都市文化論シンポジウム2024
第3回シンポジウムレポート

毎年度2回のシンポジウムを開催してきました「都市文化論」ですが、シンポジウム開催15周年目の今年度は、最終講義日の1月22日の15回目に第3回目のシンポジウムを開催いたしました。
その経緯は、受講学生諸君から「学生もシンポジウムにライブでの質問を通して参戦できませんか?」との問い合わせがあったからです。第2回目のシンポジウムに向けて、受講学生諸君から頂いた質問に全て回答出来なかったことも含め、科目担当者の私たちも「もっと学生たちの意見を反映したシンポジウムをしたい」という意識は毎年度ありました。
そこで私たち教員3名は、各クラスの受講学生に授業計画の変更を含め、3回目のシンポジウムを開催する経緯を説明し、納得してもらった上で開催するに至りました。
学生参戦のシンポジウム運営は、Teamsのチャットを使うことで「即時に質問を受け付ける」という方法をとりました。その中での質問事項をここに記しておきます。
 
 名城 嗣織君:シルクロードが作られた経緯について詳しく知りたいです。
 村田 清春君:中国の皇帝に康熙帝という名君がいるが、皇帝の人格や行う統治様式によって、平民における謀反であったり、
       役人の汚職だったりの発生数はどのように変遷したのかを伺いたい。
 釜本 健介君:都市と田園のような郊外にパワーバランスは存在したのか。
       二つのエリアが維持されるにあたっては互いにどのような利点などがあったのか知りたいです。

学生からの質問に私たちは瞠目すると共に、受講学生諸君が確実に「問題点を抽出できる」成長をしていることに出会う瞬間でもありました。
挙手によって質問を投げてもらうことも一案ですが、今の風潮としてチャットを上手く活用して学生諸君の疑問に答えるという方法をとったことはチャレンジでもありました。けれどもそれは、3名の学生諸君によって成功をおさめるに至る結果となりました。
ということで、「都市文化論2025」でも第15回目はシンポジウム開催となります。




科目担当者コメント

「都市文化論2024」第3回シンポジウムを終えて

松本 典昭:都市文化論(ヨーロッパ)担当

「儒教」と「道教や禅」の比較がおもしろかったという学生の感想があった。私も聞いていてとてもおもしろかった。アジア的思考法の両者の中間にヨーロッパ的思考法の「近代合理主義」を配置してみるならば、現代ヨーロッパの知識人が「近代合理主義」の限界を乗り越えるために「道教や禅」から多くを吸収していることも納得できるだろう。受講生の皆さんには21世紀を軽やかに生きるヒントがあったのではなかろうか。ある感想の締めくくりはこうだった。「知らない事を知るという営みは楽しい事だ。」

陳 力:都市文化論(中国)担当

 私は毎年この授業を準備する際に、もっとも悩んでいることは受講者の都市に対する知的な好奇心はどこにあるのかということです。これは大多数の外国出身者教員がもっている悩みなのだといえます。
 今回のシンポジウムではチャット機能を利用しましたが、これが、受講者の知的好奇心を探ることが素晴らしい方法だとわかりました。また、学生の皆さんの質問の鋭さに驚きました。どの質問でもその核心を究めればりっぱな論文になります。ぜひ深堀して、阪南大学学会の学生懸賞論文に応募する、あるいは卒業研究のテーマにしていただけると嬉しいです。
 この半年、私の授業ではユーゴーの小説である『ノートルダム・ド・パリ』第3巻の欧州都市文化史に対する記述やエベネザー・ハワードの『明日の田園都市』。
 ル・コルビュジエの『ユルバニスム』、ジェイン・ジェイコブズの『アメリカ大都市の死と生』などの都市問題の名著。
 あるいは、ヴァルター・クリスタラーの『都市の立地と発展』、マニュエル・カステルの『都市問題』、今の都市の分断問題に関するカルロス・ロサダの『What Were We Thinking: A Brief Intellectual History of the Trump Era』などの研究・分析の書の概要を紹介しました。
 授業はすでに15回終了しています。その上で、都市の思想やアイディアに関する本を読破することは難しいですが、このような本を読んで有識者の都市に対する思想の脈絡を自分の手で整理のうえ、自分の知的好奇心にある都市の問題を深く掘っていくことを強く薦めます。

神尾 登喜子:都市文化論(日本)担当

冷や汗をかきながらの90分間でした。画面を確認しながらMCをして、質問に答えるという軽業師になったような時間でしたが、ワクワク感は授業後も続きました。私のクラスのある受講生は、「都市と陰謀」に興味をかき立てられたとの感想を伝えてくれました。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授のようにはいきませんが、そこを一つの目標として、今後は、私たちの発言にや回答に即時に質問ができるシンポジウム設計ができたら、と考えています。
受講生諸君、半年間誠にありがとうございました。