ビジネス経済学パッケージでは、2年生から4年生までの「専門演習」での学習と研究の成果を共有する機会として、学生による研究の発表会を実施しております。本年度は1月22日から24日に開催し、2年生から4年生まで合計43件の研究報告がありました。発表会は学年ごとに分かれて行いましたが、それぞれの発表の後、会に参加していた学生と教員の投票によって最優秀賞と優秀賞各1名ずつを決定して表彰いたしました。今年度の表彰者となったのは、以下の6名になります:
  • 4年生:最優秀賞 福永将也  優秀賞 森沙也佳
  • 3年生:最優秀賞 野口万緒  優秀賞 渡辺翔汰
  • 2年生:最優秀賞 塩見麻妃  優秀賞 宮地凌雅
 すべての研究内容をここでご紹介することはできませんので、4年生の報告の一部を簡単にご紹介できればと思います。
 福永さんは、ある企業で生じている問題を行動経済学などの知見を用いて解消しようとしました。そこでは、数年前からタイムカードが押されないことが増えており、勤怠状況がきちんと記録できなくなっておりました。会社はこれに対してペナルティを与えたり逆に少額のボーナスを与えることなどで改善しようとしたものの成果が上がらず、福永さんの対策直前ではタイムカードが押されないことが37%だったとのことです。福永さんは、この状況を受けてタイムカードにかかわるルールなどを検討し、タイムカードのデザインや配置、それを押すタイミングなどに改善できる点を発見しました。たとえば、「完了後エラー」と呼ばれますが、人間には主目的を完了した後にはそれに関連することを忘れる傾向があります。ガソリンを給油してしまえばキャップを閉め忘れやすくなり、ATMで現金を引き出せばカードを取り忘れやすくなるのがこれです。このような傾向があることがわかっているので、現代のATMでは、カードを取った後でないと現金が受け取れないようになっているものがほとんどになっています。福永さんは、この会社のタイムカードに関する手順にも同様の問題を発見し、これを改善するなどの対策を取りました。その結果、数か月たった後でもタイムカードの押し忘れは2%から4%に減少したまま推移している、とのことです。福永さんは、今回のように内定先企業の問題を扱ったり、昨年の研究ではコーチをしている少年スポーツチームでより積極的にトレーニングに参加させる方法を検証するなど、身近な問題に大学で学んだことを用いて解決してきております。投票で最優秀賞に選ばれたのも、そうした点も評価されたのではないかと思います。
 なお、同じく完了後エラーに注目した研究としては、他に、武知さんがガソリンスタンドで実験を行いドライバーの外見からわかる特徴から有効な注意喚起方法を特定するなどの発表をしてくれました。また、自分の働く場所を舞台にしたものとしては、他に、金子さんの遊戯施設において来訪者に誘導されたと意識させずに稼働率を平準化させる研究、後藤さんの小売店でポイントカード会員への加入者を増やしその後の来店や売上への影響も検証した研究、坂本さんのアパレルショップにおける来店客と店員の組み合わせと売上との関係の研究、髙橋さんの飲食店におけるサービスドリンクを出すタイミングの最適化を図る研究、細川さんのセレクトショップにおける店員へのインセンティブ給の導入形態とその効果・弊害を検証した研究などもありました。また、森さんは、書店における実験で書籍を薦める効果が年齢や性別のような相手の属性、あるいは、薦められる書籍の特徴などによってどのように変わるかを検証し、優秀賞に選ばれております。なお、こうして研究を活かす舞台はもちろん職場だけではなく、たとえば池上さんは自動車を運転する際の同乗者のタイプと運転者の交通ルール違反との関係を、泉本さんはゴミのポイ捨て防止に効果的なポスターのあり方を、大堀さんと山村さんはそれぞれ部活動と地域の掃除当番の参加率を改善する方法を検証した研究を発表してくれました。また、ここではまとめきれなかった研究にも興味深いものがたくさんあり、いずれ別の記事でご紹介できればと思っております。

 彼らの研究指導に携わる教員として、今後も大学で勉強を続ける学生にも、また、卒業して就職先や大学院に進む学生にも、研究室での活動などを通して培った能力を今後の人生に活かしていただけることを願っております。

 なお、表彰された研究報告を行った学生には、副賞として図書カードを贈呈いたしました。彼らの今後の研鑽に活かされることを願っております。この副賞の贈呈は、阪南大学学会2018年度学部教育研究活動助成事業補助を受けて実施いたしました。ご支援を頂けたことに心より感謝いたします。