活動テーマ:観光マーケティングに関する研究と実践
連携先:株式会社フェリーさんふらわあ 志布志支店 および 旅客営業部営業企画室


 現在、フェリーの利用客は若者が少なく、トラックの運転手や年配の方が多いという状況で、若者の利用者を増やすことがフェリー業界の課題の一つだそうです。それをふまえ私たち大谷ゼミは阪南大学キャリアゼミの一つとして、株式会社フェリーさんふらわあより活動の機会をいただきました。その内容は、フェリー旅に関するマーケティングを実践することにより、フェリーの存在を若者に知ってもらい利用に繋げていくというものです。
 私たちは大阪南港から鹿児島県志布志港へ行く航路を利用した旅行プランを考え、実際に船と現地への取材を重ねました。現地ではInstagramなどの“SNS映え”ニーズに応えることができる観光資源の発掘とその写真素材の収集を行い、最短1泊2日で大隅・薩摩の二つの半島を周遊できる組み合わせ自由なモデルプランを掲載したリーフレットの制作を進めてきました。また、現地の観光協会やフェリーさんふらわあの現地支店へのインタビューを行い、現在の取り組みや課題についてお話をうかがいました。並行して、昨年度から引き続き発信しているSNSやウェブサイトにおいて、これまでよりも“SNS映え”にこだわり、大隅・薩摩両エリアの観光スポットの紹介を行いました。

国際観光学部 3年生 北川 晶穂

学生活動状況報告

 株式会社フェリーさんふらわあとの活動には昨年度から関わらせていただいています。今年度は昨年度までの中九州航路(大阪・別府、神戸・大分)ではなく南九州航路(大阪・志布志(鹿児島))での活動に変わりました。そのため、船についても現地の観光についても知らないことばかりで、これまでの活動の延長ではなく、新たな活動に取り組むという覚悟で臨みました。
 活動においては、ゼミの方針である現場に足を運ぶことを最重視し、実際にフェリーで鹿児島を訪れるフィールドワークを7月から2ヶ月に一度、計4回実施しました。フィールドワークを通して、若者のフェリー利用者が少なく、乗船客の大半をトラック運転手と年配の方が占めているという現状を実際に確認することができました。あまり知られていないフェリーの旅ですが、実際に乗船することで、飛行機や新幹線など他の交通機関を利用した旅行とは違った、友達と語り合い、デッキで夜空を見ながらゆったり過ごすといった時間の使い方を知り、移動でも思い出を作ることのできるという魅力に気がつき、この魅力を若者に訴求すれば利用につながると確信しました。特に南九州航路は中九州航路よりも航行時間がやや長いため、その魅力をより満喫することができます。
 また、実際に鹿児島各地を訪れることで、あまり知られていない絶景スポットや食の魅力を知ることができました。まさに“SNS映え”する観光資源ばかりでした。加えて、現地で出会う方々の温もりは、私たちを虜にさせました。
 このような“SNS映え”する鹿児島観光やフェリーの魅力を、そして鹿児島の人々の温かさを、少しでも多くの若者に伝えるための手段として、InstagramなどのSNSで情報発信を行うことに加え、SNS時代にふさわしいリーフレットの制作を行いました。それは、モデル周遊プランを中心としつつ、観光スポットに関する写真素材を数多く取り揃え、モデル周遊プランの組み合わせを変えることで自由な周遊プランを組み立てることができるという特徴を持たせたリーフレットです。写真素材を多数用いることで、SNSへの投稿を意識した旅行計画を行うニーズに対応し、かつ、思わず手に取りたくなるようなリーフレットとしています。あいにく、試作品のフェリー会社への提出が遅れてしまい、年度内の完成には至りませんでしたが、試作品への講評をふまえ、より良い物に仕上げるつもりです。加えて、プロモーション動画の制作にも取り組みました。動画撮影・編集が得意な2回生に協力してもらい、試作品を作って先方にご覧に入れたところ、高く評価していただきました。こちらも年度内の完成には至らなかったのですが、引き続き先方と調整を進め、完成させたいと思います。
 活動を通して最も印象的だったのは、フェリーさんふらわあの志布志支店長や志布志市観光特産品協会の会長に直接お目にかかり、活動について意見交換をさせていただけたことです。現場で直面している課題や私たちへの期待、そして活動への評価について、直接お話をうかがえたのは、大きな励みになりました。新年度もぜひ活動に関わらせていただきたいと考えておりますが、関係者のお話をうかがう機会をこれまでよりも増やし、よりよい活動にしたいと思います。

国際観光学部 3年生 北川 晶穂

参加学生一覧

織田 星也、家次 未來、北川 晶穂、寺島 詩織、山口 真実

ゼミ集合写真

教員のコメント

国際観光学部 大谷 新太郎准教授

 株式会社フェリーさんふらわあとの取り組みは2012年度から続いているものですが、これまでは大阪・別府および神戸・大分航路を中心とするものでした。今年度は初めて、大阪・志布志(鹿児島)航路を中心とする取り組みになりました。2018年には同航路に新造船が投入される予定です。また、大河ドラマの放映により鹿児島県の観光に注目が集まっています。加えて、大分県には別府や由布院など集客力のある観光地が数多いのに対し、鹿児島県、特にフェリーが発着する大隅半島側の観光は、交通の不便さもあってあまり注目されていません。その魅力を発掘し、フェリー航路の存在を生かして誘客を行うという活動に、ゼミ生達がやりがいを見いだしたのです。
 前年度末に志布志で取材を行ったことを引き継ぎ、また、7月と9月に大隅半島各地で取材を行うことでゼミ生達は、志布志を拠点とする大隅エリアの観光が絶景や食など魅力に溢れていることを確信しました。一方で、いずれも知名度は低く、それだけで誘客するのは難しいとも考えました。やがてゼミ生達は根占と山川を結ぶフェリーを利用することで対岸の薩摩半島に渡ることができることに注目し、大隅半島と薩摩半島を周遊するプランを作ることにしました。大隅エリアの観光の潜在的な力と、薩摩エリアの観光の知名度を結びつけるという斬新なアイデアでした。
 実際にゼミ生達が志布志を起点に大隅半島・薩摩エリアを一周してみると、優れた観光資源が多過ぎるほどで、1泊2日では回りきれず、旅行日程を組むのが難しいことにも気がつきました。そこでゼミ生達は、基本的なモデル周遊プランを決め、オプションとして各観光スポットを紹介するという構成のリーフレットを考案しました。若者のSNS利用を意識した構成・デザインも取り入れました。
 このように、ゼミ生達は、実際に現場で気がついたことをもとに議論を重ね、自分たちのアイデアを膨らませ、それを成果に繋げようと努力しました。大谷のゼミのモットーである「主体的・創造的な活動」を実践してくれました。しかしながら、制作物のコンテンツを検討するにあたり市場分析が不十分であったこと、安易にInstagram風のデザイン・構成としてしまったこと、年度末の期限を念頭に作業を進めず全体的に遅延していたことなどツメの甘い部分も見受けられ、最大限の成果をあげるには至りませんでした。フェリーさんふらわあと鹿児島にとっての大切な年である2018年には、今年度の活動の良かった点と反省点をふまえ、しっかり成果の挙げられる活動を展開してくれることを期待します。
 最後に、このような活動の機会をいただきました株式会社フェリーさんふらわあと、さまざまなご支援・ご協力を賜りました観光協会・自治体など現地の関係各位に、この場をお借りして深くお礼申し上げます。ありがとうございました。