【松ゼミWalker vol.184】 西成Wall Art Nipponの作業日誌(教員 松村嘉久)

 2015年9月14日(月)から始まった西成Wall Art Nippon(西成WAN)の第二弾「アセラズ クサラズ アキラメズ」制作は、10日間にわたる作業を経て、9月24日(木)夕方に完成披露会を迎えました。西成WANには、4回生の栃原智美のほか、3回生の辻勇之介・浜野文菜、2回生の三宅亜紗未・徳田成美・大嶋千波ら、のべで50名近いゼミ生らが参加して、現場作業を支えました。現場責任者の私は当然、毎日通い続けました。今回の松ゼミWalkerでは、日々の簡単な作業日誌を残しておきたいと思います。

9月14日(月):壁面の高圧洗浄ほか

 この日参加したゼミ生は、栃原智美(4)、辻勇之介・浜野文菜(3)、三宅亜紗未・辻彩佳・大嶋千波・徳田成美・村野実・三宅将生(2)の9名でした。4回生は就職活動ほかで余裕がなく、3回生もインターンシップや国内実習などで集まりが悪いなか、なんばパークスのイベントでデビューした2回生たちが、早々と大活躍してくれました。「今年の2回生は積極的で反応が良く頼もしい」、と喜んでいます。
 作業は10時頃からボチボチと始まりました。高所作業車に乗っての壁面高圧洗浄はプロが担当、昼過ぎにはほぼ洗浄を終了してくれました。本来なら今日の作業はここで終わりだったのですが、天気がとても良く日差しが強かったので、壁面は予想以上に早く乾き、昼から白ペンキを塗っても問題ないとのこと。
 白ペンキ塗りは「素人でもできるだろう」とのことだったので、ゼミ生たちにも手伝ってもらい、できる範囲で一挙に進めることにしました。最初、プロの職人さんから、ローラーでの塗り方を簡単に教えていただき、アーティストたちも一緒に並んで、ローラーの届く範囲を塗りつぶして行きました。
 これが思いのほか、爽快で楽しい作業でした。その途中、SHINGO★西成さんが激励に来てくださり、一緒にペンキ塗りを手伝ってもらいました。人数が多かったので、疲れたら交代しながら、2時間ほどで壁面下部の白塗りは終了。初日はみんな気合が入っていたこともあってか、予想以上に作業が進み、17時頃に全ての作業を終了しました。

9月15日(火):高所の白ペンキ塗り

 15日は本来、作業予備日だったのですが、前日の作業が進展したので、急遽集まれる者だけでも集まって、作業を行うことになりました。この日、学生は栃原智美(4)、辻勇之介(3)、葛井健斗(流通学部1)の3名が集まり、アーティストとアーティストたちを慕う支援者も集まってくれました。
 流通学部1回生の葛井健斗君は、スケートボードやグラフィティが大好きで、松村ゼミが西成WANを支えると聞いて、「ぜひ僕も参加させてください」と何度も私にメールして来て、事前の実行委員会にも出席してくれました。
 葛井君は西成WANに参加するためなら、「バイトなんかやってる場合やないですよ、休ませてもらえなかったら、バイトやめます」という気合の入りかた。作業初日から来たかったそうですが、私が連絡するのを忘れていて、「Facebookを見て作業が始まったのを知り、今日は朝から西成へ来て、ずっと作業現場を探してまわった」そうです。
 今回参加のアーティストは、CASPERさんとONEVERYさん。グラフィティの世界でこのお二人はとても有名で、葛井君は「このプロジェクトに加わらせていただくだけで光栄です。」と言っていました。お二人を慕って、作業を手伝いに来てくれた若いアーティストも多く、その影響力の大きさに驚いています。
 15日は高所作業車が来ない日だったので、ローリングタワーという移動可能な足場か、脚立に乗って、手の届く範囲だけでも白ペンキを塗り進めよう、と作業を進めました。天気予報では明日から雨の日が二日続くとのこと。雨が激しく降れば、白ペンキ塗りもスプレーでも作業もできません。少しでもアーティストの負担を減らせるよう、制作が順調に進むよう、晴れている間に頑張ろうと、みんな必死の一日でした。

9月16日(水):引き続きての白ペンキ塗り

 16日の天気は曇りで時々雨が降る状態が続きました。朝10時、みんなが現場へ集まった頃、現場の道路は雨で濡れていましたが、幸いにも雨の勢いが弱く、壁面は全く濡れていませんでした。16日は高所作業車が2台入るので、この日に高所での下塗り作業を進めておかないと、後でアーティストが描く時間が減ってしまいます。
 作業開始前、全員が集まり簡単なミーティング。グラフィティ現場の経験が豊富な協賛企業CALMAARTの柳洋輔さんのご意見は、「壁は濡れてないから大丈夫、やるしかないでしょう」とのこと。少し風邪気味だった私も、「雨やからってひるんだらアカン、ボチボチでええから、できることをやっていこう」と指示しました。
 集まった学生は、栃原智美(4)、辻勇之介(3)、三宅亜紗未・辻彩佳・大嶋千波・徳田成美・村野実・三宅将生(2)、葛井健斗(流通学部1)の9名。作業は高所作業車2台とローリングタワー1台を使って、壁面上部の白ペンキ塗り。経験のない学生にはできない作業だったので、学生たちは白ペンキの準備や交通整理など、裏方として作業を支援しました。降ったりやんだりしていた雨も、昼からはほぼやみ、作業も順調に進みました。

 15時半頃、SHINGO★西成さんがまた激励の来てくださいました。今回の西成WANで私は8個の作業用ヘルメットを購入、そのヘルメットにSHINGOさんから、安全祈願と魔除けを兼ねてサインをもらいました。このヘルメットを学生は欲しがっていました…。活躍した学生や関係者に贈呈するか、もしかしたらネットで売れるかも…。
 白ペンキで塗り始めてから、作業を手伝うみんなが、「ほんまに巨大やなあ、途方に暮れるわ」とその壁面の大きさを実感して来ました。しかしながら、少しずつでも塗りつぶしていけば、いつか必ず終わりは来ます。とうとう、高さ7m、横幅70mの巨大な壁面が、真っ白になる瞬間がやってきました。
 SHINGOさんは「ちょっと待ってえな、写真撮らせて」と車道へ出てスマホ撮影へ。ローリングタワーに乗った仲間が、「塗りますよ」と合図して、わずかに残った灰色の壁面を白く塗りつぶすと、歩道橋で見ていた仲間やギャラリーから、歓声と拍手が沸き起こりました。16日15時50分頃のことでした。

 雨のなかみんなで力を合わせて頑張った結果、巨大な壁面の全てを白く塗り終え、日暮れまでにはまだ時間が…。
 すると、アーティストの二人が、みんなの頑張りの応えるかのよう、高所作業車に乗って、本番のグラフィティを描き始めました。「明日はこどもらがワークショップに来るんですよね。それやったら、仕上がりのイメージが少しでもつかめるよう、描き始めといた方がいいでしょう。」とCASPERさん。「せっかく高所作業車が来ているんで、高いところの背景だけでも描き始めますわ。」とONEVERYさん。二人とも西成WANの第一弾から、日々の実行委員会も含めて参加してくれている仲間です。
 グラフィティを描き始めると、二人のアーティストの集中力は半端ではありません。日暮れまでのわずか1時間ほどでしたが、私たちはアーティストが描く様子をギャラリーとして楽しみました。

9月17日(木):こどもたちとのワークショップ

 17日も昨日に引き続き、雨模様の曇りでした。この日はこどもとのワークショップがあり、危険を避けるため、高所作業車はお休み。西成WANの第一弾は今年の1月17日だったので、こどもたちとはちょうど8ヶ月ぶりの再会となります。
作業は10時集合で始まりました。集まった学生は、栃原智美・中井美菜子(4)、辻勇之介・浜野文菜(3)、三宅亜紗未・辻彩佳・大嶋千波・徳田成美・三宅将生(2)、葛井健斗(流通学部1)の10名でした。
 こどもたちが来るのは16時30分くらい、それまでの間に、こどもたちが壁画をイメージし易いよう、壁画を描き進める一方で、私たちはこどもたちに作業してもらう準備を整えることになりました。
 CASPERさんは、こどもたちへのメッセージの一部「キレイに」を、独特の書体で下書き。ONEVERYさんは、壁画の背景となる下絵を描き続け、その一部を塗りつぶさずに残しておいてくれました。いずれも、こどもたちが描きやすい場所を選び、スプレーの色も決めて並べておきました。
 さて、こどもたちは学校が終わった後、今池こどもの家へいったん集まり、そこから西成WANの現場へ向かう予定になっていました。人数はおおよそ10数名くらい、こどもの家の指導員の多賀井潤一郎先生が引率して来られるという段取りになっていました。16時前になると、まず報道関係者の方々が集まり出し、テレビカメラも何台か来て、SHINGO★西成さんもいたので、「何が起こるの」とギャラリーが集まり始めました。
 幸いなことに、16時過ぎから雨もやみ、かすかに日差しも見えました。そこで私はゼミ生やスタッフらを集め、個別に細かい指示が出しました。交通整理、こどもの誘導と指導、メディア対応などなど。今池こどもの家には、過去のワークショップにも参加経験のある3回生の浜野さんと辻君を迎えに行かせました。
 ところが、この二人からなかなか連絡が入らない…。予定通りなのか変更ありなのか…。辻君に電話して、逐一、連絡・報告を入れるよう指導。辻君によると、15分遅れの16時30分に10名くらいが、今池こどもの家の多賀井潤一郎先生の引率でこちらへ向かうとのこと。

 ところが、16時30分を越えても、辻君から出発したとの報告が入らない…、電話してもとらない…。そうこうするうち、私にしてみれば「突然」、こどもたちが現場へ到着しました。辻君には後々、「何のために向うへ行ってんねん。出発したらしたで、いま何人で出発しました、とすぐ報告せえ。連携とられへんやん。」と少し厳しく指導しました。こうした経験の積み重ねから、色々なことを意識して行動できるようになります。
 決してこれは「失敗」ではありません。「できなかったこと」が意識することで、「できるようになる」だけのことですが、それが成長過程にある学生たちにとって、とても重要なのです。
 こどもたちは16時45分頃、壁画前へ到着。その場で二つのグループに分かれて、アーティストらの指導のもと壁画制作を行いました。これまで何度もワークショップを積み重ね、第一弾を経験しているこどもも多く、今回は「やりたい」と言った高学年以上のみの参加だったので、みんな積極的でスプレー扱いも上手。多賀井先生もノリノリでした。アーティストたちが「少し多めに…」と用意していた作業を、わずか1時間足らずで全て塗り終えました。
 最後に、SHINGO★西成さんから「完成披露会は9月24日やから、みんな楽しみにしといてな」と締めの言葉があり、解散しました。なかにはメディアからインタビューを受けるこどももいて、みんな楽しそうでした。こどもたちが帰り始めた頃、それまでやんでいた雨がまた降り始めました。

9月18日(金):いよいよ壁画制作が本格化

 18日(金)は朝から晴天。
 集まったのは、辻勇之介・福田葵・左近未来(3)、三宅亜紗未・大嶋千波・辻彩佳・川畑成美(2)、葛井健斗(流通学部1)の8名でした。
 作業の方は、高所作業車が2台入り、CASPERさんとONEVERYさんを乗せて大活躍。この二人には若いアーティストたちが、それぞれサポートに付いていました。スプレーを使えるのは技量の確かな若手アーティストだけ、学生スタッフは、交通整理や道具・材料の運搬など、裏方仕事に徹しました。
 ここからはアーティストが活躍してもらう期間、私たち裏方スタッフはサポートしながら、その仕事を見守るしかありません。交代で交通整理を行いながら、空いている人は新今宮TICでまち歩きの計画を練り、歩道から壁画が完成していくプロセスを眺めていました。私も途中、読売テレビの取材で受けるため現場を離れて新今宮TICへ行き、大阪市の宿泊施設不足問題と民泊の課題について語りました。
 さて、この日も17時前、SHINGO★西成さんが様子を見に来てくださいました。開口一番、「奇跡やなあ、めっちゃ作業進んでますね、驚いたわ。」でした。改めて壁面を見ると、下絵のところも多いけれども、全体の半分くらいはスプレーで色づけられていました。

 毎日現場へ出ていた私ですが、18日頃からひとつの変化に気づきました。アーティストたちが巨大な壁面をカラフルなスプレーで色づけ始め、それがある程度の大きさになってきたこともあってか、道路を行き来する通行人の目線が全て壁面へ向かい、立ち止まって見る人も増えて来ました。
 毎日現場へ通っていると、毎日この道路を仕事で行き交う人や、犬の散歩などで歩く人たちの存在が分かってきました。「これは絵ぇか字ぃか、どっちや字ぃやな」、「連休中もやんのんか」、「君らはボランティアでやってんのんか」、「前よりずっとようなったわ、どこまで描くん、向うはせぇへんの」などなど、色々と声をかけてくださる方も増えました。
 地元のおっちゃんやおばちゃんはもちろん、地域の町内会長さん、西成区役所の職員、アーティストの友人やファン、Facebookで西成WANを知り壁画を見に来たギャラリーなどなど、実に色々な人が様子を見に来てくれるようになりました。

9月19日(土):高所作業車で壁画上部を制作

 19日(土)も朝から晴天、この日は岸和田だんじり祭りの日でもあり、南海新今宮駅は混雑しています。その南海の高架下では、高所作業車が2台入り、真夏のような日差しのなか、壁画上部の仕上げが順調に進みました。
 この日参加した学生は、浜野文菜・福田葵・小山舞・宇都宮沙希・谷村恵美・西山瑛理・辻勇之介(3)、葛井健斗(流通学部1)、あは・みずき・朱里(交換留学生)の11名。交換留学生3名は岸和田だんじり祭りを見学した帰り、現場へ立ち寄ってもらいました。後期から始まるゼミ活動のイメージを持って欲しいので、ぜひ見に来てください、と私が誘いました。
 朝10時過ぎ、SHINGO★西成さんが、今日からライブで少し大阪を離れるから、とあいさつに来られました。作業の方は、CASPERさんとONEVERYさんが黙々と進め、夕方には壁面の70%近くがスプレーで塗られました。
 連休に入ったこともあってか、この日もギャラリーや支援者が大勢、壁画制作の様子を見に来てくれました。一応、私が現場責任者なので、みなさん、私のところへ挨拶に来てくださり、50枚くらい用意していた名刺はわずか数日でなくなってしまいました。

 長野県から来た女子プロレスラーのLINDAさん、壁画制作のプロセスを映像で記録する人、NHK大阪放送局の取材陣、いまみや小中一貫校のこどもたち、飲み物などを差し入れてくれた地元の西成WANファン、加古川からわざわざスプレー缶を差し入れに来たSHINGO★西成ファンのファミリーなどなど。
 応援する気持ちがあるからこそ来て下さっている方々ばかりなので、当たり前かもしれませんが、みなさん「素晴らしい」「ヤバい」と絶賛して下さります。来訪者たちは、アーティストたちが作業している風景を眺めながら、写真を撮ったり、スタッフと会話したり、のんびりと時間が流れた1日でした。
 さて、最近は、知っている目上の人にでさえ、あいさつできない学生が増え、私のゼミでも事情は変わりません。ところが、この19日の午後くらいから、学生たちが道路を行き交う人たちに「こんにちは」、「お帰りなさい」とあいさつするようになりました。SHINGO★西成さんや私が、いつもそうしているから、真似はじめたのかもしれません。たとえ知らない人でも、若い学生からあいさつされて、嫌な顔をする人はいません。これはとても良い習慣です。現場が変わっても、この習慣はぜひ続けるようにしましょう。

9月20日(日):壁画上部の総仕上げ

 20日(日)は高所作業車が入る最後の作業日で、この日に壁画上部を完全に仕上げてしまわなければなりませんでした。19日までの作業が順調で、壁画上部に関して、CASPERさんはほぼ完成、ONEVERYさんは、もう少しかかるし手直しもしたい…という感じでした。この日も朝から晴天、ここ数日の陽光で、私の鼻の頭は真っ赤に日焼けしました。
 集まった学生は、ジーン(4)、浜野文菜・辻勇之介・福田葵・竹中さおり(3)、大西美咲(2)、葛井健斗(流通学部1)の7名でした。壁画の完成に近づくにつれ、現場はアーティストの世界となり、学生スタッフが活躍できる場は準備と後片付けくらい。3回生ゼミ長の竹中さおりと相談して、昼からは私と竹中さんと、辻君と葛井君だけが残り、他の学生は午前中で帰ってもらいました。明日からの学生スタッフの数も、竹中さんと相談して、見直し連絡を回しました。
 作業はとても順調に進みましたが、高所作業車を使える最後の日ということもあり、日暮れ寸前の18時頃まで作業は続きました。これまでの7日間、作業を見守り続けてきた経験から、もうあと2日あれば完成するかしないかというところかな、と感じました。

9月21日(月・祝):ほぼ完成

 21日(月)も朝から抜けるような青空。本来この日は8名集まる予定だったのですが、少し減らして、辻勇之介・大久保愛仁(3)、大西美咲・妻藤稀保(2)、葛井健斗(流通学部1)の5名が集まりました。11時30分過ぎにSHINGO★西成さんが中1日ぶりに来られ、壁面を見て「もうほぼ完成やん、ほんまに奇跡や」と驚いていました。
 MINMIが大好きでSHINGOファンでもある学生スタッフの妻藤さんは、SHINGOさんが来ているのに、なかなか近寄れず話しかけられず…。「SHINGOさんは仲間や、一緒に壁画を制作している仲間の一人や」と説明しても、「オーラがあって、なかなか…」と、どうも不思議なファン心理。「せっかくやからサインもらっといたら」と仲立ちすると大喜びでした。舞台の上の人とその観客という立場で出会った関係は、こうなるのかもしれません。その気持ちは私にもわかります。

 さて、壁画の完成が間近になって、巨大な壁画を背景に写真を撮ると、どこでとっても「絵になる」ことに気づきました。その写真は抜けるような青い空にカラフルな壁、それは西成ではなく、どこかアメリカ西海岸にいるような感じです。この壁画は関西でも有数の撮影スポットになる、との予感がします。それだけの迫力と魅力がこの壁画にはあると、私は確信しています。
 さて、21日は夕方の17時過ぎ、西成WAN第一弾からずっと私たちを密着しているテレビ大阪取材陣が来ました。取材を受けた後の18時頃、全ての作業を中止して、居残った学生スタッフとアーティストらでミーティングしました。
 CASPERさんはあと2時間集中したら完成、ONEVERYさんもそのくらいあれば問題ないとのこと。14日から8日間連続でハードな作業を続けてきたコアスタッフは、本当に疲れ切りみんなボロボロ。二人のアーティストは、本業をそっちのけで時間をこじ開け、ボランティアで参加、本業の仕事も溜まっている…という状況。疲労から免疫力が低下したのか、私も、ONEVERYさんも、コアスタッフの何名かも風邪気味…。
 以上の状況を踏まえて、みんなで合議し、西成アート回廊プロジェクト実行委員会委員長として、22日・23日の作業は中止、24日の完成披露会当日の朝10時に再集合して仕上げる、と決めました。一度、緊張をといて身体も休めて、気分転換。それから、24日の完成披露会へ向けて再び集中力を高めよう、ということです。

 そこで作業は全て終了。居残ったみんなで使ったスプレー缶を移動させ積み上げながら、ふと見上げるとLEDライトに照らされた巨大な壁が…。その迫力は満点。
 わずか8日前は落書きだらけの灰色の薄汚い壁だった。それを洗って、みんなで白塗りして、描いて、描いて、描いて…。100名の観衆がいて100名が絶賛するようなアートは、おそらく存在しないでしょう。ただ、西成WANの場合は、この地域事情のなかで、地域の様々な人たちに働きかけて説得し、納得してもらい巻き込み、合法的に描ける巨大な壁面を確保し、これだけのアーティストやスタッフを集めて、色々な人たちの力を借りてまたそれを力へ変え、わずかな期間でこの作品を仕上げた。私たち以外でそんなことができたのだろうか、誰かが欠けていれば成し遂げられなかったのではないか、現場で共に戦った戦友たちに感謝し誇りたい。関わった仲間みんなが同じ気持ちであることを祈り信じる。