2021年度の清水ゼ3年生13名の1年間の研究成果の報告を行います。株式会社エイチ・アイ・エス、関西エアポート株式会社、タイ国政府観光庁の3事業者と共同研究を実施いたしました。各チームが様々な関係機関や現場に出向き、ヒアリング調査やアンケート調査などを行い各企業から幾度もアドバイスをいただきながら研究を進めてきました。その成果を日本観光研究学会関西支部学生連絡協議会主催の学生研究報告会で発表し、最終的には企業、事業者への報告を行い、実り多い1年間の研究活動を終えることになりました。以下は各チームの研究の詳細です。

■HISチーム
研究テーマ:「HISにおける地方創生の可能性」
HISの事業の一部としての地方創生事業において、大阪でどのような可能性を見出せるのかを学生の視点で考えるということを目的とした。対象地域として地方創生に力を入れている東大阪市を取り上げ、後継者問題を抱える布施商店街を事例として研究を行った。結果として、新たに事業を興したいという者と布施商店街で後継者を求めている事業者をマッチングさせるプロジェクトを提案した。これにたいして東大阪市とHISから事業化の可能性があると評価を受け、今月に3者で事業を進めることができるかの話し合いをする予定である。

■関西エアポートチーム
研究テーマ:「学生をターゲットとした伊丹空港のプロモーションに関する研究」
企業との話し合いにおいて若年層のプロモーションについて研究を絞ることになった。学生への空港利用などに関するアンケートの結果、伊丹空港のリニューアルについて知らないという回答を多く得たことから、伊丹空港を学生にいかプロモーションをしていくかを研究目的とした。この研究はまだ進行中で、現在設定されているインスタグラムが3空港統一のもしかなく、学生をターゲットとした伊丹空港専用のアカウントを作成し、3か月間でその利用率の違いを分析する予定である。

■タイ国政府観光庁(TAT)チーム
研究テーマ:「タイの新しい観光コンテンツ」
2年生からの継続研究を行っている。若年層にいかにタイへの関心を持ってもらい、誘致するかをテーマに、今年度はコロナで渡航が困難な中で、少しでもタイを感じてもらえるギフトボックス「Otoriyose Box」を企画から販促、販売まで学生自らが実施することを研究目的とした。TATやタイ政府貿易関連機関などのアドバイスを参考に2022年2月に販売を開始した。まだ研究は継続中である。(清水苗穂子 )

清水ゼミ H.I.S.チーム

報告者:高畑 紫

 H.I.S.チームでは、株式会社エイチ・アイ・エス(以下H.I.S.)における地方創生の可能性について研究を行いました。
 本研究の背景として、少子高齢化などの社会問題により地方創生が必要である現状と、個人手配旅行やOTAの普及による旅行会社離れの現状が挙げられ、旅行会社が地方創生に取り組む必要性があると考えたためです。また、H.I.S.は他の旅行会社と比べ、地方創生の実績が少なかったことから、H.I.S.の地方創生事業として新たな取り組みを提案することを目的とし、調査と分析を行いました。
 まず、観光業界における地方創生の方法として、分散型ホテルに着目しました。そこからさらに状況を深堀りするため、身近な例として東大阪市の布施商店街にあるSEKAI HOTELに焦点を当て、フィールドワークとヒアリング調査を行いました。その後、東大阪市、布施商店街の現状も知るため、東大阪市役所と布施商店街連絡会へ足を運び、同様の調査を行いました。
 その結果、東大阪市は地域DMOの活用促進、SEKAI HOTELは新型コロナウイルスの影響で減少した地域との関係の再構築、布施商店街は後継者問題と経営状況の改善と、それぞれの課題が明確となりました。チームで話し合った改善策として、経営者と後継者を繋ぐ、マッチングイベントを開催するという提案に至りました。
 はじめに、その内容についてH.I.S.の日高様にお話を伺いました。旅行会社においても厳しい状況の中、報酬が無ければ厳しいというご意見がありました。そこで、東大阪市の課題である地域DMOの予算を活用するというアドバイスをいただきました。これを踏まえ、イベントの運営体制について相談した結果、主催を東大阪市としてDMOの予算を活用し、H.I.S.はその業務を受託することで予算からの報酬を得られる、という具体的な内容となりました。この内容について検証を行うため、東大阪市役所へお話をお伺いしたところ、素晴らしい着眼点であり、運営体制も現実的であると仰っていただきました。さらに、東大阪市役所と商工会議所が運営する創業支援ブースの設置や、SEKAI HOTELの知名度向上と利用促進のため、H.I.S.とのタイアップ商品を企画してみるなど、様々な視点からのアドバイスをいただくことができました。以上の内容から、旅行業が厳しい今だからこそ、旅行会社が地方創生事業に取り組むことは、企業として生き残っていくための戦略になり得るということを立証することができました。
 この研究を通して、地域の問題について調査し、解決策を講じるという貴重な経験をさせていただくことができました。分からないことばかりで挑戦の連続でしたが、何度も現地に足を運んで実際に声を聞くことが、現状を深く知るために最も大切であるということを改めて実感しました。ここで得た知識と経験は、私たちの将来に必ず役立つものであると確信しています。
 最後に、本研究の遂行にあたり、多くの方々にご協力いただきました。大変貴重なお時間をいただき、心より感謝申し上げます。

清水ゼミ タイ国政府観光庁チーム

報告者:高瀬太伸

 私たちTATチームでは、タイ国政府観光庁様と共同研究を行い、「タイの食に特化した観光PR商品の開発・販売」を研究目的に研究をしてきました。
タイ政府観光庁様の主な業務でもある「新たな観光コンテンツ」という業務で大学生として新たな観光コンテンツを開発し提案できないかと考えました。
 そして、私たちのチームが提案し発売したPR商品が「Otoriyose Box In Thailand」です。
 ASEAN観光意識調査の「タイへの訪問意向」の調査では、タイへの渡航意欲がある割合が71.5%といった調査結果がありました。タイに行きたい人々が多くいるにもかかわらずタイへの渡航が難しいといった現状があり、私たちは自宅でもタイを感じていただける商品が作れないかと考えました。
 「Otoriyose Box in Thailand」では、CNNトラベルの調査でタイのマッサマンカレーが世界一美味しい食べ物にランクインしたことや、ASEAN観光意識調査でタイの渡航者がおすすめするポイントが「食べ物がおいしい」という調査結果があること、私たちが学生約600人に対して行った「海外旅行に関するアンケート」の中で5人に1人がタイのイメージについて「食」といった回答結果が得られたこと。この3点からタイの「食」に特化したギフトボックスを作成しようと考えました。
 このボックスを制作するにあたり、タイ国政府観光庁大阪事務所にお勤めの井上様、村井様。タイ政府貿易センターの方々、アジアン雑貨ラフエイジアの方々等、数多くの方々へヒアリング調査を行い、商品を作成するにあたりアドバイスを頂きました。
 作成が進むにつれ、食品衛生法や関税等の問題、輸入許可などの届け、商品撮影やHPの作成等、商品を実際に販売するにあたり直面する問題も多く、学生が実際に行動に移すにはとても高いハードルが多くありました。しかし、チームの中で役割を細かく分け、時間の限られる中、各々が懸命にそして楽しく商品開発に携わることができ、実際に2022年2月11日に商品を販売することができました。
 この2年間の研究で、タイ国政府観光庁様へ良い提案になるような研究をおこなってきました。しかし、それだけでなく私たち個々・チームも成長することができました。目的を達成するために逆算し予定を立てたスケジューリング能力、商品を魅力的に見せるHPや雑誌の作成などの技術、オンラインによる現地バイヤーの方々との真剣な交渉で得た商談能力、この研究の中で得ることのできた「知る」「考える」「実行する」この3つの力は今後、社会に出るうえで自分達の大きな力になると思います。
 一人でも多くの、タイに行きたい方々へこのBoxを手に取っていただきタイを少しでも感じていただきたいです。
 この研究をこのチームでできたこと、タイ国政府観光庁様をはじめとして、各関係機関の方々に私たちの研究に時間を割いていただき、様々なアドバイスを頂いたことに感謝するとともに、この商品制作で迷走し翻弄された2年間を武器にし、これからの何十年に生かしていきたいです。

清水ゼミ 関西エアポートチーム

報告者:佐久間樹里

 関西エアポートチームでは大学生の空港利用率が低いことを踏まえ、伊丹空港における学生の空港利用率向上を目指し、研究を行なってきました。昨年12月には大学生を対象に空港利用に関するアンケート調査を行い、1,080人の回答を得ることが出来ました。また、同アンケート調査の結果、大学生の興味関心がカフェにあることが分かり、カフェを利用した新たな大学生誘致の可能性を探っています。
 今年に入ってからは伊丹空港と同様にビジネス利用客の多い羽田空港へ現地調査に赴きました。空港内にあるカフェ1店舗でヒアリング調査を、カフェ17店舗で視察を行い、カフェの立地や利用客層、店内の雰囲気などを比較しました。また伊丹空港のカフェの店舗様にも羽田空港で行ったヒアリングと同様の内容でアンケート調査を実施し10店舗の回答を得ることができました。これらの調査から空港では、私達がターゲットとしている学生に向けた取り組みを行うカフェは見受けられず、新しい取り組みを行うことで新規顧客を獲得できるのではないかと考えています。
 コロナウイルスの影響で空港の利用状況が変動したり、現地調査が行えなかったりと苦労もありますが、今後も引き続き研究を進め、伊丹空港のさらなる活性化に貢献できるよう努めて参ります。

参加学生一覧

前藤 直也、宮本 脩年、荒牧 俊介、佐久間 樹里、清水 琴音、淋 多佳蘭、高瀬 太伸、高畑 紫、土井原 生実、皆本 莉沙、三薮 冬弥、宮本 蒼衣、山崎 浩太

連携団体担当者からのコメント

株式会社 エイチ・アイ・エス 大阪教育旅行営業所 海外研修・留学デスク 日高 章朝(HIDAKA Akitomo)様

「地方創生」という難しいテーマだったと思いますが、4名全員アイデアを出し合い、現地調査やヒアリングなど入念に取り組む姿勢に感銘を受けました。学生が考えたアイデアを実際に東大阪市に提案して、どのような結果になるのか楽しみです。今回の経験はこれからの学生生活、そして社会人になってから間違いなく役立つと思います。4名のこれからのご活躍に期待しています。