「やっぱり,一度,外国人目線で下見に行かな,話が始まらんなあ」とのご指摘がありました。
 松村ゼミでは,この福島街歩きツアーとは関係なく,2013年6月2日(日)をフィールドワークの日と決め,ゼミ3,4回生は日程を確保していました。この日は,国際観光学部の新入生も参加することになっており,松村先生とゼミ3,4回生が新入生の指導にあたる予定でした。松村先生のご提案から,6月2日に3回生を中心として,福島の下見に行くチームを作ることが決まりました。

 友田さんも下見に同行していただくことになったのですが,松村先生はやはり新入生の指導にあたりたいとのことで,福島には来られないことに。やはり松村先生が来られないと不安…,との声がゼミ生からあがりました。
 不安の声を聞いた松村先生は,「大学院時代の仲間で,福島の街歩きの専門家がおるから,日程が空いているか聞いてみるわ…」と電話をおかけになりました。「福島の街歩きの専門家」って,そんなローカル限定の専門家が本当にいらっしゃるのか,とその時は思いました。「久しぶりやなあ,突然で悪いねんけど,…」で始まった携帯電話での会話が数分続き,「濱ちゃん,OKや」とのこと。電話の相手は,「OSAKA旅めがね」で,福島区野田界隈の街歩き案内人(エリアクルー)を務める濱名研さん(http://tabimegane.com/area-crew/crew_hamana.html参照)でした。
 松村先生によると,「福島界隈のことなら絶対に私よりも濱ちゃんの方が詳しい」そうで,「濱ちゃんは,学年は後輩やけど大学院で同級生になった」そうです。後日の街歩き当日,濱名さんから伺ったのですが,「松村さんからのあの時の電話は10数年ぶり」で,松村先生は「大学研究室の名簿のトップにずっと名前は載っているが,海外を放浪していて大学に来なかったため,誰もその姿を見たことがない…,そういう意味で『伝説の先輩』」だったそうです。

 さて,下見に際して,松村先生からは,濱名さんが色々と地域ネタを紹介してくれるから,私たちは訪日外国人旅行者の目線から,興味を持ちそうなネタ,使えそうなネタをしっかりと見極めてくるように,という指示を受けました。写真は6月2日に実施した下見の様子です。
 そして,最後に,今後の福島街歩きツアーの担当や大まかな日程を話し合いました。福島街歩きツアーの企画実施に関しては,3回生の橋田翔子と池田千紘の2名が担当することになりました。今後の日程としては,ツアー実施時期は梅雨時を避け,9月以降に1回行い,その後は課題を整理しツアープログラムを修正する時間を少しとり,来年に入ってから2回目を実施することになりました。
 ゼミの最後に,5月16日が事実上の福島街歩きツアーのキックオフとなったので,みんなで成功を祈念して記念撮影を行いました。

福島街歩きの下見の前半 (レポーター:3回生 キムテギョン)

 2013年6月2日(日),朝から少し雨が降り出したものの,昼前には快晴。松村ゼミの3,4回生たちは,12時に新今宮TICへ続々と集まりました。途中からは新入生1回生も集まり始めたので,新今宮TICは人で一杯になったため,より広いホテルセレーネのロビーへ移動しました。
 最初,福島街歩きの下見に行く予定だったのは,橋田翔子(3),池田千紘(3),山中彩帆里(3)の3名だけでした。ところが,下見の当日,松村先生が「もう少し多くのメンバーで行った方が良いのでは…」,とおっしゃり,急な話ですが,メンバーを増やすことになりました。私もメンバーに加わり,袁麗萍(3),山下喜央(3),弘田愛美(3),大宅和佳(4)も加わり,学生メンバーは全員で8名となりました。
 私たちは,ホテルセレーネのロビーで,誰がどの部分のレポートを書くのかなど,色々な役割分担を相談しながら決め,13時にそこを出発しました。JR新今宮駅から大和路快速に乗り,JR福島駅に着いたのは13時20分過ぎ。大阪商工会議所の友田裕之さん,松村先生の友人の濱田研さんとの集合は13時30分。JR福島駅の改札口で,無事お二人と合流できました。お二人と挨拶・名刺交換を済ますと,濱名さんから私たちへ地図が配られ,この日街歩きするルートを簡単にご説明していただきました。

 最初に訪れたのは,「売れても占い商店街」のキャッチコピーで知られる福島聖天通商店街。濱名さんの説明によると,聖天通商店街は戦前,大阪四代商店会のうちの一つに数えられたそうです。この日は日曜日で,この商店街は日曜日定休のお店が多く,残念ながら,閉まっているお店ばかりでした。占い商店街のイメージで売り出しているのですが,4軒ある占い屋のうち,現在実際に稼働しているのは2軒だけだそうです。
 商店街の途中に「なかよし畑 なにわの伝統野菜ミュージアム」という場所があり,毎週月曜日から金曜日の10時から14時半まで開放されています。ここは上福島小学校の畑で,色々な種類の大阪に昔からあった野菜ばかりを育てているそうです。「うれてもうらないもん」というキャッチフレーズも,この場合の「うれて」は「熟れて」と説明を受け,「なるほどなあ」と思いました。
 13時40分頃,外国人バックパッカー向けのゲストハウスとして有名なジェイホッパーズJ-Hoppersを訪問しました。案内人の濱田さんが事前にアポイントメントをとり,宿泊事情などをお話してください,とお願いされていたとのことで,コミュニティ・スペースへあげていただき,色々とお話を伺いました。

 宿代はドミトリーで2,500円,ツインは3,000円。シングルルームはなく,定員は21名。宿泊客はオーストラリア人が最も多く,インドネシア,マレーシアからのお客が最近増えている,利用者のほとんどはインターネットで予約,たまに電話で予約する人もいる,とのことでした。スタッフ6名で運営していて,全員英語はOK,スペイン語のできるスタッフもいるそうです。
 宿泊客の行き先についてお尋ねしたところ,欧米系の旅行者は特に目的地を決めていない方が多く,アジア系の旅行者はきっちりと予定を立てていることが多い,という興味深いお話を伺えました。新今宮TICでの経験豊富な大宅先輩によると,「新今宮でも全く同じ」とのことでした。J-Hoppersの従業員の説明によると,福島区の中央卸売市場は,その存在自体が外国人旅行者にあまり知られていないため,行きたいという方も少ないそうです。

福島街歩きの下見の後半 (レポーター:3回生 袁麗萍)

 J-Hoppersで30分ほど話を伺い,私たちは福島聖天了徳院というお寺へ向かいました。このお寺の入り口にはなぜか鳥居があり,境内には色々な国々の色々な神様が奉られていました。また,境内には,持ち上げる時に軽く感じたら願いが叶うという「おもかるさん」という石,松尾芭蕉の句碑などもありました。
 了徳院を出て,ミコタ通り商店街へ行き,昭和初期に建てられた長屋の残る古い街並みを見て回りました。
 その後,東西線新福島駅の近くにある福島天満宮へ向かい,さらに南へ歩いて,下福島公園に着きました。この公園は藤の名所で,かつて徳川家康もここの藤を見に来たことがあるとのことでした。この公園は明治20年代に設立された紡績工場の跡地で,公園周辺に紡績工場のレンガの壁がまだ残っていました。藤は福島区の花に指定されていて,この後に訪れた春日神社も野田藤の名所でした。

 ここからさらに南へ歩き,昭和6年に創設されたという中央卸売市場へ着きました。ところが残念なことに,こちらも日曜午後ということで,市場内のお店は全てシャッターがおりていて,魚の匂いは漂うものの,人とも魚とも出会えませんでした。濱名さんによると,マグロの競りは早朝の3時から4時くらいでないと見られないそうです。
 16時過ぎ,野田小学校の近くにある「ななとこ庵」を訪れました。NPO法人樹(いつき)が運営するななとこ庵は,古い民家を改築して2010年8月にオープンした施設で,もともとは認知症の方々の生活支援を行うところでした。現在では,その事業を継続しつつ,地域とのつながりのなかで認知症への理解を深めたいとの想いから,誰もが立ち寄り交流できる施設を目指されています。
 濱名さんによると,街歩きツアーをする際,休憩所として利用させてもらったら,古い町家の雰囲気も味わえるからいいのではないか,とのことでした。ななとこ庵のサロン部屋兼喫茶店は,年中無休で16名ほど収容でき,緑茶・昆布茶・梅茶・ココア・コーヒーなどの飲み物を全て150円で提供していて,お代わりしても無料だそうです。

 ななとこ庵で「ななとこまいり」の話を聞きました。ななとこまいりとは,野田地域にある11体のお地蔵さんのうちの7つの地蔵さんを巡ると願いごとが叶うというものです。
 いくつかの地蔵さんを探しながら,私たちはJR野田駅へと向かいました。野田駅近くの畳屋さんの前で解散,時計を見ると17時10分でした。案内人の濱名さんと友田さんにお礼を言ってお別れし,私たちは新世界へ向かい,松村先生らのグループと合流しました。
 街歩きの下見を終えてのみんなの感想は,日本人の高齢者を案内するならば,見どころはたくさんあるけれども,訪日外国人旅行者を対象とするならば,よほどの工夫がないと,街歩きツアーは成り立たないのではないか,というものでした。下見したのが日曜の午後,商店街のお店や中央卸売市場が休業状態だったのも計算外でした。
 訪日外国人旅行者を対象として,古い街並みや商店街を見て歩き回るのは,やはり無理があります。それなら,新今宮からならば,平野郷や新世界界隈の方が近いし面白い。福島の街歩きの中心に据えるべきは,やはり中央卸売市場であり,市場や大阪の食との関係のなかで街を見せるような,体験交流型のツアーを組まなければ,おそらく成功しないであろう,などと話し合いました。

松村先生からのひと言

 街歩きツアーを成功させるコツは,街歩きにお連れする人の興味や関心,経験や知識を,冷静に見極めることです。例えばミナミを誰かと歩いて語るにしても,大阪人の場合,関東から来た若者の場合,地方から来た高齢者の場合,訪日経験豊富な韓国人の場合,初めてヨーロッパから訪日したフランス人の場合,相手によって語りを変えなければ,絶対に相手を満足させられません。ましてや,私たちの街歩きツアーには,色々な国からの参加者が混在するので,街をどのように見せるのか,とても難しい判断に迫られます。
 今回の福島の下見では,旧友の濱名君にとてもお世話になり,色々と地域資源をご紹介いただきました。それらをどう組み合わせて,どう見せれば,参加した外国人が楽しめるのか,その点だけをしっかりとイメージしながら,ツアーを組みにかかりましょう。
 松村ゼミの掲げる街歩きツアーのコンセプトは,「ありふれた日常」と「ささやかな非日常」を見せる,です。私たちが当たり前だと思っている風景や体験のなかには,ダイヤモンドの原石のような資源が埋もれています。それを発見し,磨き,観光資源化すれば,必ず街歩きツアーは成り立つはず…。
 私たちは新今宮TICで活動してきたので,普段から新今宮を拠点にものを考える癖がついています。今回の福島街歩きツアー,福島のJ-Hoppersや梅田・中之島のホテルを起点に考えれば,色々と発想が広がるのではないでしょうか。