2018年夏に塩路研究室3年生2人が、北欧とドイツに調査旅行にでかけました。今回は、各自が関心を持ったテーマについて現地で見聞きし、考察した内容を報告します。

負の遺産から学ぶこと
3年生 島田麻衣

 夏休みを利用してヨーロッパ5か国を周遊しました。その中で最も心に残っているポーランドの世界遺産、アウシュヴィッツ・ビルケナウ ナチスドイツの強制絶滅収容所について報告します。
 アウシュヴィッツと私たちは呼んでいますが、現地ではOświęcim(オシフィエンチム)と言います。Oświęcimがドイツ人にはAuschwitz(アウシュヴィッツ)と聞こえたので、私たちはアウシュヴィッツと認識しているのです。年齢や性別、思想に関係なく多くのユダヤ人が強制虐殺され、すべての収容所のなかでアウシュヴィッツが最大のものでした。当時とほとんど同じ状態で残っている唯一の収容所です。なぜポーランドのアウシュヴィッツに建てられたかというと、欧州の真ん中に位置しており、各国から連れてくるのには都合のよい立地だったからだそうです。
 建物内にはガイドをつけなければ無料で入場することができます。英語、ポーランド語、イタリア語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語に対応できるスタッフが在籍しています。日本語ガイドスタッフは当日いませんでした。日本語ガイドをつけたいなら、この博物館の公式ガイド資格を日本人では初で唯一もっている中谷剛さんに個人で連絡を取って予約しないといけません。私は、アウシュヴィッツについてのガイド本を持っていたので、読みながら一人で回ろうかと考えましたが、英語の勉強になり、人から伝達されたほうが感じることも多くあるだろうと思い英語ガイドのグループを予約しました。すべてを理解することはできませんでしたが、展示にはない当時の悲惨さなどを教えてくれました。英語ガイドの説明を受けて意味があったと思っています。
 展示品には大量のメガネ、靴、かばん、収容者から押収した生活用品などが展示されていました。実際使用された毒ガスの空き缶や2トン近くの髪の毛、身体障害者の義足、人骨の灰などを生々しいものばかりでした。当時の写真が大きなパネルになって各部屋に飾られています。「ON THE WAY TO DEATH」の題は訳すと“死への道”です。写真には女性、子供が写っていました。彼女らは、「シャワー室へ行く」と嘘をつかれ、シャワーが浴びられると喜んで施設に入り、毒ガスを浴びせられました。また、奴隷労働に適さないユダヤ人はアウシュヴィッツに連行されるとすぐにガス室で殺されました。アウシュヴィッツ、ビルケナウどちらにも抜け出せないように何重もの有刺鉄線があり、脱走を企てたなら本人、その家族も処刑されました。ユダヤ人というだけで多くの命が奪われました。
 映画などでドイツの独裁政治を題材にしたものは多くあり何作か見たことはありますが、実際に訪れて見て聞いて想像するだけで本当に恐ろしい歴史であると改めて感じます。見学後の移動のバスでは何とも言えない気持ちになりました。自由があり、平和に過ごせていることが当たり前に感じますが、人が人を大量虐殺してきた負の歴史を、命の尊さを忘れてはいけないと思いました。

初めての海外フットパス:アンデルセンの街オーデンセ
3年生 前田 果歩

 私は9月にデンマークへ行きフットパスルートを実際に歩いてきました。それはデンマークの首都コペンハーゲンの島とレゴランドのあるビルンという島の間にある島で、オーデンセというところにある「アンデルセンの軌跡をたどる」というコースでした。アンデルセンはデンマークを代表する作家で世界的にも有名です。代表作は「人魚姫」、「みにくいアヒルの子」、「マッチ売りの少女」などです。誰もが知っている作品ばかりだと思います。
 初めに、スタート地点であるアンデルセン博物館へ行きました。そこでは入場料を払うとルートを巡るのに必要なリストバンドや日本語のパンフレットやフットパスのルートが書かれた物がもらえます。そして博物館内を自由に見ることが出来ます。ぐるりと一回り見ると外へ出てマップに書かれたルートを歩きます。次に着くのはアンデルセンの生家です。黄色の壁に茶色い屋根でとても北欧を感じるデザインでした。腕につけたリストバンドを見せると実際に中に入ることができます。家具が置かれていたのでどのように暮らしていたのかなど想像しやすかったです。次に歩いて行くとたどり着くのはアンデルセンが幼年期を過ごしていた家です。ここもリストバンドを見せると中を見ることが出来ます。きれいで大きな庭がありたくさんの綺麗な色鮮やかなバラの花が咲いていました。そして4つ目のポイントへは川辺を歩いたり、噴水のある花園のようなところも通りました。そうして到着したのはアンデルセンの世界観を感じることの出来るカルチャーハウスやオーデンセの歴史を知ることの出来るミュンターゴーデンと呼ばれる建物でした。実際に中に入ると日本にある体験型施設とは異なった独創性のある展示品ばかりでした。また、そとには昔のオーデンセの暮らしを体験できるスペースもあり、私ははじめての井戸水を汲むという体験をしました。そうしてスタート地点のアンデルセン博物館へ戻ってくるという周回ルートでした。
 歩いてみてアンデルセンの人生以外にもオーデンセの町の歴史や自然に触れながらフットパスが出来るのは素晴らしいと感じました。道中にもルートがわかりやすいように地面に足形が書かれており、それをたどると目的地に着くことが出来ます。また、川辺にベンチがあるなど夏場でも涼しく休憩ができるスポットもありました。こういった細かい工夫が凝らされているところに、とても感銘を受けました。他にもドイツ・オランダと今回の調査旅行で訪れましたが、デンマークが最も自然が豊かで住みやすい良い国だと感じたので多くの人に旅行先として勧めたいです。