『父と息子の宇宙旅行計画 ~お父さん派男子になるための7つの Mission~』

 一般社団法人日本旅行業協会(Japan Association of Travel Agents)が主催する「アメリカ旅行企画コンテスト」において、国際観光学部国際観光学科4年生の村田 歩夢さん(出身高校:阪南大学高等学校)が見事グランプリを受賞しました。
 本コンテストは、コロナ禍で減少した日米間の観光往来を回復・拡大することを目的に、2024年を「日米観光交流年」と位置付け、若者の海外旅行への関心を高めるべく開催されました。ツーリズムEXPOジャパン2024の場で行われた公開プレゼンテーションにて、応募総数73件の中から最終審査に残った6件が発表され、村田さんが見事グランプリに輝きました。
村田さんに今回のコンテストについて、そして観光について、国際観光学科についてインタビューしてみました!

コンテストへの挑戦動機

1年生の時に大学入門ゼミで初めて旅行企画に触れて、その楽しさに気づきました。それ以来、旅行会社で働いて旅行企画に携わりたいという思いが強くなり、私の旅行企画漬けの大学生活がスタートしました。 2年生の時には、小林ゼミの先輩が出場した「第13回 関西空港発『学生と旅行会社でつくる』海外旅行企画コンテスト」の最終審査会に同行させていただきました。そこで、各大学の自信に満ちた企画とプレゼンテーションを目の当たりにし、コンテストに対する強い憧れを抱くようになりました。 3年生の時には、実際に「第14回 関西空港発『学生と旅行会社でつくる』海外旅行企画コンテスト」に出場しました。1次審査を通過し、大手旅行会社の方々に企画メンターとして約半年間ご協力いただきました。実際に働いている方々と話す中で、自分の力不足を痛感する日々が続きましたが、同時に大きな成長を実感する充実した時間でもありました。結果として優秀賞を受賞することができ、当時は達成感で満足していましたが、時間が経つにつれて「あの時もっと自分の意見を前に出せばよかった」という課題が見えてきて、悔しい気持ちが湧いてきました。 そこで、4年生の今年、大学での学びの集大成として再びコンテストに応募しました。

企画のアイデア誕生の背景
『父と息子の宇宙旅行計画 ~お父さん派男子になるための7つの Mission~』

 本コンテストのテーマが「自身と同世代をターゲットとした2025年に実施するアメリカ旅行」だったので、来年予定されている主要なイベントを調べました。すると、アメリカのNASAで1975年に終了したアポロ計画以来、50年ぶりとなる有人月調査プロジェクト「アルテミス計画」が本格的にスタートすることを知りました。
 そこで、この計画にちなんで宇宙をテーマにした旅行を企画しようと考えました。実現が目前に迫っているものの、一般化にはまだ時間がかかりそうな宇宙旅行の「前段階」としての旅行(日本のつくば及び米国のテキサス・フロリダの宇宙に関連するスポットを巡り集大成として有人ロケットの発射を見届ける旅行)を企画することにしました。
今回、コンテストが設けるターゲット設定は自身と同世代でしたが、私は少し異なるターゲットとして息子(Z世代)とお父さんの組み合わせを選びました。理由は、経済的な観点から見てもアメリカ旅行ができる大学生ではターゲットが限定されすぎると考えたからです。また、お父さん世代に一世を風靡したアポロ計画と、息子世代に実施されるアルテミス計画には共通点があり、宇宙への関心度もこの二つの世代で高いという点も理由の一つです。
 さらに、追加材料として阪南大学の男子学生50名を対象に実施したアンケートで、約7割が「お母さん派男子」であるという結果を踏まえ、父と息子で共通の趣味をテーマに旅行をすることで「お父さん派男子」を増やすという切り口で企画を作成しました。コンテストで設定されたターゲットから外れることに対して不安はありましたが、父と息子というターゲット設定が斬新だと高く評価され、グランプリ受賞につながりました。

プレゼンに向けた準備と努力

就活の関係もあり、企画検討には2週間というタイムリミットがありましたが、強みである着眼点や発想、これまでに学んだことを生かして企画を練り上げました。その結果、1次審査、2次審査を通過し、主催団体との企画ミーティングを経て、東京ビッグサイトでの公開プレゼンテーションで最終審査に臨むことができました。
私は人前で話すことや表現することに慣れておらず、苦手意識がありました。しかし、自信のある企画をプレゼンスキルで落とすわけにはいかないと考えました。まず、キャリアセンターでお世話になっている職員さんにプレゼンを聞いてもらい、フィードバックを求めたところ、「抑揚があるともっとよくなる!」、「ところどころ声が小さくなる時がある!」といった課題をいただきました。抑揚がないのは文章量が多く、早口になるからだと考え、原稿をより簡潔でわかりやすく書き換えました。声量の課題については、(お恥ずかしい話ですが)友達に朝までカラオケに付き合ってもらい、マイクの使い方や腹から声を出す特訓を行いました。
今回の発表時間は7分間で、セリフが飛んでしまうと時間をオーバーする可能性があったため、完璧に暗記するために東京までの移動中も何百回と自動音声に起こした原稿を聴いていました。プレゼン当日は足が震えるほど緊張しましたが、伝えたいことをしっかり伝えることができました。
このコンテストへの出場は、大学生活や就職活動に関係なく、自分の意志で参加したもので、途中で辞退することもできました。しかし、最後までやりきることができたのは、自分の信念を強く持てたからです。実際、しんどいと感じる瞬間もありましたが、最後まで全力で取り組み、このような賞をいただけて心の底からよかったと感じています。結果的に大学生活の集大成を良い形で締めくくることができました。

また、大学入門ゼミを担当してくれた恩師の言葉も、やり遂げる原動力になりました。「あなたには独特な視点があって、それは勉強して身につくものではなく、あなたに備わったものです。それを活かして頑張ってほしい」と言われました。昔から自分が変わり者だと自覚しており、普通にならないと…とネガティブに捉えることが多かったのですが、この言葉は自分の人生や考え方を変える大きな転機となりました。自分に期待してくれる人がいると感じ、自信にもつながりました。

なぜ観光学部に入ったのか、そして実際に入ってみてどうだったか

 もともと旅行が好きだったこともあり、高校在学中に阪南大学の国際観光学部の教授による模擬講義に参加する機会がありました。そこで初めて「観光学」という学問があることを知り、それは私が初めて自分から学びたいと思える学問でした。その後は、迷わず阪南大学の国際観光学部への進学を志望しました。  実際に国際観光学部で4年間学んでみて、本当に充実した時間を過ごせたと感じています。観光といっても一口では説明できないほど多くの要素がありますが、阪南大学ではその幅広い分野を学ぶことができます。ホスピタリティ、地域創生、旅行企画、宿泊企画など、多岐にわたる分野を学べるのが魅力です。  さらに、教員の皆さんは観光分野の実務経験を積んできた方が多く、実践的な観光学を学べることも大きなメリットです。1年生の時に授業の一環で小規模の修学旅行企画コンテストがありましたが、その際、担当教員の人脈で現役の旅行会社の方が審査員として参加してくれ、本格的な講評を受けることができました。このように、実際の現場で働く方とコミュニケーションを取れることも貴重な経験でした。
 皆様も家族旅行や修学旅行、留学、一人旅や友達・恋人との旅行など、旅行をした経験がある方がほとんどだと思います。そして、それらの旅行は良い思い出も悪い思い出も含めて記憶に残りやすく、一つ一つの旅行が人生において大きな割合を占めるものなのではないでしょうか。
 私たちは国際観光学部に所属しており、まだまだ未熟な点も多いですが、自治体や企業との産官学連携をはじめとした様々な活動を通じて、旅行をする多くのお客様の思い出作りに関与できることに大きな魅力を感じています。そして、お客様一人一人に旅行の思い出を楽しいものとして提供できるよう、仲間同士で企画案を出し合い、先方や教授からのフィードバックを次に活かす努力をする日々にやりがいも感じています。
 次に、旅行自体が持つ魅力についてです。旅行の魅力は、単に楽しさだけではありません。旅行は多くの社会課題を解決する力を持っています。その代表的な例が地域活性化です。旅行には交通、宿泊、食事、娯楽、お土産など、本当に数え切れないほどの業界が関わり、一斉に動きます。
 観光地として発展していなかった地域でも、何らかのきっかけで注目を浴びると、莫大な経済効果がもたらされます。例えば、アニメや映画といった作品の聖地になったり、インフルエンサーがSNSに投稿したりすることで、その地域への関心が高まり、旅行者が増えることでしょう。
 さらに、訪れる旅行者が増えることで、関心の高まったきっかけと直接的な関わりのない景観が話題になることや、消滅の危機に瀕した伝統文化が再評価されるなんてこともあります。このように、様々な業界・分野と密接に関わり合い、連携して社会課題を解決する力を持っているということが旅行の持つ大きな魅力の一つだと思います。

これから

 私は旅行を企画することが大好きです。就職活動でも、このことをアピールし続けた結果、高校生の頃からの夢だった旅行会社で働くことが決まりました。そこでは旅行の企画や添乗に参加できる機会が多くあり、私の企画でお客様が喜んでくれたり、楽しい思い出を作ってくれたりすることが今から楽しみで仕方がありません。  恩師からいただいた言葉で気づいた自分の強みを生かして、より多くのお客様に笑顔を届けられるような“旅行人”になれるよう、これからも精進してまいります。