【松ゼミWalker vol.186】西成Wall Art Nipponの壁画が完成しました‼(教員 松村嘉久)

9月24日(木)の完成披露会は順延

 西成Wall Art Nippon(西成WAN)の第二弾の壁画は、9月24日(木)に完成披露会を行う予定でした。ところが、9月24日(木)の朝、雨がかなり降っていて、風も強い状況。本来ならば、壁画現場に10時に集合して、仕上げ作業を行い、完成披露会の準備へと移るはずでした。
 現場へ行くと壁面が雨でぬれていて、残念ながら、とても描ける状態ではありません。雨のなか作業を強行して、誰かケガでもしたら大変。完成披露会には地域のこどもたちも来るので、その安全確保は絶対です。アーティストやスタッフらとも相談したところ、「無理はやめよう」ということになり、実行委員長として、24日の完成披露会の延期、予備日の9月28日(月)へ順延を決定しました。
 さて、私たちの苦労はそこから始まりました。現場近くに保管していたスプレー缶などが雨ざらしになっていて、どこか屋根のある場所へ移さなければならない状況。新たな一時保管先を色々と検討したのですが、突然の雨天順延に加えて荷物は大量…。思いつくのは新今宮TICしかありませんでした。
 壁画現場から新今宮TICまではざっと700mくらい、歩いて10分はかかる距離です。夕方17時前、急遽現場に集まれたのは、ゼミの女子学生ばかり…。「どうして運ぼう」、大量のスプレー缶を呆然と眺めながら、途方に暮れていました。

 軽トラックか、リヤカーでもあれば…。ここは西成、リヤカーならもしかしたら誰か持っているかも…。地域で活躍している西成アート回廊プロジェクト実行委員の何名かに、「どこかでリヤカーを借りられないか」と電話相談。地域のみなさんに色々とご尽力いただき、おおよそ1時間後、2台のリヤカーが現場へ到着、無償で使わせていただけることになりました。
 現場でスプレー缶などを2台のリヤカーに乗せ、新今宮TICまで2往復。私は長年、西成で活動してきましたが、リヤカーを引くのは初めての経験。女子学生らも当然初めて。
 リヤカーはずっしりと重いのですが、動き出すと楽ちんで安定感抜群。夕暮れ時の西成でリヤカーを引く女子大生の姿は、注目の的でした。幸いにもこの間は雨も止んでいたので、みんなでワイワイガヤガヤと会話しながらの輸送。みんなで力を合わせ、困難を楽しみながら乗り越えるのが、私たちのスタイルです。新今宮TICへスプレー缶を運び込むと、ぬれた段ボール箱から出して、タオルで丁寧に拭き保管。
 全ての作業が終わったのは、19時半過ぎ。3回生の竹中さおり・小幡晶子・福田葵、2回生の大嶋千波・辻彩佳が、ずっと作業を手伝ってくれました。翌朝、竹中さんと私は東京出張で、「今旅」の表彰式(リンク)へ出席する予定だったので、作業終了後はすぐ解散しました。

9月28日(月)ようやく迎えた完成披露会

 阪南大学の後期授業も始まった9月28日(月)、西成WAN第二弾の完成披露会をようやく迎えることができました。集合は朝10時。この日の前日が「中秋の名月」で、この日は「スーパームーン」が見られるとのこと。ほとんど雲のかかっていない気持ちの良い晴天、壁面も最高の状態でした。
 壁画の仕上げ作業がまだ少し残っていたので、スプレー缶を保管している新今宮TICと、壁画現場で連携をとりながら、スプレー缶を自動車で運び、10時30分頃から作業を開始。SHINGO★西成さんやRed BullのDJカーも現場へ駆け付け、完成披露会の打ち合わせ。学生スタッフはアーティストのサポートをしながら、完成披露会とその後の撤収に向けた準備などを淡々と進めてくれました。
 壁画の仕上げは昼食休憩を挟んで15時過ぎに終了。その頃にはギャラリーが集まり出し、学生スタッフも後発チームが合流。壁画が完成した解放感から、お祭りムードで、私たちはSHINGO★西成さんやアーティストらから、ヘルメットやスマホにサインをもらい、壁画を前に記念撮影などをして過ごしました。
 再びスイッチが入ったのは16時過ぎ。何名かの学生が今池こどもの家のこどもたちを迎えに行き、いよいよ完成披露会が始まろうとしていました。

 16時30分過ぎ、今池こどもの家のみんなが到着。去年から何度も顔を合わせているので、知っているこどもたちばかり。最後の最後の総仕上げとして、こどもたちの代表を3名選び、パステルカラーのスプレーで、「NISHINARI WAN」のステンシルを噴いてもらいました。
 その直後、DJカーから音が出て、SHINGO★西成さんが壁画「アセラズ クサラズ アキラメズ」に込めたみんなの思いを語り、何曲か歌ってくれました。
 さて、出来上がった巨大壁画には、SHINGO★西成さんからのメッセージが込められています。
 CASPERさんが担当した壁画北側には、独特のCASPER書体で「自分たちのまちは 自分たちでつくる 今できるコトを 今できるヒトが まちをキレイに ココロをキレイに」と描かれています。一見すると何か模様のように見えるかもしれませんが、よく見ると文字として読め、メッセージも読み取れるのが特徴です。
 ONEVERYさんが担当した壁画南側は、パステル系の明るい色の背景のもと、抽象化した「VERY」というライティングが浮かび上がり、そのライティングのなかに「WE ARE HERE」、「GIVES YOU WINGS」、「アセラズ クサラズ アキラメズ」が絶妙に埋め込まれています。
 第二弾の壁画は、Wall Artのなかでもグラフィティ色を強く押し出し、あえてペイントよりもライティングを中心にすえたものとなりました。加えて、CALMAARTから協賛いただいたMolotow社製スプレー缶の特性、微妙に異なる多彩な色調を活かした作品となり、集まったギャラリーからは「マジでヤバい」との声が…。

完成した壁画をぜひ見に来てください

 ぜひ一度、その「ヤバさ」をみなさんの自らの目で見に来てください。場所は南海新今宮駅下車すぐ南、南海本線の西側道路沿いの南海高架壁面です。いまみや小中一貫校の東側です。
 南海新今宮駅を環状線の外側へ降りて、南海本線の高架をくぐり西側へ出て、南を向けば、カラフルな壁が目に飛び込んで来るはずです。第一弾の「ここから いまから」と、第二弾の「アセラズ クサラズ アキラメズ」が並んでいます。
 第一弾は、地域のこどもらとの協働が主な目的で、こどもらが描きやすいよう、アーティストらにサポートしてもらいました。第二弾は、アーティストらが全力で壁画を制作、地域のこどもらもその制作に加わり、アーティストをサポートしてくれました。
 さて、第二弾の壁画制作にあたっては、実に多くの仲間が時間を作って現場へ来て、サポートしてくれました。Facebookを見て応援に駆け付けてくれた人々には、随分と励まされ勇気づけられました。心の底から感謝します。ありがとうございました。私のゼミの学生スタッフも、9月14日以来、のべ80名以上が参加。完成披露会でもSHINGO★西成さんからMCで、「手伝ってくれた仲間たち、阪南大学の松村先生と、先生ところの学生さんたち、ほんまにありがとうございました」との言葉もいただきました。
 日本最大級の壁画制作に関わったゼミ生たちは、ぜひその経験と壁画そのものを誇って欲しいと思います。ひとりひとりの力は微力でも、みんなが力を合わせてスタッフとして関わり、色々なことを乗り越えてきたから、完成を迎えることができました。誰かひとりでも欠ければ、完成しなかったかもしれません。だから、今回の西成WANに関わりやり抜いたことを、ぜひとも誇りに思ってください。この仲間だったからこそでき、この仲間でしかできなかった、そんな素敵な現場でした。