国際観光学部 塩路ゼミ活動報告

 塩路ゼミでは、4月24日に大阪企業家ミュージアムの見学を実施し、3、4年生の計25人が参加しました。大阪で活躍した企業家について学ぶことで、企業や起業、大阪にゆかりの商品、企業とまちづくりの関係について知識を深めることが目的でした。また、同館の見学は、学生にとってはキャリア教育にもつながり、就職活動に役立つことが期待されます。同博物館では、最初にスタッフの方の講義を聞き、映像資料を視聴した後、ボランティアの方の案内で館内を見学しました。以下は、ミュージアム見学に参加した学生の活動報告です。

※この教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

大阪企業家ミュージアムに集う先人とは
光安 哲哉

 企業家とは、自ら事業を興す者(起業者)や企業の経営に取り組んだりする人を言います。通常、ベンチャー企業を開業する者を指し示す場合が多いです。中小企業庁によると、企業家に必要な資質としては環境変化に適応する柔軟性が48%で決断力・積極性36%と調査結果を開示しています(詳細年度不記載)。これらは一般的な解釈で、大阪企業家ミュージアムでは、企業家の定義を以下のように考えています。 

 『企業家とは、今までに存在しえなかった商品やサービスを生み出し、社会の発展や人々の生活水準の向上に貢献した者のことを示す。』企業家とは、単に起業するだけではないと定義付ける文面だと考えました。起業しただけでは企業家に成れていない、世の中に変化や貢献をもたらしてこそ企業家となり得るのです。そのように定義する当館は、企業家に必要な資質として、ひとつを中心に6つの資質は下図の通りです。
  • 企業家精神

 歴代の活躍が大きい人たちは皆、芯となる志となる理念をもってして経営を行ってきました。それは現代でも、世界においても変わりないことだと考えます。就職活動を行っているものならばわかるように、企業にはそれぞれの経済活動の根幹に企業理念が存在します。その理念が、その会社の企業家精神であるといっても間違いではないでしょう。この理念がしっかりしていなかったり、うわべだけの理念であったりするのであれば、同館の先人たちのような企業家には成れないと考えます。生涯、単なる企業経営者に過ぎない存在で頭打ちするでしょう。他者がまだ行っていないことを思い付く独創性と、実際にそれらを実行する挑戦心、ほかに先を越されない先見性、それらを実行することによる変化創造力、これらは世の中に大きな影響や変化をもたらすには必要不可欠なものです。
 そして何より、企業家を調べていて『企業家精神』以外の共通点がありました。それは、起業する際に経営の芯となる理念を定めているのではなく、それ以前に理念をもっていたということです。現在においては、起業する際に経営理念を掲げるベンチャー企業が増えています。それは、株式上場時に提出する書類に必要であるからだというのも少なからず影響していると考えます。しかし、ベンチャー企業の中でも、大きな功績を残しているのは創設以前から強い意志である理念があるからこそではないかと感じます。その理念達成のために何をどうすればよいのかを考え、経営していく。迷わず経営していくことができる故、先を見据えることができ、挑戦していくことができます。
 企業家と呼ばれ多大な功績をおさめてきた先人たちは、起業して経営していくために理念を持ったのではありません。彼らが抱いた理想のために理念は生まれ、それらを実現するために起業し、経営していくことで実現したのです。企業家は社長になることが目標ではなく、また経営することが目標でもゴールでもありませんでした。世の中に送り出したいと思った彼らの何かを送り出すため、結果的についてきたものなのです。だからこそ、企業家の理想は本人がいなくなっても失われることなく受け継がれ、その会社の理念として生き続けていきます。つまりは、会社そのものが企業家そのものとして生き続けているとも考えられます。企業家とは、企業家に成るために起業したのではなく、自己実現するために働き、その功績で企業家になった貴い人たちだと感じました。

大阪企業家ミュージアムと産業観光の可能性
吉川 慎也

 大阪企業家ミュージアムは、大阪をゆかりの地とするあらゆる時代や業種で活躍した企業家を展示、紹介しています。国内外を問わず年間約1.7万人、累計約18万人が訪れた当該施設は大阪産業創造館の地下にあり、大阪商工会議所が設置運営しています。
 館内の展示ブースでは、複数の時代背景にエリア分けされており、大きな写真や解説文とともに企業家を展示していました。各企業家には、功績を紹介するファイルが設置され、詳細を知ることもできます。音声ガイドが設置されており、日本語の他に英語や中国語、韓国語に対応し、外国人来館者にも対応できる配慮がされていました。その他にも、企業家の志や大阪の時代背景を紹介する映像を扱ったブースや関連する図書が閲覧できるブースがありました。
 ゼミ活動としての来館であったため、団体来館者用の見学案内を利用しました。全体で約90分のスケジュールで、最初はスタッフによる約30分のセミナーがあり、続けて資料ビデオの上映がありました。最後に少数グループに分かれて、各自スタッフと展示ブースで見学といった流れでした。
 セミナーでは、スタッフが著名な企業家の起業に至ったルーツや企業家精神について、合間に質疑応答を交えつつ解説がありました。江崎グリコの創業者である江崎利一氏の、長崎での葡萄酒販売の成功話や、菓子グリコが誕生した過程にある牡蠣の出汁を活用した話などを聞き、新しい着目点が画期的な発明に繋がることやその重要さ、もったいない精神が活用された効率の良い商売など、日常生活にアイディアがあることを学びました。さらに、菓子グリコには子供の健康の補助食品を意識したアイディアが詰められていることを聞き、江崎氏の消費者にも有益な商品でなければならないという姿勢が反映されていることがわかり、それが長い間親しまれている理由だと感じました。
 そして、大阪企業家ミュージアムは、大阪の産業観光の拠点になりうるといった話がありました。大阪は江戸時代以前から物流の集約地としての歴史を持ち、外国からの貿易も盛んでした。この産業は大阪そのものの歴史であり、現代の大阪だけでなく、「大坂」を知る機会にもなると考えました。大阪を訪れた観光客がこの施設を利用し、知識を高めることで新たな価値を発見し、より魅力的な観光へと進化させることができると感じました。施設に展示されている企業家ゆかりの地は大阪各地にあることを知りました。これらを辿ることも、大阪の通な観光の楽しみ方であると思いました。これは、潜在的な観光客(大阪在住者など)を生み出す機会になると感じました。
 最後に展示ブースの見学では、知識豊富なスタッフのエリアごとの丁寧な解説があり、質問にも親身に対応されていました。解説する企業家の発明品を現物で準備されているなど、世代の離れた私たちにも理解しやすいように配慮されている様子が伝わりました。
 短い時間の施設見学でしたが、社会人を目前とした私たちにとって、産業とはどのように形成されていくのか、著名な企業の成り立ちやそれらが担ったその時代ごとの活躍など、将来働いていく上で有効な話を理解したことはとても意味があると思いました。今回学んだ内容を、振り返りながら就職活動やその後の社会生活で活かす必要があると思いました。

企業家が持つ「企業家精神」を学ぶ
赤坂 貴之

 先日、私たちはゼミ活動として大阪市中央区本町にある大阪企業家ミュージアムへ行きました。このミュージアムは関西を代表する経済団体でもある大阪商工会議所が創立120周年事業として平成13年6月に開設しました。来館者は小学生から社会人、企業経営者や起業を目指す人など様々で、国内外では韓国、アメリカ、中国、台湾の方も訪れています。年間の来館者は1万5千人を超え、年々増加しているようです。
 まず私たちは館内の別室で大阪企業家ミュージアムについての説明と10分ばかりの一部の企業家たちについての映像を見ました。ここで分かった事は、どの企業家も共通する「企業家精神」を持っているということです。そこに「志」「挑戦」「創意工夫」「自立自助」「意志」「変化」「先見性」と7つの企業家精神をあらわすキーワードを糧に、それぞれ企業家が時代の変化に伴い、社会の発展や人々の生活の事を察知し、自らのストイックな行動力と何事にも果敢に挑むチャレンジ精神を持って自らの社会や街づくりを担ってきました。
 私はこのチャレンジする企業家精神というものが、これから起業をするにしろ、企業へ就職するにしろ社会に出て行く学生や、既に社会に出て働いている人に役立つものだと思いました。たくさんの企業が存在する中、江崎利一氏が創設したお馴染みの江崎グリコの「グリコ」の名前の由来が、栄養素である「グリコーゲン」からきていることや、グリコのロゴである「走る人」で知られている正式名称「ゴールインマーク」は子供がゴールインをしている姿で、スポーツこそ健康への近道であることのイメージをロゴにした等、様々な意味が込められて作られたのだと分かり、より興味を持って視聴することができました。
 館内の展示ブロックにはたくさんの企業家の写真が壁に掛けられており、資料やその企業に関連する物が展示されていました。近代の企業家による展示がほとんどで、展示物なども古いものが多く、私たちが生まれるずっと前の物もありました。現代の物と展示されている原点となる物を比較すると、昔と比べ技術や商法は時代が進むにつれて、とてつもなく進化し続けているのだなと感じとることができました。またこの展示ブロックでは案内人の方が付き添っていただきました。私たち大学生相手にコミュニケーションを図りながら説明をしてくださり、娯楽も含めて学ぶこともできました。
 幅広い年代の人が訪れる場として、大学生以下の年代では自ら考えて行動する力を育む場になり、私たち大学生はこれからの進路への決定打に結びつける場として活用できる所だと思いました。これから将来活躍する企業家がまたこのミュージアムに載ることになるのかもしれないと考えるとまた何年後かに訪れてみたいです。

企業家精神を伝えるミュージアム
谷口 克実

 大阪企業家ミュージアムは、2001年6月5日に大阪商工会議所によって開設され、年間約1.7万人、累計18万人が来場しており、海外114ヶ国の人々が訪れ、中でも韓国、中国、アメリカの人々が多く、近年では、マレーシア、インドネシア、タイなどの東南アジアの来場者も増加しています。そして、大阪企業家ミュージアムは「企業家精神」の伝承という目標を掲げ、ミュージアム事業だけでなく、セミナーなども行っています。
 私が大阪企業家ミュージアムに行って学んだことは、企業家精神は日常で活かせる点が多いということです。企業家精神における7つの大切なキーワードは、変化、先見性、挑戦、創意工夫、自立自助、意志、志であり、参加したセミナーでは、創意工夫に長けた人として江崎利一、先見性に長けた人として小林一三が紹介されていました。企業家の人たちは、日常の何気ないことをヒントにし、また、何度も失敗しながら成功にたどり着くことが多いです。どこかの会社に就職した場合であっても、工夫を凝らした新しい発想ややり抜く意志の強さなどは絶対に必要になってくると思うのでこれから役に立つと感じました。また、留学を控えている私にとって、意志や挑戦、創意工夫という精神は見習うべきものが多く、留学中は多くの挑戦をし、工夫して多くのものを身につけようと感じました。
 大阪企業家ミュージアムを使った産業観光として考えられるのは大きく分けて二つあります。一つ目は、国内の企業の社員旅行や研修旅行の一環として取り入れるものです。前述した通り、会社員の人々にとっても仕事の考え方などに企業家精神が応用できる点が多いなど、仕事の効率アップにつながる可能性があるため、企業の団体旅行と結びつけることができます。しかし、大阪に立地するため、大阪外の企業の団体旅行としては、産業観光の一つとして行うことが可能ですが、大阪にある企業は研修としての意味合いが強くなると考えられます。二つ目は、今現在、著しく経済が成長している、又は、経済が成長途中の国の人々をターゲットにした産業観光です。日本の高度経済成長時代を支えた企業家たちの情報を得ることができるため、新しく自らの国で企業家になろうとする人が来場することが見込めます。大阪という大都市に立地しているため地方よりも、外国の人々が訪日してから訪れやすいという点も、外国人をターゲットにしやすいと感じられます。上述した、近年、来場者数が増加している東南アジアの国々は経済成長が著しいため、来場者増加の背景として考えることができます。この二つが、大阪企業家ミュージアムを使った産業観光としての可能性です。

参考HP
「フェネトル・パートナーズ」<http://www.fenetre.co.jp/jpn/2011/05/post-52.html>

大阪企業家ミュージアム
布廣 有紀

 4月24日に、ゼミのフィールドワークで大阪企業家ミュージアムに行きました。そこで見聞した関西の企業家について学んだことや気づいたことをまとめます。
大阪企業家ミュージアムでは、今までになかった商品やサービスを生み出し、社会の発展や人々の生活向上に貢献した人を企業家としています。そして、企業家精神として「志」を中心に「変化」「先見性」「挑戦」「創意工夫」「自己目的」「意志」の6つに分けています。博物館に展示されている105人の企業家たちは、それぞれの志を持ち、今の私たちの生活には欠かせないものを創り始めました。
 その一人である江崎利一は、創意工夫の志ともったいない精神を持ち合わせ、江崎グリコ株式会社の創業者となりました。江崎氏は商売のコツを「人がやっていないことをする独創性」「買った人も得をする商売」と言います。私は特に2つ目のコツに関心を持ちました。買い手の得は、売り手の得にもなるということですが、買い手のことを考えれば、必ずしも売り手の得になるとは限らないと思いました。買い手の目線に立つ事は大切ですが、企業側にも出来ることに限界があります。江崎グリコが成功したのには、1つ目のコツである独創性が加わったことにあると思います。グリコはキャラメルで有名ですが、当時は、ライバル会社である森永製菓のキャラメルが市場を占めていました。そこでグリコは、キャラメルにおまけの玩具をつけることによって、おいしさと娯楽を子供たちに提供しました。そのことによって、他がやっていない独創性のある、買った人も得をする商売を始めることができ、成功へとつながったのだと思いました。
 このように、企業家たちのひとひねりした戦略を学ぶことが出来る大阪企業家ミュージアムには、国内の人だけではなく、114か国にも及ぶ外国人が来場し、関西の企業家たちの志を学びにきています。そして、この博物館を運営している大阪商工会議所は、中小企業を主に応援しています。そこで、この大阪企業家ミュージアムが、今後、将来起業することを考えている志の高い外国人と中小企業の間に入り、双方の架け橋になれば、産業観光になる可能性は十分にあると思います。
 今回のフィールドワークでは、短い時間でしたが、多くの企業家たちの功績を見ました。失敗しても反省し、成功するまで続ける企業家が多く、何より人々の暮らしの向上を願って研究・開発を行っていたのだと知りました。そして、関西から発信されたものが今の生活を支えていることをとても誇りに思いました。