コンビニに行けば簡単に購入できるチョコレート。一口食べると甘さが広がり、幸せな気分にもなります。このようなチョコレートの甘さの裏には、想像を絶するほどの悲惨な現実にさらされている子供達がいます。
 チョコレートの主原料であるカカオは、2000年の歴史を持つ食べ物で、現在、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、カメルーンという西アフリカ諸国で生産されています。この生産地では、200万人にのぼる児童が農場での危険な労働を強いられ、学校へ通う機会さえ奪われています。そのなかには、カカオ農園で働くために人身売買で売られてきた子どもたちもいます。
 カカオの生産現場で児童労働が関わっていることが知られてから、最近、フェアトレード製品を販売する大手企業が増えてきています。なお、フェアトレードチョコレートが、児童労働をなくそうと取り組んでいるチョコレートとして取り上げられる機会も増えました。
 「フェアトレード」とは、英語では「Fair Trade」、直訳すると「公平貿易」という意味で、
 発展途上国の貧困層の人達が生産する製品を安値で買い叩くことなく、原料や製品を適正な価格で継続的に購入し、生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のことを言います。国際的な貧困対策、環境保護を目的とし、アジア、アフリカ、中南米などの発展途上国から先進国への輸出において、取引形態が採用される場合があります。主な品目として、カカオ以外にも、コーヒー、バナナのような食品、手工芸品、衣服などがあります。
 発展途上国の人々にとって、国際貿易の仕組みがあまりにも不公平であるという意識から始まったもので、実際、フェアトレードが行なわれる前までは、発展途上国で栽培される原料や製品を先進国が安く買い、高く売ることで儲けるといった構図が成り立っていました。チョコレートに限らず、我々の身の回りにあるモノの多くは、色んな国の人の手を渡って日本に届いています。「大量生産型のグローバル企業」でも同じようなことが言えますが、我々が何一つ不自由ない社会で生活を送る中、発展途上国では、十分に生活することができない賃金で、児童労働者として働き、教育を受ける機会を奪われている子どもが多くいます。
 そもそも、発展途上国と先進国、または企業間の取引がアンフェアな取引をしていることから、こうしたことが起きます。だから、フェアな取引をして、お互いを支え合おうというのがフェアトレードのコンセプトであります。

 多くの生産者がフェアトレードに参加できるようになるには、一般企業でもフェアトレードに参加できる仕組みが必要であることから、考え出されたのがフェアトレードラベルの仕組みであります。生産者に保証すべき金額など、具体的に設定されたフェアトレード基準を守った製品に認証ラベルを貼ることができます。消費者にとって、フェアトレードであるかを見分けやすいのがフェアトレード認証ラベルで、その製品が国際フェアトレード基準をすべて遵守していることを証明するラベルであります。フェアトレードマークが付いた製品は、約32,000以上で多様であり、全世界で見つけることができます。
 我々が消費者として、普段フェアトレードの製品を選ぶことは、現地の生産者や子どもたちの生活を支えることにつながります。フェアトレードの商品を買ったからといって、いきなり「児童労働」がなくなるわけではありませんが、行動することで世界の仕組みが変わっていきます。我々がフェアトレード商品を選ぶという消費行動を変えれば、企業そのものの体制も変わり、企業が変われば、その商品に関わる人たちの生活も変わっていきます。
 フェアトレード製品は、工場で大量生産されるものとは違って、手仕事や伝統的な手法など温かみのあるものがたくさんあります。身の回りのものすべてをフェアトレードにすることは無理ですが、買い物をするときには生産者の事を考え、フェアトレードのモノを食べてみる、家族や友達にフェアトレード製品をプレゼントするなど、少しでも世の中を良くしていこうという意識を持つことが大切であります。
 日常の消費を「フェアトレード」という美しい消費に変えてみませんか?

身近な経営情報あらかると

 本連載では、われわれ阪南大学経営情報学部の教員が日頃の研究成果をもとに、みなさんの暮らしに役立つちょっとした知識を提供していきたいと考えています。研究分野はさまざまですが、いずれの場合も社会に役立つことを最終目標としています。難しい理論はとりあえず脇に置いて、身近な視点から経営情報学部に興味を持ってもらえれば幸いです。

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