インタビュー:池田梨紗子 撮影:山本あづさ


 今回は、3回生で学会発表を行い、ビジネスプランコンテストでも2回入賞されている大学院2回生の米田将くんから話を伺いました。

勉強やり直しのためのシステムで学会発表

——:大学院修了(卒業)おめでとうございます。
米田:ありがとうございます。
——:今日はよろしくお願いします。緊張しますね。
米田:どうぞリラックスしてください。あ、逆か(笑)。
——:米田くんは三回生の時に学会での発表経験がおありだと聞いています。これはどのような研究をされたのでしょうか?
担当教員注:情報処理学会第78回全国大会「機械学習による習熟度自動評価e-ラーニングシステム」(米田 将,戸谷御国,前田利之)。本学ウェブサイトでの紹介はこちら。なお、学部学生が3回生で学会発表するのは非常に早いです。
米田:大人になってからも数学が必要な時もあるし英語が必要な時もありますよね。勉強し直すときに、分かっている単元を示すようにしたシステムなんです。具体的には、ある問題が出題されて、それが解けたら次に難易度が1つ上の問題、間違ったら1つ下の問題が出題されて、自分の習熟度に合った問題に収束していくのをプログラムで統計的に判定するんです。
——:学会発表をしようと思ったきっかけは?
米田:二年生の後期に前田先生(経営情報学部教授)の勧めでソフトウェアコンテストに応募した時のアイディアです。コンテストは落選しちゃったんですけど、研究として面白そうだからやってみたら?と言われて一年やって発表しました。
——:このテーマに取り組んだきっかけは何ですか?
米田:自分に数学が必要になってきたからです。でも勉強し直すってなったらどこからやったらいいんだろうって思って、単元が網羅されている本を1からやりました。その時に、自分がどこまでできているのかが分かったんですけど、それをもっと楽にできたらいいなって思ったのがきっかけです。
——:基本的なアイデアはご自身で考えたのですか?
米田:基本的には自分で考えました。
——:前田先生に指導していただくようになったきっかけは何ですか?
米田:前田先生との関わりは実は入学前からで、オープンキャンパスの時に教員の相談スペースでたまたま相談に乗ってくださったのが前田先生です。プログラミングをしたいって話をしたら意気投合して、それがきっかけです。前田先生のゼミに所属することはなかったんですけど、関係なく色々と指導して下さいました。
——:研究は何人で取り組んでいたのですか?
米田:僕と前田先生のゼミ生の二人でやりました。

キャンパスグランプリ大阪で2回入賞!

——:次にビジネスプランコンテストについてお伺いします。
3回生の時に佳作を受賞されたビジネスプランはどういったものなのでしょうか?
担当教員注:「3Dモデルを利用した新しいレコメンドサービス」(谷口浩暉・米田将・梶遊大;第17回キャンパスベンチャーグランプリ大阪(2015年度))。キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)は「大学生向け国内最大のビジネスコンテント」(CVGのフェイスブックページ)で、キャンパスベンチャーグランプリ大阪は、その近畿地区予選です。大学ウェブサイトの記事はこちら。
米田:スマートフォンのカメラでこう部屋をぐるーっと撮ってあげると部屋の3Dモデルがスマートフォンの中でできるんです。そうするといろんなことができますよね。例えば家具。今までだったら実際に計って置けるかなとかやらないといけないんだけど、このサービスを使うと、ネットショッピングでデータをダウンロードしてシミュレーションすることができます。レコメンドっていうのはネットショッピングのオススメ機能です。自分の部屋の3D情報とか、どこの企業も持ってないデータを使って今までできなかったようなオススメができるっていうのを提案したんです。この家具を持っているならこれもいいですよ、みたいな。
——:このアイデアはご自身で考えられたのですか?
米田:3人でやったので、何十個何百個って案を出し合いました。議論していくうちに「あ、これいけそう」と思ったものを選びました。
——:「あ、これいけそう」ってなったプランを具体的なものにするのに難しかった点って何ですか?
米田:アイデアとしてはおもしろくても実際にそれを使う人が使いたいと思うかという根拠を示さないといけないので、そこに苦労しました。
——:ビジネスプランコンテストに参加しようと思ったきっかけは何ですか?
米田:北川先生の勧めです。就職活動の時に実績があった方がやりやすいよってことで。あとシステムエンジニアになりたかったっていうのがあって。
——:苦労したことは何ですか?
米田:北川先生は駄目な物は駄目ってスパッと言われるので、自分の中でこれは凄く良いと思って持っていったものも、論理的に、ここが駄目ここが駄目って言われて完膚なきまでにダメ出しされて、落ち込んだことはありました。

——:修士1年の時に佳作を受賞したビジネスプランはどういったものでしょうか?
担当教員注:「IoTとAIによる高度介護サービス『ReAf』」(米田将・野村義樹・清瀧一樹;第19回キャンパスベンチャーグランプリ大阪(2017年度))。本学ウェブサイトの記事はこちら。
米田:ウエアラブルデバイスというのがあります。センサーがいっぱい付いているデバイスを身につける(wear)ことによって、脈拍とか動きとかの情報を介護で上手く使うことができるんじゃないかって思って。介護士の人って、介護日誌とか事務作業が凄く多いんです。そういった作業を減らしてあげることで介護士の負担も残業も減って、人件費も削減できるかもしれない。介護される人もこういうデバイスを身につけることで、急に体調が悪くなった時に瞬時に介護士の人に助けを求めることができます。それから、体調が悪くなる前にAIで察知することを考えました。介護士と介護される人両方がハッピーになれるようなプランとして提案しました。
——:アイデアを具体的なビジネスプランにする時に難しかった点はありますか?
米田:技術的な部分が難しかったです。それに医療も介護も専門外なので、自分たちが介護士になる勢いで介護士の勉強をしました。先行研究を調べて、一歩先を行く気持ちでやってました。
——:途中で挫けそうになったりはしませんでしたか?
米田:僕はむしろやってる時が一番楽しかったです。今まで世の中に無いものを考えるというのがすごく楽しくて。
——:ビジネスプランコンテストで学んだことや成長されたことはありますか?
米田:1番はマネジメント力です。修士1年の時は同じチームに他に4回生と2回生がいました。2人ともビジネスプランコンテストをやったことがなくて自分がやった方が早いのですが、チームでやるので、能力が違う後輩2人にどう分配しようかなとか、どうやったら発言しやすい環境を作るか、とか考えました。
——:ビジネスプランに取り組むにあたって役に立った授業はありますか?
米田:経営学とか事例を紹介してくれるような講義は参考になりましたね。成功しているビジネスモデルを知ることは自分のプランに生かせると思ってます。
——:ビジネスプランコンテストに興味を持っている人にアドバイスをお願いします。
米田:社会に出たら、提案する力というのは様々なところで重要になってきます。口で「提案力があります!」と言うよりコンテスト参加の実績があるので、就職活動ですごく有利に進みます。やって損は無いと思います。

SEになるためにマーケティング専攻のゼミと情報専攻のゼミを履修

——:ありがとうございます。次に米田くんに関する質問をさせていただきたいと思います。
阪南大学に入学された理由を教えて下さい。
米田:オープンキャンパスの時の教員の熱意です。どうせならその道のスペシャリストとの関わりの時間が多そうだなって思ったのでここを選びました。
——:経営情報学部を選んだ理由を教えて下さい。
米田:他の大学のオープンキャンパスでは工学部の情報学科などを見ていました。阪南大学では情報学部ではなく経営情報学部なのがユニークだなと思いました。技術だけでなく経営学を一緒に学ぶことによって世の中でどんどん使ってもらえるような知識を身につけられると思いました。
——:入試区分を教えて下さい。
米田:AO入試です。
——:二回生の時のゼミはどこですか?
米田:水野先生(マーケティング専攻)のゼミです。
——:入学したときからプログラミングをやりたかったのに、マーケティングのゼミに入ったのはなぜですか?
米田:SE(システムエンジニア)に必要な能力の1つが提案力です。お客様の現状を知った上で、こうしたらいいんじゃないですかっていうのを提案する能力を鍛えるためです。
担当教員注:経営情報学部では、2年次のゼミと3年年次のゼミの両方で募集があり、2年次のゼミから3年次のゼミに上がるとき、所属ゼミを変更できます。
——:三回生から北川先生のゼミということですが、北川ゼミに入った理由は何ですか?
米田:北川先生は経営者寄りの考え方をする人で、僕が阪南大学に入学した理由と紐づくなと思ったからです。
——:北川ゼミでは、先生の研究室でゼミ生が仕事をされるそうですが、週にどのくらい研究室に行ってましたか?
米田:週4です。夏休みとかも週に3回は行ってました。平均8時間は学校にいました。それ以上学校にいたりとかもありました。帰るのが終電になったりとか(笑)。
——:卒論のテーマは何ですか?
米田:特徴点抽出に関する研究の調査です。画像の中から角とかをコンピューターに認識させてあげるアルゴリズムっていくつもあるんですけど、今までどのアルゴリズムを使うかは感覚だったんです。そうじゃなくて定量的にこの画像にはこういうのが適しているというのを調べた研究です。
——:なぜ大学院に進もうと思ったのですか?
米田:就職のためです。大学院に行くことで高度な知識を身につけることができるからです。
——:大学院での研究テーマは何ですか?
米田:学部の時からそうですが、画像処理という分野です。修士論文のテーマが3次元点群と2次元画像を用いたオブジェクト輪郭線抽出の研究開発なんですけど、3次元点群データと2次元画像データという2つの次元のデータを使うことで片方のデータだけだったら難しい処理を両方使うことで可能にするといったものです。

経営情報学部は一つの分野に囚われない人材、自立した学生を育てる

——:卒業後はどんな仕事をされるのですか?
米田:システムエンジニアです。情報技術を使って世の中をどんどん便利にしたいです。
——:大学・大学院と六年間の阪南大学での学生生活を振り返って、どんな感想を持っておられますか?
米田:入学前は、経営も情報も独立した分野だと思っていたのですが、この学部はどちらか一つの分野に囚われないような人材を育てる感じですね。それと、経情ではどの先生も、自立した学生を育てようとしていると感じました。
——:勉強になります!今日は長い時間ありがとうございました。
担当教員注:経営情報学部のコンセプトは、経営と情報の融合、経営分野の知識と情報分野の知識・技術の両方を備えた人材の育成で、米田君はそれを実践しています。

取材を終えて

 今回、大学院生の方の取材ということでとても緊張していましたが、撮影担当の山本さんのお知り合いということで楽しみでもありました。私が今回の取材で1番印象に残っているのは介護サービス『ReAf』に関する質問の時に米田くんが言っていた「介護士になる勢いで勉強した」の一言です。1つのものを習得するにはそれくらいの意気込みで取り組まなければいけないことを学びました。米田くん、取材をさせていただき本当にありがとうございました!
池田梨紗子


 私は、米田先輩とは、阪南大学で行われた松原市主催のパソコン講座のSAで一緒に活動させていただいたことがありました。いつでも笑顔で明るく接しておられたことが印象に残っています。また、情報系の知識も大変豊富で、プログラミング言語についての質問にも答えていただいたこともあります。そんな素晴らしい先輩のお話を聴けて大変光栄です。お忙しい中、取材をお受けいただきましてありがとうございました。これからの活躍をお祈り申し上げます。
山本あづさ

ゼミ指導教員より

 米田君とはゼミ生として4年間一緒に活動してきました.ゼミでの活動では,特許出願,学会発表,論文投稿,ビジネスプランコンテストでの受賞,後輩指導などしんどいこともあったと思いますがよく努力して様々なことに挑戦したと思います.そして,初めて出会った4年前よりもすごく成長したと実感しています.4月からは,第一希望の会社に就職し,大変なこともあると思いますが阪南大学で学んだことを生かしながら,頑張っていってほしいと思います.
北川悦司

学会発表指導教員より

 米田君は、入学前のオープンキャンパスですごくやる気のある生徒だと記憶に残っていて、入学後も自主ゼミとして「CPUの創りかた」や「数学ガール」の輪講をしてがんばってくれました。専門演習は私の在外研究のタイミングと重なったので指導できませんでしたが、今後の活躍を期待しています。
前田利之
経営情報学部学生広報委員会では、「じぇむ」の記事を書いていただける方・撮影をしていただける方を募集しています。興味のある方は担当教員(濱)か、教務課までお問い合わせください。