【教育と研究のQ&A】武藤麻美先生

教育と研究:人間の「こころ」について学ぶ

Q1. どの授業を教えていますか?
A1. 自己理解心理学入門や、対人コミュニケーション心理学、観光とホスピタリティの心理学を教えています。来年度からは社会心理学や福祉心理学も教えます。


Q2. ご研究領域は何ですか?
A2. 社会心理学と精神保健福祉になります。そのなかでも特に、社会的認知 (ステレオタイプや印象形成など)、メンタルヘルス (精神保健福祉・こころの健康) などを専門としています。現在の主な研究テーマは、ジェンダー・ステレオタイプに関するもので、「日本で女性の管理職を増やしていくためにはどのような心理・社会的サポートが必要か」を考えています。また、「現代社会におけるストレスの要因とこころの健康」についても考えています。



Q3. どのようなきっかけでこの研究分野に関心を持ち始めましたか?
A3. もともと大学では「哲学」を専攻していました。哲学では「こころ」について様々な角度から学びます。そのなかで、人間の「こころ」とは何なのか、どのような働きをするのか、人が他者や物事に対し偏った見方をするのはなぜか、人が人を「理解する」というのはどういうことなのかなど、いろいろと考え始めたのがきっかけです。
卒業後は国家資格を取り、精神科臨床でも働いていました。ただ精神科臨床の現場 (特に社会復帰の場面)では、精神障害者に対する社会からの様々なステレオタイプを経験することがあり、どうしたらそういったステレオタイプ (特にネガティブなステレオタイプ) を減らすことができるのか、深く考え始めました。そして、社会心理学の分野でステレオタイプについて詳しく研究することを決意した、というのが経緯です。
また、ステレオタイプの研究を進めていく中で、ジェンダー・ステレオタイプ (男性とはこうあるべき・女性とはこうあるべき、といった先入観や固定観念)にも関心を持つようになり、現在はそちらのテーマを主に研究しています。


Q4. 武藤先生の研究分野で、今でも魅力を感じる点は何ですか?
A4. 社会心理学というのは、私たちの社会生活で遭遇する身近なテーマを扱っています。例えば、集団心理のなかでしばしば採り上げられる「集団同調圧力」は、学校のクラスや部活、仲良しグループ、職場、日本社会など、どこででも起こり得るし、だれもが経験し得る現象です。
「空気を読んで本音を言えなかった」「変わった人だと思われたくなくて、なんとなく周りに合わせてしまった」「流行に乗り遅れて仲間外れになりたくないから、ほしくないけれどとりあえず購入した」といった経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。社会心理学を学んでいると、こうした現象がなぜ起きるのか、どうしたら防ぐことができるのかなどを考えることができ、魅力に思います。
また、ステレオタイプというものは、自分が知らないうちに様々なものに対して持っているものです。私自身も、授業で学生たちと話したり、他の研究者たちと議論したりする中で、ふと自分が多くのステレオタイプを持っていることに気づきます。その際に、なぜそうしたステレオタイプを持つに至ったのか、過去の経験や社会背景などを踏まえながらいろいろと考え直してみることで、自己分析も行えますし、新たな視点を獲得することもできますので、魅力に感じています。

Q5. どのようにして研究分野を教育に生かしていますか?
A5. 授業の中では、まず「自己」とか「ストレス」「ジェンダー」「ステレオタイプ」といったテーマについて、社会心理学の理論や有名な実験、社会で問題となっている現象や自身の研究結果などを解説し、次に各テーマに関する心理テスト (心理測定尺度) を実施します。そして、心理テストの結果の解釈を通して、学生自身に自己理解を深めていただくという授業を行っています。一方的に講義をするだけではなく、学生自身がそのテーマを自分に当てはめて考えることができるよう試みています。

Q6. お勧めの本や論文はありますか?
A6.

①アラン著, 白井健三郎訳 (1993) 『幸福論』 集英社文庫
私はこの本のなかに書かれている「遠くを見よ」の言葉を、箴言としています。人間は、不安や怒り、迷いを感じた時ほど目の前のことしか見えなくなりますが (これを心理的視野狭窄といいます)、そのようなときこそ「遠くを見よ」なのだと思っています。他にも「幸福になる義務」など、私たちが日々のせわしなさのなかで、つい後回しにしたり、忘れそうになる大切なことが、この本にはたくさん書かれています。

②Asch, S. E. (1953). Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments. In Cartwright, D. & Zander, A. (Eds.) Group dynamics. (アッシュ, S. E. 岡村二郎(訳))(1959).集団圧力が判断の修正と歪みに及ぼす効果.三隅二不二・佐々木 薫 (訳編).グループ・ダイナミックス (pp.183-196).誠信書房)
集団同調圧力がなぜ生じるのか、どのような条件で生じるのかなどが書かれた、アッシュの非常に有名な論文です。かなり古い本になりますが、第2版は阪南大学の図書館にも配架されています。

Q7. 趣味は何ですか?
A7. クラシックピアノです。もともと子どものころ習っていましたが、高校受験の前にやめてずっと離れていました (高校・大学はドラムを習って、軽音サークルに所属しバンドを組んでいました)。30代に入ってからピアノを再開し、現在仕事の合間をぬって練習を積んでいます。2023年度は音楽コンクールにもチャレンジし、西日本地区の本選会で銀賞も頂きました。
 私は社会人向けのピアノサロンで学んでいますが、発表会には20代から80代まで、幅広い年齢の方がたくさん参加されています。皆さん、仕事や学業、家庭の事情などでお忙しいはずですが、一生懸命練習をして発表の舞台に立たれています。私もそうした環境に身を置くことで、大変良い刺激を受けています!
大学生の皆さん、どんどん様々なことに挑戦してください!!勉強や留学、資格取得への挑戦、ボランティア、サークルや部活、アルバイト、習い事や人との交流など、少しでも興味のあるものがあれば、どんどんチャレンジしていってください!!応援しています!!
  • 東京サントリーホール (ブルーローズ) にて発表会:ブラームスの7つの幻想曲の中から第1番と第7番を演奏

  • 区民ホールにて発表会:ブラームスの2つのラプソディーの中から第2番を演奏

  • 八尾市役所ワークショップにおけるゼミ活動 (2024年度も参加します!)

  • 社会人向け・メンタルヘルス講演会にて:武藤の講演の様子

国際コミュニケーション学科 教員広報誌「グローバル・ヴォイス」