都市文化論シンポジウム2024
北半球・歴史都市の旅-フィレンツェ/西安/京都-
後期の授業が開始されて第5週目。少し、受講学生諸君も疲れを感じ始めるこの段階で行うシンポジウム。学生の感想と質問を受けて、改めてこの方法の意義を考える15年目となりました。補足の資料までしっかり読み込んでくれる学生たちに出会い、履修学生諸君に負けてはいられない!とライバル意識をもつ2024年度第1回目のシンポジウムでした。何よりも、国際コミュニケーション学科の学科科目でありながら、他学部からの受講学生も含め、しっかり聴いている姿に感銘を受ける90分間でもありました。
科目担当者コメント
「都市文化論2024」第1回シンポジウムを終えて
松本 典昭:都市文化論(ヨーロッパ)担当
今回もまた新しい発見があり、また新しい疑問が生まれました。「なぜ?」「どうして?」という疑問がわいてくるかぎり、自分もまだまだ若いなと実感します。逆にもし、疑問が全然わかないという学生がいたら、すでに老けこんでいるかもしれないので、要注意です。知らないことがいっぱいあると知ることが、学問の楽しみです。学生のみなさん、いっしょに楽しみませんか?いつまでも若々しくあるために。
陳 力:都市文化論(中国)担当
「都市文化論」共同シンポジウムは2010年から、あっという間に30回も行った。今年はより深く議論するために、受講者に提示するスライドを大幅に減らした。このため、「都市文化論」的な都市立地論や都市形態論(Urban Morphology)の議論は以前よりゆっくり展開できたとおもう。シンポジウムの後受講者の皆様からもらった質問はこの二分野に属するものが多い、このような受講者の反応をみて、安心した。やはりみんなが興味を持っている疑問について深く議論してよかったとおもう。シンポジウムの後、受講者から「いつからこのような研究をはじめましたか」と聞かれ、答えるとき自分の学生時代のことを思い出して、うれしかった。
神尾 登喜子:都市文化論(日本)担当
15年。30回。ひょんなことから始まった都市文化論のシンポジウム。コロナ禍の時期にはリモートで行うこともあった。テーマによっては、シンポジウム開始の5分前までデータを作成していることも。担当教員間の質問が面白いと見える教室の風景。その「面白い」は、授業というバラエティーのようなものか。真剣に質問に困ったり、互いの知識をぶつけ合ったりという空間は、単なるバラエティーではなく「格闘バラエティー」として位置付けてもよいだろう。若い学生諸君を前にして、何を伝えられるのか。昨今ではそのようなことを考える私がいる。
「都市文化論」第1回シンポジウム・学生コメント
植田 凜
今回の授業では、フィレンツェ、西安、京都の三都市の共通点と相違点について学び、非常に興味深かった。三都市が同じ温帯の地域にあり、ほぼ正方形の形状を持つ点は、計画的な発展を示している。また、フィレンツェと京都の気温の変化や河川の存在は、環境が都市生活に与える影響を実感させる。西安は皇帝の出身地で、風水に基づいて設計されているため、文化的背景が都市発展に強く影響している。このように地域ごとの価値観の違いが都市の発展に反映されていることが印象に残った。特に、フィレンツェが風水の影響を受けていない点が他の二都市との大きな違いであり、興味深く感じた。
野原 万由果
まったく異なる文化や言語、歴史的背景の三都市に幾つかの共通点があったこと。これが今回のシンポジウムでの一番の驚きであった。三都市はいずれもほぼ同じ経度に位置し、同じ地理的環境を持っている。「こんなことがあるのか!」と驚いた。「三都市はいずれも文化が横に広がる」という言葉が非常に印象的だった。普段の講義では聞けない三都市のシンポジウムで、三人の白熱した討論に私はとても夢中になり楽しく学ぶことができた。シンポジウムでは、三都市についてただ講義するのではなく、先生自身が疑問に思ったことをお互いに問いかけて解決するという形だったので、先生の質疑応答を聞きながら学生側も新たな知識を得ることができるので非常に面白いと思った。
久井 悠生
今回シンポジウムに参加して、これまでに経験したことのない授業形式だったので驚いた。3人の先生が3都市をそれぞれの見方で話を展開していく様子や、先生同士がお互いに質問し合っている様子など、興味深い内容だった。先生同士の質問のなかで、先生が答えられない場面も多々見られた。その都市について研究している専門家でも答えられない問いがあるということに感動した。そういう意味では、シンポジウムという授業形式は、学生にとっても先生にとっても学びになる一石二鳥の場だと考える。今回のシンポジウムで特に印象に残ったのは、川の近くに都市ができて文化が発達したということだ。都市に川がある意味を理解できた。
杉村 華凛
初めてシンポジウムに参加しました。いきなり初めから3人の先生がしっかりと質問しあったり答えをだしあったりして、なんでも知っているのでびっくりしました。いつもは1人の先生から講義を聞くだけなので貴重な体験でした。なにより先生が楽しそうに議論していて、ほんとにその分野に精通しているんだなと思いました。発展した都市はその地域の地形を活かしてできあがったことがよくわかりました。なかでも川がとても重要な要素であって、昔は船で人や物を運ぶことが多かったからだと考えました。
杉井 愛里紗
初めてシンポジウムというものを受けましたが、今まで知らなかったことがたくさん知れました。幼い頃から川を見てきましたが、なぜ都市に川があるのかと考えたことがありませんでした。今は飛行機や車など便利な移動手段・モノを運べるのがありますが昔は今と違って交通手段はなく、川が重要だったことを知れました。川があれば、モノを運べたりできる。川がなければたくさんの人は生活できないと知って、川の必要さを学べました。
他にも、地政学の説明の中で古代の中国で、遠い所の国はあまり争わない、近い国とはよく争うと聞いてなぜだろうと思いました。そこでその時代遠い所の国とは紛争しても何も得られないから、近い国との紛争では強い国は領土が得られると聞いて、すごく納得できました。普段気にしたことがなかったことが、今回の講義を通してたくさん知れたので楽しく学べました。また第二回のシンポジウムも楽しみにしています。
他にも、地政学の説明の中で古代の中国で、遠い所の国はあまり争わない、近い国とはよく争うと聞いてなぜだろうと思いました。そこでその時代遠い所の国とは紛争しても何も得られないから、近い国との紛争では強い国は領土が得られると聞いて、すごく納得できました。普段気にしたことがなかったことが、今回の講義を通してたくさん知れたので楽しく学べました。また第二回のシンポジウムも楽しみにしています。
東本 萌香
印象的だったのは、これら三都市が単なる行政の中心地だけではなく、それぞれの時代における「文化的十字路」として機能していた点です。特に興味深いのは、各都市が異文化を受容しながらも、独自の文化的アイデンティティを保持・発展させてきた過程です。例えば、京都は中国の都市計画の影響を受けながらも、天子南面の思想をそのまま模倣するのではなく、独自の皇居中心の配置を採用したことである。また、新島襄の同志社設立の例に見られるように、京都が伝統的な仏教・神道の中心でありながら、新しい思想(キリスト教)も受け入れる柔軟性を持っていたことは、文化都市としての懐の深さを示していると感じました。これら三都市の歴史は、グローバル化は現代に始まった現象ではなく、古くから存在していた事実を知ることが出来た。さらに、現代のグローバル化を考える上で、これらの歴史的都市の経験から学ぶべき点が多いと考える。
井上 明音
特に印象的なのは、配布資料に載せられている阿倍仲麻呂の話です。彼は単なる外交官ではなく、李白や王維との交流があったと知り、当時の文化交流が表面的なものではなく、深い人的つながりを伴っていたことが分かりました。現代の西安に阿倍仲麻呂記念碑が存在することは、この文化交流の影響が現代まで続いていることを示しており、素晴らしいと思いました。また、現代のグローバル化は決して新しい現象ではなく、フィレンツェ、西安、京都はそれぞれの時代において、すでに国際的な交流の拠点として機能していたことが分かりました。これは私たちの「グローバル化」に対する一般的な認識を改める必要性を示唆していると感じました。
平田 恭也
いつもの授業と違い先生が複数人いたことから思いつかない質問がでてきてそれに答えれる力のある先生がいたため良い勉強になった。また、先生方が過去のシンポジウムで疑問に思ったことやわからなかったことなどを調べてきたりしておりより良い話を聞けたと思う。また、都市の形の形成の面の話はとても面白かった。フィレン
ツェではウィトルウィウス的人体図の影響がある。多くのヨーロッパの都市では古代ローマの影響が大きいことは知っていたが都市の形までも影響されているとは思わなかった。私の中では丸い都市の中心部には教会みたいなものがありその周りに自然と建物が建ち丸くなっていると思っていた。また西安の天円地方は古代中国の宇宙の影響というのは驚いた。京都と同じ朱雀大路ということから縦と横に道がきれいにできていることから自然と四角形になっていると考えていた。
ツェではウィトルウィウス的人体図の影響がある。多くのヨーロッパの都市では古代ローマの影響が大きいことは知っていたが都市の形までも影響されているとは思わなかった。私の中では丸い都市の中心部には教会みたいなものがありその周りに自然と建物が建ち丸くなっていると思っていた。また西安の天円地方は古代中国の宇宙の影響というのは驚いた。京都と同じ朱雀大路ということから縦と横に道がきれいにできていることから自然と四角形になっていると考えていた。
村田 清春
都市において、水源の確保は人々の食事を支える農作物の栽培や世界各国から運ばれてくる渡来品の運搬といった生活基盤を支える上で「心臓」とも言える要所であったことが分かった。それ故に、人々を掌握する立場にある者(王・政府関係者)は、水源の支配権を巡る様々な戦いを仕掛けたり、権利を守る法を敷いたりすることがあると理解出来た。また、西安と京都には、「天円地方」という宇宙観を持って都市づくりをしており、「天は丸く、地は四角い」という考えに基づいて北に天子(皇帝・天皇)の住処を置き、南に臣下がいるという配置で天円地方を表していたことは、アジア圏において神仏的な存在が政治において明確な縦社会の形成を助けるとともに、その階級が安定的な政権を執る上で有効的であると当時の社会において浸透していたということが考慮できる。これは現代における人材育成の場において「教育方法」の手法に影響を及ぼしている。西洋においては上司と部下が互いに意見を述べたり、意思表示の際に年齢関係なく意見を尊重したりする「横に連なる労働社会」を形成している国々が多い。対して、東洋には家父長制など「父親が一番偉く、発言権が強い」といった「縦に連なる労働社会」を確認できる。この要因として天円地方といった占星術・風水に結びつきがある思想が影響を及ぼしたのではないかと思案した。
西川 丈偉
普段の講義ではなかった三者三様の講義で違う歴史、違う時代の話でありながらも共通点が多く抽出され、どこか通ずるものが沢山出てきており講義を進めれば進めるほど内容への没入感が高まっていき、普段の講義よりもどこか身近に感じることが出来ました。
寺本 大輝
授業の感想として、これらの都市の共通点や相違点を学ぶことは単なる知識の習得にとどまらず、文化の違いや多様性を理解し、他者や異文化を尊重する姿勢を養うことにつながると感じました。都市が持つ「歴史」と「未来」、そしてそれらをつなぐための「現在の課題」を一緒に考えることで、自分の住む都市についても新たな視点から見つめ直すきっかけになりました。今回初めてのシンポジウムは自分に取ってとても良い機会になりました。ありがとうございました。
WU CHANGDE
本日のシンポジウムを通じて、フィレンツェ、西安、京都の都市が持つ多様な歴史と文化、そしてこれらの都市が現代において果たす重要な役割及び関連を理解することができました。そして先生たちの意見交換や議論を通じて、新たな視点や知見を得ることができ、とても面白かったです。これらの知識を今後の都市文化論に活かし、さらなる理解に役に立つと思います。次のシンポジウムでの引き続く交流と質問を解答することを期待しています。ありがとうございました!